OC Stationの最も基本的な機能は、システムを起動中でもCPUのベースクロックをいつでも自由自在に変更できることだ。また、BIOS設定と異なり、変更するたびに再起動の必要がないので、気軽に設定を変えられるのもOC Stationの大きなメリットだ。
OC Stationのダイヤルを回してFrequencyを選び、「BCLK Speed」を選択すると、周波数の“調整単位”を選ぶことができる。デフォルトは1MHz刻みだが、0.2MHz刻みにも設定できるので、本当にギリギリの限界を探り当てるときなどに利用するといい。今回は1MHz単位で調整して155MHzに設定した。OKボタンを押すと、CPU-Zでモニタリングしていたベースクロックが、すぐに155MHzへと変化する。
OC Stationでベースクロックをメインにチューニングを進めたところ、最終的には、ベースクロックを161MHzに設定したところで、PCMark05の計測中にブルースクリーンが出るようになった。今回の評価用システムの安定動作限界はベースクロック160MHz、CPUの動作クロックで3.84GHzというあたりにあったようだ。
ちなみに、この安定動作限界線は、OC StationでもBIOS設定でも変わらなかった。ただ、OC Stationによるチューニング作業は、試行錯誤において再起動がいらない分とても手軽、かつ、気軽に行える。また、OC Stationで0.2MHz単位という、BIOSではできない粒度で限界を探っていくことも可能であるのもオーバークロック設定では大きなメリットとなる。
なお、今回の作業でOC Stationを検証したシステムの構成は次のとおりだ。
マザーボード | ASUS Rampage II Extreme |
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CPU | Core i7-965 Extreme Edition(3.2GHz) |
グラフィックスカード | Saphire HD 4830 512MB GDDR3 PCIE |
メモリ | Qimonda IMSH1GU03A1F1C-10F (DDR3 1066MHz 1Gバイト×3) |
CPUクーラー | XIGMATEK Dark Knight |
OC Stationには、オーバークロック設定で役に立つクロックや電圧の変更機能以外にも、システムの状態を把握して設定する項目が実装されている。OC Stationで用意されている項目の大枠はルートメニューにリストされているが、その中の「Performance」では、「ASUS EPU」と「CPU Level UP」が利用できる。
CPU Level UPは、BIOS設定にも用意されている機能で、使用しているCPUを1ランク、または2ランク上のモデルと同じ設定で動作させる機能だ。ただ、この機能についてはOC Stationで設定を行っても、再起動が必要になるため、BIOS設定とあまり手間は変わらない。
「Voltage」では、Vcore、チップセット、メモリバス、PCI Expressの各部署における駆動電圧を監視できる。そのほか、「Fan Speed」や「Temperature」も同様に、各部署に設置されたファンの回転数や温度がチェックできる。ゲームを全画面表示して、OS上で動くモニタリングソフトが表示できないときにもリアルタイムでシステムがチェックできるのは、不測の事態でセーブしていないゲームが落ちてしまうのを防ぐ意味でも便利だ。
「Setting」では、それまで細かく行ってきたオーバークロック設定を保存したり、以前に保存した設定内容を読み出したりできるほか、PCのストレージに保存している画像をOC Stationのディスプレイでスライドショー再生ができたり、システムの構成情報を表示したりといった機能は、COMPUTEX TAIPEI 2009の展示サンプルで紹介したとおりだ。
ユーザーの遊び心を強烈に刺激するOC Stationだが、利用できるマザーボードが少ないは惜しい。ただ、ASUSマザーボードのユーザー層で、OC Stationとの親和性が最も高いのが、R.O.G.シリーズのユーザーであることは間違いない。1万9000円と見込まれている実売価格は、ミドルクラスのマザーボードの実売価格に匹敵するし、CPUなら1つ上のグレードを選ぶこともできる。こういう価格関係を受け入れて、OC Stationの遊び心に共感できるユーザーこそ、“OC Stationに選ばれたオーバークロック達人”なのかもしれない。
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