ワコムが2007年に発売した液晶ペンタブレット「Cintiq 12WX」は、クリエイター向けの高性能ペンタブレット「intuos3」の技術を投入したモデルだ。同社はCintiqシリーズとして21.3型大型液晶パネルを搭載した「Cintiq 21UX」を2005年より販売しているが、「より小さく、低価格のモデルを」というユーザーの声に応えるべく、12.1型ワイドサイズの液晶ディスプレイを採用した小型モデルとして、Cintiq 21UXの半額以下の価格(ワコムストア価格13万9800円)のCintiq 12WXが登場した。
“究極のデジタルペーパー”としての表現力はそのままに、ダウンサイジングに伴ってさまざまな工夫・改良が施されているCintiq 12WXの開発ポイントを、同社・製品設計3グループ(プロダクト統括製品設計部)の玉木宙氏が説明した。
玉木氏が開発の大きなポイントとして挙げるのは、液晶パネルへのこだわりだ。ノートPCなどに採用されるTN方式のパネルを流用するのではなく、広視野角を確保しやすいIPS方式の技術を使った新規開発パネルを採用している。「液晶ペンタブレットは正面からだけでなく、角度のついた状態で見られることが多い。そうした場合でも色の反転が起こらないようにパネルを新規に開発した」(玉木氏)。また液晶パネルを分解することなくセンサー基板を搭載するために、パネル裏面には“カンガルーポケット”と呼ばれる構造を採用し、ポケットに滑り込ませるようにセンサー基板を搭載できる。
液晶モニタの見やすさと書き味を改良するために、液晶パネル表面を覆うガラスにも工夫が凝らされている。厚さ1.1ミリの強化ガラスの裏面には、不要な光の反射を防ぐARフィルムを貼り、ペンと直接触れるガラス表面にはエッチング加工を採用する。このエッチングの処理はCintiq 12WXで新たに取り入れられた改良点で、光の映り込みを防ぐほか、ペン入力では紙に近いマットな感触を得られるという。
製図台のような大きな画面でトル入力ができるCintiq 21UXに対し、スケッチブックのような使い勝手の良さや携帯性を持っていることも、Cintiq 12WXの魅力といえる。本体サイズは405.2×269.7×17ミリ(突起部除く)、重さは約1.8キロと、持ち運びも十分可能だ。
薄型コンパクトなボディに「いかに基板を配置するか難しい点だった」と玉木氏は話す。本体背面のスタンドをフラットに収納できるビルトイン構造を取ったが、スタンドが本体内部に食い込む分、基板設置のスペースが狭まったことも開発を困難にしたという。タブレットのセンサーを制御するEMRセンサーコントロールボードは、当初2層基板を想定していたが、省スペース化するために6層に変更。また液晶パネルのバックライトを制御するインバータ基板も極力コンパクト化を図ったという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.