それでは、ベンチマークテストを利用してRadeon HD 4850の3D描画性能を検証しよう。今回の比較対象として用意したのは、GeForce GTX 280、GeForce 9800 GX2、GeForce 9800 GTX、Radeon HD 3870 X2、Radeon HD 3870の5モデルで、評価用システムの構成は以下のようになっている。
CPU | Core 2 Extreme QX9650(クアッドコア、3.0GHz) |
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チップセット | Intel X38 Express |
マザーボード | ASUS P5E3 |
メモリ | DDR3-1333 |
メモリモジュール | PC3-10666(7-7-7) |
メモリ容量 | 2Gバイト |
標準解像度 | 1280×1024ドット/32ビットカラー |
HDD | HGST HDT725050VLA |
フォーマット | NTFS |
OS | Windows Vista Ultimate SP1 |
なお、いずれの結果もAMD、NVIDIAがWebページで公開している最新のドライバを利用しているが、Radeon HD 4850だけはAMDから提供されたサンプルドライバ(内容はCatalyst 8.6相当と思われる)を適用している。
前世代のハイエンドGPUであるRadeon HD 3870はもちろんのこと、3DMark Vantege、3DMark06の4xAA/8xAniso、Crysis、F.E.A.R.の4xAA/8xAniso、Unreal Tournament 3(DM-ShangriLa-FPS-PC)のAA/Anisoなしなどにおいて、Radeon HD 4850はGeForce 9800 GTXを上回る結果を示している。
特筆したいのは、高解像度やアンチエリアシング有効など、測定条件の負荷が重くなっても、Radeon HD 4850では性能の落ち込みが少ない点だ。従来のRadeonシリーズでは、負荷が重くなるにつれて性能が極端に低下していっただけに、この傾向はRadeon HD 4850の処理能力が改善されたことを示しているといえる。
また、消費電力という観点でも、Radeon HD 4850は優れた結果を残している。3DMark VantageのGraphics test1における消費電力では、GeForce 9800 GTXがシステム全体で217ワットであるのに対して、Radeon HD 4850はシステム全体で203ワットに過ぎない。ここで示された値はシステム全体の消費電力でCPUなども含んでいるため、「何%アップ」という考察に意味がないが、それでも3D描画性能がおおむね上回っているのに、システムの消費電力が10ワット以上も下回っている点は評価していいだろう。
Radeon HD 4850とGeForce 9800 GTXを比較してみると、Radeon HD 4850はより少ない消費電力で相手を上回る3D描画性能を実現している。GeForce GTX 280に追いついていないのは事実であるが、このNVIDIA製最新鋭GPUと渡り合うのは、AMDによると8週間以内に出荷が計画されているR700(開発コード名、RV770を2チップ採用したハイエンド向けGPU)や、まもなく出荷開始されるとみられているRadeon HD 4870であって、これらのリリースを待つ必要がある。
ベンチマークテストの結果が示す値以上に、Radeon HD 4850で評価したいのは、3D描画性能におけるRV770の素性の良さだ。AMDはRadeon HD 4850を搭載したグラフィックスカードの実売予想価格を199ドルに設定している。これは、GeForce 9600 GTなどの価格帯に、GeForce 9800 GTXと同等かそれ以上の性能を持つGPUが投入されることを意味する。今後リリースされるRadeon HD 4870やR700の性能次第では、別記事でお伝えしたように、バーグマン氏のいう「Radeon 9700 PROのようにNVIDIAからシェアを奪う」も夢ではないだろう。
そのことを何よりも証明しているのがNVIDIAの行動だ。GeForce GTX 280の発表日にAMDがRadeon HD 4850の価格が200ドル前後であると明らかにすると、NVIDIAはすぐに対抗してGeForce 9800 GTXの価格を199ドルに引き下げることをグラフィックスカードベンダーに通知し、実際に、それを受けて製品の実売価格が引き下げられている。
このところ、「なんとなく1人勝ち」という状況のGPUの世界だったが、Radeon HD 4850(または“RV770”世代)の登場で、このような、NVIDIAとAMDの健全な競争が復活するなら、まさにそのことが、エンドユーザーにとって高く評価すべきことといえるかもしれない。
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