「Let'snote R9」で超低電圧なCore i7の“モバイル力”を試すがんこな“R”もArrandaleは載せました(2/3 ページ)

» 2010年01月25日 17時30分 公開
[長浜和也(撮影:矢野渉),ITmedia]

メジャーバージョンアップにふさわしい一新されたプラットフォーム

 外から見える部分については「変わらないよさ」を維持したLet'snote R9だが、その一方で、内部は「8から9」のバージョンアップにふさわしい進化を遂げた。そのことを最もよく示すのが、CPUとチップセットの変更だ。

 CPUは、32ナノメートルプロセスルールを導入したインテル最新の“Westmere”コアを利用したモバイル向けCPU「Arrandale」世代の中で、TDPを18ワットに抑えた「Core i7-620UM」を搭載する。Let'snote R8のCore 2 Duo SU9600が動作クロック1.6GHzでTDPが10ワットだったが、Core i7-620UMは動作クロック1.06GHzでTDPが18ワットと、クロックが下がったのにTDPが80%も上がっている。

 ただ、これは、従来モデルでチップセットに統合されていたグラフィックスコアがCPUに統合された分もカウントされているためで、チップセットとの組み合わせでTDPを見ると、従来のCore 2 Duo SU9600とIntel GS45 Expressの組み合わせが10ワット+12ワットなのに対して、Core i7-620UMとIntel QM57 Expressの組み合わせは18ワット+3.5ワットと、むしろ下がっている。

 また、1.06GHzと下がった動作クロックについても、Core i7-620UMが、システム内部の処理負荷や消費電力、温度などに余裕がある場合にCPUを自動でクロックアップする「Intel Turbo Boost Technolgy」(以下、TBT)に対応するおかげで、条件によって最高2.13GHzまで動作クロックが上がるほか、Hyper-Threading Technology(以下、HT)もサポートするので、Core 2 Duo SU9600と同じデュアルコアながら同時に処理できるスレッドはCore 2 Duo SU9600の2本からCore i7-620UMは4本に拡張された。

 動作クロックが下がったものの、同時処理スレッドの数は増え、チップセットを含めたシステム全体のTDPは従来モデルのLet'snote R8と最新モデルのLet'snote R9はほぼ同じということになる。

Let'snote R8に搭載されたシステム基板の表側(写真=左)と底面側(写真=右)。表面にCPUとオンボードのメモリが実装され、底面側にはグラフィックスコアを統合したIntel GS45 ExpressとサウスブリッジのICH9Mが載っている。なお、この記事で掲載した基板は試作バージョンなので製品版では異なっている可能性もある

Let'snote R9のシステム基板の表側(写真=左)と底面側(写真=右)。従来の3チップ構成のプラットフォームからグラフィックスコアを統合したCPUとPCH(Platform Controller Hub)と呼ばれるチップセットの2チップ構成になった。どちらも底面側に実装される

Let'snote R9に実装されたCore i7-620UM(写真=左)とIntel QM57 Express(写真=右)。Core i7-620UMは32ナノメートルプロセスルールで製造されたCPUコアと、45ナノメートルプロセスルールで製造されたグラフィックスコア(Intel HD Graphics)が1つのパッケージに統合されている

 なお、Let'snote R9では、プラットフォームの変更に伴って、内部のクーラーユニットも改善された。Let'note R8では、クーラーファンを背面に配置していたが、小口径であったため、起動時や高負荷時の高速回転で「ミーン」といったやや高めの音が気になった。Let'snote R9では、大口径のファンを底面に取り付け、フードで背面のスリットに排気を誘導する形式に改めた。パナソニックの説明では、静音性能を向上させた上で風量を3倍に増やした結果、冷却効率を50%向上することができたという。実際に起動時や高負荷処理時でも、Let'snote R9のファンの音はほとんど聞こえることもなく(夜間の個人住宅)、発熱するチップが底面側に配置されたこともあって、キーボードやパームレスト面で特に熱く感じる部分も確認されなかった。

Let'snote R8のクーラーファンは小口径ファンが背面に取り付けられていたが(写真=左)、Let'note R9では同じ場所がフードになっている(写真=右)

Let'snote R8のヒートシンク(写真=左)とLet'snote R9のクーラーユニット(写真=右)。Let'snote R9では、ヒートパイプでCPUとチップセットの熱を誘導し、底面に組み込んだ大口径ファンで排出する

下がったクロックをTBTがどこまでカバーできるか?

 最新のArrandaleを採用したノートPCのベンチマークテストの結果は、すでに掲載した「モバイル向け新Core iシリーズのCPU性能をじっくり調べてみた」に詳しいが、ここでは、Core i7-620UMとIntel QM57 Expressを搭載するLet'snote R9とCore 2 Duo SU9600とIntel GS45 Expressを搭載したLet'snote R8をベンチマークテストの結果で比較することで、Core i7-620UMの採用で処理能力とバッテリー駆動時間がどれだけ強化されたのか(または、短くなったのか)を検証していく。なお、今回の評価に用いたLet'snote R9とLet'snote R8は、HDD、導入したOS、メモリ容量はともにそろえてあり、異なるのはCPUとチップセットという構成にしている。また、今回の測定は試作機を用いているため、製品版とは傾向が異なる可能性があるので注意していただきたい。

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