それでは、ベンチマークプログラムを利用して、AMD 780GとRadeon HD 3200の性能に迫っていきたい。今回は比較対象としてインテルのCore 2 Duo E6750とIntel G33 Expressチップセット搭載マザーという組み合わせを用意した。比較は主にグラフィックス面に焦点を当て、内蔵するRadeon HD 3200だけを利用した場合と、Radeon HD 3450を追加してHybrid Graphics環境で利用した場合の両方の性能を計測している。ベンチマークの結果として掲載したのは「Doom 3」と「Crysis」だが、これ以外に3DMark06も測定を行っている。しかし、今回の評価作業においては、なぜかAMD 780Gで3DMark06が起動しなかった。これはAMD 780G用の評価用グラフィックスドライバがβ版であったのが原因かもしれない。
CPU | Athlon X2 4850e(2.5GHz) | Core2 Duo E6750(2.66GHz) |
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チップセット | AMD 780G | Intel G33 Express |
マザーボード | GIGABYTE GA-MA78GM-S2H | GIGABYTE GA-G33M-S2H |
メモリ | DDR2-800 | DDR3-1333 |
メモリモジュール | PC2-6400(5-5-5) | PC3-1066(7-7-7) |
メモリ容量 | 2Gバイト | |
標準解像度 | 1280×1024ドット/32ビットカラー | |
ハードディスク | HGST HDT725050VLA | |
フォーマット | NTFS | |
OS | Windows Vista RTM版 | |
Doom3はリリースされてから時間がたっているゲームタイトルだが、今でも負荷が十分重く、これまでのチップセット内蔵のグラフィクスコアでは動作が厳しかった。ベンチマークの結果を見て分かるように、Intel G33 Expressでは解像度が800×600ドットであってもゲームのプレイに最低限必要な30フレームにも届いていない。これで実際にゲームをしてみると、動きがカクカクとなってしまって快適にプレイするのは難しい。しかし、Radeon HD 3200では解像度800×600ドットで36フレームを出している。これならプレイが十分可能だろう。とはいえ、1024×768ドット以上になると30フレームを切ってしまうのは変わらない。
Crysisの結果はもっと明快で、Intel G33 Expressでは起動すらしなかった。このあたりは、Radeon HD 3000シリーズ譲りのグラフィックスコアを利用しているRadeon HD 3200のアドバンテージが出てくるところだろう。ただし、Radeon HD 3200でも30フレームには届いていない。やはり快適にゲームを行いたいのであれば、Radeon HD 3450を追加したい。Hybrid Graphicsにすることで、(2倍まではいかないものの)1.5倍程度のフレームレートを実現している。内蔵コアを活用しながら描画性能を上げられるHybird Graphicsのメリットが典型的に分かる例といえる。
3D性能のパフォーマンスを確認した次は、UVDによるハードウェアデコードの実力を検証する。Intel G33 Expressが実装するIntel GMA 3100とRadeon HD 3200のそれぞれでVC-1のHD DVDを再生したときのCPU負荷率で比較してみよう。
Intel G33 Expressに比べて、AMD 780Gは明らかにCPU負荷率が下がっている。CPUの処理能力ではCore 2 Duo E6750が高いはずなので、AMD 780GでCPU負荷率が低いのはUVDの効果であることが分かる。
なお、Intel G33 ExpressとAMD 780Gを利用したそれぞれでシステム全体の消費電力を計測した結果も比較してみよう。
CPUで比べてみると、Core 2 Duo E6750のTDPが65ワットでAthlon X2 4850e(このCPUはAMD 780Gと同日に発表された省電力タイプのAthlon X2だ。このCPUのパフォーマンスは後ほど別記事で紹介する)のTDPが45ワットであることを差し引いても、AMD 780Gがアイドル時で55ワットなのに対して、Intel G33 Expressでは110ワットに達している。これはCPUのTDP以上に大きな差だ。さらに、負荷ピーク時の測定でもIntel G33 Expressが156ワットであるのに対してAMD 780Gは95ワットにとどまる。
AMD 780Gがこれだけ省電力なのは、55ナノメートルというチップセットとしては最新のプロセスルールが導入されているためだ。これに対して、Intel G33 Expressは90ナノプロセスルールを採用しているので、この違いが消費電力に大きく影響しているのではないかと推察される。いずれにせよ、省電力という要素はAMD 780Gの大きなメリットであると評価できる。
ここまでの検証結果で、AMD 780Gはこれまでの統合型チップセットに内蔵されたグラフィックスコアを大きく上回る3D性能を実現しただけでなく、単体タイプの外付けGPUと内蔵グラフィックスコアを3D処理に利用できるHybrid Graphics機能を備え、さらにMPEG-4 AVCやVC-1のハードウェアデコードが可能なUVDの機能も内蔵することで高いメディア再生性能を実現している。このような性能と機能を有しながら、55ナノプロセスルールの採用によって消費電力を低く抑えている。
AMD 780Gは、ある程度の3D描画性能と充実したメディア再生性能をもつ省電力PCを作りたい場合などに適したプラットフォームだ。PCベンダーにとってもAMD対応プラットフォームを使ってメディアを快適に再生できる性能を持った低価格PCを用意したい場合などに、ちょうどいいマザーボードとなるだろう。将来、より高い3D性能が必要になったら、PCI Express x16スロットにグラフィックスカードを組み込んで、Hybird Graphicsによって内蔵グラフィックスコアを有効に活用しながらパフォーマンスを向上させることも可能だ。将来的にアップグレードの可能性を残したいというユーザーにも有力な選択肢となるチップセットとなるだろう。
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