それでは、NIS2009で実際にどれくらい性能が改善されたのか、ベンチマークテストを行って検証していこう。実施したのは「ミニPCに最適なセキュリティソフトを選ぶ 第4回:PCの性能を落とさないセキュリティソフトは?」で行ったものと同じ6種類のテストだ。
テスト環境は、Phenom 9500(2.20GHz)、4Gバイトメモリ、Windows Vista Ultimate(SP1)という単一のハードウェア上で行っている。それぞれNorton Internet Security 2008(以下、NIS2008)と、NIS2009をインストールし、デフォルト設定のままテスト時の最新アップデートを行った状態、およびセキュリティソフト未インストール状態の3パターンを比較した。テストは各5回計測し、緑色のバーが各回の結果、紫色のバーが平均を表している。
ThePCSpy.comの「What Really Slows Windows Down?」(本当にWindowsを遅くするのは何だ?)で知られるでベンチマークテストだ。その内容は、ファイルオープン、テキスト1行書き込み、ファイルクローズを20万回繰り返すもので、体感速度よりもオーバヘッドの割合が高く表れる傾向にある。
結果を未インストール時の平均を100%としたグラフで表した。以前のNIS2008が1433%の速度低下を引き起こしていたのに対し、NIS2009では99%と、実に7.5倍ほどの速度向上が図られたことになる。テスト環境が異なるので一概には言えないが、これはほかのセキュリティソフトと比較してもトップクラスの成績であり、めざましい躍進だ。なお、TPCSBenchMarkは筆者の環境でコンパイルされており、Nortonインサイトでは評価2の「信頼できない」プロセスとされているため、リアルタイムスキャンの対象となっている。
次に、4Gバイトほど(4,279,523,332バイト)の動画ファイルをHDDから別のHDDへコピーするのに要した時間を計測した。コピー元のHDDにはあらかじめ別のPCでファイルを用意し、1回目の試行ではキャッシュや事前のスキャンがない状態、2回目以降はそれらが有効に働く状態になることを期待してテストを行った。
結果は完全に誤差の範囲で、正確にはNIS2008が101.46秒、NIS2009が102.57秒、未インストールが103.64秒という結果だった。ばらつきはあるものの、初回と2回目以降の有意な差はまったく認められない。
大容量ファイルコピーテストと同様の環境でトータル約1Gバイトのzipファイル、5096ファイルのコピーを行った。
今回はキャッシュの効果が如実に表れる結果となった。しかし、NIS2009の結果はあまり芳しくない。初回こそNIS2008の3分の2程度の時間で完了しているものの、2回目以降はむしろNIS2008よりも遅くなっている。ややばらつきはあるものの、NIS2008よりも1歩後退した感じだ。


TPCSBenchmarkのFileI/Oの結果は大躍進と言える(画面=左)。大容量ファイルの場合はセキュリティソフト未インストール時を含めほぼ変化なし(画面=中央)。大量zipファイルのコピーはNIS2008よりも遅くなった(画面=右)TPCSBenchmarkのもう1つのテストが10万以上20万未満の素数を求める素数計算だ。こちらはファイルアクセスがないため、純粋に演算処理、メモリアクセスの低下率を見ることができる。
56秒あたりでほぼ横並びだったEee PCでのテストに比べると、よりパワフルなクアッドコアのPhenomのほうがばらつきが出ている。未インストール状態と比較するとNIS2008は9.3%の速度低下であるのに対し、NIS2009は3.1%にとどまった。
午後のこ〜だはインストール時にコンパイルを行う、Windowsアプリではめずらしいインストーラを持つ。コンパイルはファイルアクセスと演算の両方を行うため、より通常の操作感に近い、複合的な処理に対する傾向が見えるはずだ。
結果はNIS2008に比べ、ほんのわずか、秒数にして0.45秒ほどNIS2009が速くなっているが、これは誤差の範囲だろう。ただ、毎回ほぼ同じ時間になるNIS2008に比べ、NIS2009ではテストを繰り返すたびに遅くなるのはどうしたことだろうか。ちょっと気になる結果だ。
PassMark Softwareの「Rebooter」を使って再起動時間を計測した。RebooterがWindowsを終了させてからPCが再起動し、再びスタートアップに登録されたRebooterが起動するまでの時間を計測するため、終了にかかる時間+起動にかかる時間を調べることができる。
結果はNIS2008よりも6%ほど速度が低下している。見ての通り、NIS2009の初回だけが突出して時間がかかっているが、それを除いてもNIS2008よりも速くなったとは言えず、せいぜい「ほぼ同等か、やや遅くなった」といったところだ。


素数演算のようなファイルI/Oのからまない処理ではあまり変化がでないようだ(画面=左)。コンパイルを行う午後のこ〜だのインストール。実際にはコンパイル・リンク処理を行うコマンドプロンプトが開いてから閉じるまでを計測した。平均ではNIS2008をやや上回るが、試行するたびにわずかずつ遅くなっていくのが気になるところ(画面=中央)。再起動時間を計測。初回の例外的な遅延を除けばNIS2008とほぼ同等かやや遅い程度(画面=右)ベンチマークの結果は、TPCSBenchmark File I/Oを除くとそれほどの大きな違いにはならなかった。予想に反してNIS2008より遅くなったテストも見られる。とはいえ、実際に使ってみた体感的な印象では、NIS2008以前の重たさはかなり解消されており、NIS2009自身のUIもさくさくと動作する。セキュリティソフトを原因とするストレスがかなり軽減されていることは間違いない。
この感じはメモリを増設したときの感覚に似ている。CPUのクロックを上げるときとは違い、メモリの増設ではすべての処理が速くなるわけではない。むしろ「(プログラムをたくさん起動しても)遅くならない」と言ったほうがしっくりとくる。
確かにNIS2009では7Mバイトを切るメモリ使用量の少なさが大きな特長の1つだ。プログラム自体のパフォーマンスの向上以外にも、間接的にメモリ増設と同じような効果が現れたとしても不思議ではない。
NIS2009はメモリの消費量を抑える、という基本的な部分の刷新に加え、処理対象を減らす(Nortonインサイト、パルスアップデート)、ユーザーへの影響を減らす(スマートスケジューラ、サイレントモード)という部分が徹底されている。セキュリティソフトベンダーとしての歴史が長いということは、それだけ情報の蓄積も多く、ソフトをインストールした「デフォルト状態」のバランスもこなれているということだ。PC初心者にも安心してすすめられる製品と言えるだろう。同社のWebサイトでは、15日間利用可能な体験版も提供されているので、まずは実際に試してみてほしい。
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