月収1万円でハイエンド携帯電話を選ぶキルギスのIT事情山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

» 2009年11月12日 16時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

10万人都市が「三大都市」に滑り込んじゃうキルギス

 中国の西に広がる中央アジアに、日本で「キルギス共和国」(以下、キルギス)と呼ばれる国がある。いにしえのシルクロードが通過していたこの国は、中央アジアに存在する国々で構成される「CIS」(旧ソ連属国による独立国家共同体)の1つでもある。「アジアン・アイティー」と名乗るからには、中央アジアも行かねばならぬ、ということで中国から、なにかと“きな臭い”ウルムチ経由で訪れた(ちょうど2009年7月に起きた大規模暴動の直後だった)。

 キルギスの国民人口は548万人で、そのうち首都のビシュケク(旧名フルンゼ)に約125万人が生活する。極端な一極集中で、かつ、国土がそれほど広くないのに、ビシュケクの街並みは広々としていて緑が豊かだ。中国に接するはずなのに、街並みに中国の面影はまったくなくロシア風の雰囲気に満ちている。ちなみに、キルギスは天山山脈をはさむ国土の南側で中国と接しているが、国土の北に位置するビシュケクは、カザフスタンと接する。また、そういう事情のほかに、ビシュケクがソ連の支配において発展した街というのも、ビシュケクがロシア的雰囲気(人によっては旧ソ連的雰囲気という)に満ちている理由といえるだろう。

 キルギスを構成する民族は、モンゴル系の容姿を持つキルギス人が半数以上を占めるが、白人系のロシア人や、中東的な風貌のウズベク人もビシュケクの街でよく見る。宗教の違いが影響してか、彼らのコミュニケーションを見ていると、仕事上の付き合いだけでなく、プライベートの生活時間でも、それぞれの民族におけるつながりが多いようだ。モンゴル系が多いキルギスだが、日本人が彼らの中に紛れ込むことは難しい。日本人だけでなく中国人といえど、顔立ちや身に付けている衣装などから、外国人であることはすぐに分かってしまう。

 キルギスで使われる言語はキルギス語だが、公用語としてロシア語も認められている。キルギス人の価値観において、ロシア語ができると“インテリ”と認定されるようで、それ以外の言語を学ぼうとする人は少ない。そういう事情で、英語を話す人が極めて少ないキルギスでは、挨拶程度のロシア語を知らないと街歩きすら困難を極める。ヨーロッパより近いキルギスだが、「思えば遠くに来たもんだ」と感じるだろう。

 今回の訪問で筆者は、ビシュケクとキルギス第3の都市なのに人口が10万人を切る「カラコル」という街のほか、それらの周辺に点在する小さな町を巡って、「キルギス庶民のIT事情」に触れてみた。

キルギスの首都「ビシュケク」は人口125万人の緑豊かなきれいな街だ(写真=左)。そして、これがキルギス第3の都市「カラコム」だっ! な、なんてのどかな(写真=右)

お買い物ならいろんな意味でエキサイトなバザールか安全なツム百貨店でどうぞ

 キルギスの都市では、「バザール」と呼ばれる巨大な野外市場に流通が集中する。イスラム教文化の影響を強く受けているキルギスだが、その一方で、ロシア革命以降に旧ソ連の属国であった事情から(ロシア)正教によって広まったロシア文化も浸透している。中央アジアに魅せられた人の中には、「ボルシチもピロシキもアジアンな麺類も食べられるごちゃ混ぜ感が面白い」という。

 そんなキルギスのバザールでは、食料品や服といった日用品のほかに、大きな都市では電器製品を扱う店もある。首都ビシュケクでは携帯電話も売られていた。バザールの電器屋さんには、ブラウン管テレビやDVDプレーヤーといった“AV系”や、オーブンにポットなどのちょっとした白物家電、それに、コード類やコンセント変換コネクタ類が主流だが、それらに混じって、お決まりの海賊版DVDソフトや光ディスクのブランクメディアが扱われている。

 バザールで販売されている製品の大半を国境を接する中国とトルコの製品が占めるが(ただし、食材は自国で供給している)、中国製電器製品のコンセント形状とキルギスのコンセント穴形状が異なるので、中国製電器製品を使うために、各家庭ではコンセントの変換アダプタを必ず用意している。

ビシュケクの巨大バザール「オシュバザール」(写真=左)。バザールの多くが、コンテナを店舗に流用している(写真=右)

ビシュケクのバザールで見かけた海賊版ショップ。1枚70円なり(写真=左)。バザールでは、多種多様なブランクメディアが販売されている(写真=右)

 一方、PCやデジタルカメラ、携帯電話などのIT製品や、大型白物家電、それに大画面の液晶テレビやプラズマテレビといった高額商品もキルギスでは流通している。とはいっても、これらは、さすがにバザールではなく、中央百貨店の「ツム」(旧ソ連圏でよくある大型百貨店の1つ)や、首都ビシュケクに数店ある大規模ショッピングセンターで売っている。小さな街になると、ホームセンターで高額家電製品が売られていることが多い。

ビシュケクのショッピングモールで商売をしている家電ショップ(写真=左)。ロシア資本のデジタルグッズチェーン店がキルギスに進出していた(写真=右)

「PCに詳しいので印刷屋を始めました」(写真=左)「証明写真を撮ったらPhotoshopで“実物以上”の美男美女にしてあげるからね」(写真=右)

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