ほかのMSIマザーボードと同じく、X58 ProのBIOS設定にも「Cell MENU」が用意されている。FSBの設定を1MHz単位で行うことが可能で、メモリクロックはFSB比で3〜8倍が選択できる。Auto設定も用意されており、メモリの定格を大幅に超えないようにFSB比を自動的に設定してくれる。
動作クロックばかりでなく、CPUのコア電圧やメモリの駆動電圧、チップセットの電圧なども自由に設定できる。実際にチューニングを行う場合は、これらの各機能を駆使して細かい試行錯誤を楽しむことになるが、今回は定格の動作クロックが2.66GHzのCore i7 920を使って、FSBだけの設定変更でCore i7 920がX58 Proの上でどの程度まで走ってくれるのかを試してみた。
なお、以下に紹介する動作実績は、今回の評価作業に用いた機材で確認されたもので、同じ構成であってもすべての個体で保証されるものではない。動作クロック設定を変更して発生した破損や損害もメーカーによる保証は受けられないことにも注意していただきたい。
BIOSセットアップを起動し、Cell MENUでFSBを150MHzに設定すると、CPUクロックは3GHz、メモリクロックは1200MHzに設定されるが、システムは問題なく起動してくれる。ちなみに、テストで用いているメモリの定格クロックは1066MHzだ。
3GHzでシステムがあっさり動いたので、FSBを166MHzにアップしたが、やはり問題なく起動した。このときのメモリクロックは、倍率が自動で下げられて996MHzに設定されている。FSBをさらに185MHzまでアップすると、さすがにBIOSが起動せず、自動的に再起動を繰り返す状態になった。ここでCMOSクリアして、設定をやり直す。
こういったオーバークロック作業では、CMOSクリアが必須となる。そのとき、ジャンパピンを差し替えてクリアするのとオンボードに用意されているボタンを押すだけでCMOSクリアができてしまうのとでは、使い勝手が大きく変わってくる。X58 Proでは、上位モデルと同じように、パワースイッチやリセットスイッチに加えて、CMOSクリアスイッチもオンボードで搭載されている。ただし、バックパネルではなく、基板上にあるので、PCケースにマザーボードを入れたままオーバークロックを試すときには、サイドパネルを外しておく必要がある。
CMOSをクリアしたのちに、Cell MENUでFSBを180MHzに設定する。再起動すると、Windows Vistaが起動してベンチマークテストも問題なく完走した。CPUの温度は、DrMOSのおかげもあって、CPU使用率80%以上を維持した負荷の高い状態でも50度をやや超えるレベルで収まり、標準で付属するCPUクーラーユニットでも熱暴走の気配はまったくなかった。
FSBを180MHzに設定した場合、CPUの動作クロックは、定格より35%アップした3.6GHzに達する。Core i7の最上位モデルであるCore i7-965 Extremeをあっさりと抜いてしまった。メモリクロックは1080MHzに設定されており、こちらも挙動に問題はない。ベンチマークテストの結果は、PCMark05のPCMarksで10303というスコアを出している。この値は、現在でも10万円以上で販売されているCore 2 Extreme QX9770を上回る。
もちろん、メモリクロックや各部の電圧に対して細かいチューニングを行えば、より高いスコアを狙うこともできるだろうが、それでも、FSBだけの設定変更でここまで動いてしまうというのは、CPUの耐性に加えて、マザーボードのオーバークロック耐性の高さのおかげといえるかもしれない。
マザーボード | X58 Pro | P45-8D | ||
---|---|---|---|---|
CPU | Core i7-920(2.66GHz) | Core i7-920(3.32GHz) | Core i7-920(3.60GHz) | Core 2 Extreme X9770 |
メモリ設定 | PC3-8500(1066MHz) | PC3-8500(996MHz) | PC3-8500(1080MHz) | PC3-8500(1066MHz) |
PCMark05:PCMarks | 8388 | 9688 | 10303 | 9236 |
PCMark05:CPU | 8694 | 10782 | 11094 | 10271 |
PCMark05:Memory | 8225 | 10021 | 10822 | 6935 |
PCMark05:Graphics | 14418 | 15705 | 16230 | 16617 |
PCMark05:HDD | 5820 | 5847 | 5828 | 5632 |
PCMark05:HDD-XP Startup | 8.8 | 8.9 | 8.9 | 9.1 |
PCMark05:Video Encoding | 546.6 | 677.2 | 732.8 | 567.5 |
PCMark05:Image Decompression | 35.9 | 45.7 | 50.3 | 45.6 |
PCMark05:WMV Video Playback | 85 | 104.9 | 113.3 | 90.7 |
低価格モデルであってもパーツや機能に手を抜いておらず、オーバークロックも楽しめるというX58 Proは、コストパフォーマンスに優れたモデルに仕上がっている。最上位機種じゃなくても、自分の利用環境で必要な機能がそろっていれば十分と考えているユーザーなら、きっと満足できるはずだ。
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