シュークリームから生まれた新「LaVie J」のたたずまい青山祐介のデザインなしでは語れない(3/3 ページ)

» 2008年04月04日 11時11分 公開
[青山祐介,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

シュッとしているLaVie Jのたたずまい

河崎 よく関西の人が、格好よく、スマートに見えることを“シュッとしてる”といいます。新しいLaVie Jはまさにそれで、小脇に抱えて持っているとシュッとして見えませんか? これがデザインの要なのです。何もデザインされていない感じの「ただの四角くて黒いツヤのある箱」に見えることが重要で、それが“シュッ”とした感覚を生み出すのです。

あえて目立たなくされたNECロゴ

 この“シュッ”としたデザインへのこだわりは、プレーンな黒いモノフォルムだけではない。「NEC」というロゴマークも、あえて目立たないように成型を凹ませるだけの表現にとどめている。これは従来のNECのPCにはほとんど見られないもので、河崎氏によると可能であればロゴはPCとして使うときだけ見えるようにしたかったという。持ち歩く際に見える底面も完全にフラットにし、さらに河崎氏のこだわりは、薄く見えることよりもスッキリとしたフォルムを優先させたのである。

河崎 これまでのモバイルノートPCのデザインでは、PCが薄く見えるよう手前を傾けたり曲面をつけたりする手法をよく用いるのですが、これをやってしまうとそこに新しい面ができてハイライトが入ってしまい、すごく“モノ臭さ”が出てきてしまうんです。そうするとインテリアに調和しなくなるし、急に大衆化してしまうんですね。デザインの検討会議の後になって、社長に「この方法を取り入れれば、ちょっとでも薄くできるんじゃないか?」と指摘されましたが、私に言わせれば「まだそういうことを言うのですか?」という感じで、聞く耳を持ちませんでした(笑)。

よいデザインとは普通のラーメンである

 河崎氏の言葉の中にある、「何もデザインしていない」ということは、もちろん文字通りの意味ではなく、そのように見えることを狙ってデザインしているというのは言うまでもない。こういったデザインへのアプローチは、時代がデザインの本質を求めている、という河崎氏。バブルの時代はとにかく登場感が必要であったため、何かと見た目を重視した造形がなされていた。それが今の時代は、1人が1台ずつPCや携帯電話を持つようになって、さまざまな空間や環境の中でそこに溶け込ませるバランス感覚が求められている。PCのデザインをするというより、むしろそれ以外の部分をデザインする感覚に近いと河崎氏は語る。

河崎 モバイルユーザーにとって、食事とPCの関係は密接です。食事をとる際に、傍らにあるPCがいかにもPCという銀色のメカメカしいデザインだとメシがまずくなりませんか? 新しいLaVie Jは隣にあってもまるで黒色の漆塗りの器があるように見えてメシがうまいんです! この感覚が、本質をデザインするということです。みなさんも無意識でこのことを感じ取っています。

持ち運びに便利な収納式ACアダプタ

 こういったリアリティのあるデザインというものに河崎氏はこだわっていて、新しいLaVie Jのデザインワークの中では、ケーブルをスッキリと収められるACアダプタや、光沢面を磨き、キーボードを掃除できるクロス、携帯電話のようにサブディスプレイがあって、そこに時計やさまざまな情報を表示できるアイデア、PC本体に収納できる超小型のマウスといった、まさにあったら役に立つデザインのアイデアを暖めている。

 LaVie Jをはじめ、河崎氏が手がけるノートPCのデザインとは、本当に日常の生活でLaVie Jを使う人のリアリティを見て、そこから本質的なものを取り出し、それをバランスよくデザインすることだという。デザインするというよりも整理整頓して収める、ということだとも河崎氏は付け加える。

河崎 これから出てくるNECのPCに期待してください。ただ、難しいのは、いいデザインと売れるデザインは違うということ。僕の持論は、売りやすいとか売りにくいデザインはあるけれども、いいものはちゃんと真剣に売れるまで売れば、絶対に売れると信じています。また、デザインがよければよいほどバランスがよくなって、デザイン的にとんがったところや引っ掛かりがなくなっていきます。これは料理に例えると、一番普通のラーメンでしょうか。カニも入っていなければ、分厚いチャーシューも入っていない、普通のラーメンになっちゃうんです。でも、毎日食べるんだったら、そういうラーメンのほうがいいと思うんですよね。


 シュークリームに始まり、ラーメンで終わった今回のインタビュー。ユーモアあふれる語りで楽しませてくれた河崎氏だが、そのまなざしは真剣そのものだ。これまでの工程を変えて、あえてNECらしくない手法で取り組んだ新LaVie Jだが、その成果は“シュッとしている”という言葉に集約される。新LaVie Jでは実現できなかったアイデアがまだまだあるという河崎氏の、ひいてはNECの今後の製品に注目していきたい。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年05月19日 更新
  1. 湿気の多い日本はガラス製が人気? マウスパッドの最新トレンドと季節外れの桜電源などアキバ新作パーツ事情 (2026年05月18日)
  2. 設定不要でHDMIをワイヤレス化できる「UGREEN ワイヤレスHDMI送信機と受信機」が31%オフの8999円に (2026年05月18日)
  3. 万人向けではない、だからこそ愛せる 格子配列40%のアルミ削り出しキーボード「EPOMAKER Luma40」レビュー (2026年05月18日)
  4. 8TB SSDがまさかの50万円超え!? 連休明けのアキバで目立つストレージ高騰と注目の特価マザー (2026年05月16日)
  5. IntelとAppleがチップ製造で暫定合意か/Microsoft製品の「Copilot」アイコンがフローティング表示に共通化 (2026年05月17日)
  6. 老舗のトラックボール「Kensington Pro Fit Ergo TB550」がタイムセールで14%オフの8669円に (2026年05月18日)
  7. シャープが最新パネルを採用した4K有機ELテレビ計8機種を発表 (2026年05月18日)
  8. Snapdragon 8 Gen 3を採用した11.1型Androidタブレット「Lenovo Yoga Tab ZAG60177JP」がタイムセールで26%オフの6万3400円に (2026年05月18日)
  9. ノートPCの作業領域を劇的に広げる「15.6型 折りたたみトリプルディスプレイ」がタイムセールで8万982円に (2026年05月15日)
  10. 持ち運べる21型相当のディスプレイ! 14型×2画面でコスパに優れるアイ・オーのモバイルディスプレイ「LCD-YC1412DX」を試す (2026年05月14日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年