インタビュー
» 2011年06月02日 00時00分 公開

“Z”に肉薄した新型「VAIO S」のフルフラットボディを丸裸にする完全分解×開発秘話(4/5 ページ)

[前橋豪, 撮影:矢野渉,ITmedia]

GPU切り替え機能はあえてスイッチ式を選択

キーボードの左奥に、グラフィックスと省電力設定を手動で切り替えるパフォーマンス・スイッチを搭載。スイッチをSPEEDモードにすると外部GPUが使われ、電源プランが「ハイパフォーマンス」に切り替わる。STAMINAモードではCPU内蔵のIntel HD Graphics 3000が使われ、電源プランも「バランス」を使う。これらの電源プランは変更も可能だ

 新型VAIO Sが搭載する第2世代のCore i3/5/7は、グラフィックス機能のIntel HD Graphics 3000を内蔵しているが、さらに外部GPUとしてAMDのDirectX 11対応GPUであるRadeon HD 6470M(グラフィックスメモリ512Mバイト)もしくはRadeon HD 6630M(グラフィックスメモリ1Gバイト)も備えている(6630MはVAIOオーナーメードモデルに採用)。

 これほど小型のマザーボードに外部GPUと最大1Gバイトのグラフィックスメモリまでオンボード実装し、さらにCPU内蔵グラフィックスと外部GPUをキーボードの左奥にあるパフォーマンス・スイッチで切り替えられる機能まで投入しているのは、大きな魅力だ。

 最近では、NVIDIAもAMDもアプリケーションごとに2つのグラフィックス機能(CPU内蔵/外部GPU)を自動で切り替える技術を提供しており、これらを採用したノートPCも増えつつあるが、新型VAIO Sではあえてスイッチによる手動切り替えにこだわったという。

 その理由は無駄な消費電力を抑えるためだ。宮入氏は「GPUを自動で切り替えると、CPU内蔵グラフィックス利用時に外部GPUはスタンバイの状態(バスの電源が入った状態)になり、無駄な消費電力が生じる。また、ディスプレイ出力は外部GPUを使っていても、CPU内蔵グラフィックスのポートを経由して行う仕組みなので、その待機電力なども含めたロスはバッテリー駆動時間に換算して40分〜1時間程度にもなってしまう」と、自動切り替えの問題点を挙げる。

 これに対して、新型VAIO SはスイッチをSTAMINAモードに切り替えると、外部GPUの電源をオフにすることができ、バッテリー駆動時間をより延ばせるメリットがあるという。

 なお、VAIO Zもスイッチによるグラフィックス切り替え機能を採用していたが、これはソニーがNVIDIA、インテルと共同開発したオリジナルの仕様で、ドライバ開発の難度が高く、ドライバの更新は3社での調整が必要だった。新型VAIO Sでは、AMDがもともと用意していたGPU切り替えソリューションを使っており、AMDが更新した最新ドライバに少し手を加えるだけで済むため、VAIO Zよりアップデートが容易になったという。

冷却ファンを取り外した状態のマザーボード。ヒートシンクに隠れていた第2世代Core i5と外部GPUのAMD Radeon HD 6470M(グラフィックスメモリ512Mバイト)が露出した。VAIOオーナーメードモデルでは外部GPUがRadeon HD 6630Mにアップグレードし、オンボードのグラフィックスメモリも1Gバイトに倍増する

徹底したチューニングで高速起動を実現した「Quick Boot」

 新型VAIO Sではハードウェアスペックの強化に加えて、Windowsを高速起動するためのソフトウェア技術「Quick Boot」も採り入れられている。ソニーのデータによると、SSD搭載時で約20秒以下、HDD搭載の構成でも約30秒という高速起動を実現したとする。

 VAIOで電源ボタンを押してからWindows 7が起動するまでには、BIOSの初期化、EC(エンベディットコントローラ)の初期化、各デバイスの初期化、OS起動の開始という順番に処理が行われるが、Quick BootではBIOSとEC、デバイスドライバのロード、アプリケーションのロードといった点を高速化したという。

 具体的には、BIOSやECでは個々の機種で何に時間がかかっているのかを測定し、不要な処理を省いていった。OS起動時ではロードに時間がかかるデバイスを調査し、デバイスドライバのベンダーに修正してもらうことで高速化を図っている。アプリケーションについては、常駐ツールのロードを速く行ったり、不要なアプリは逆に起動を遅らせて、CPUにかかる負荷を平滑化した。

 「一番難しかったのはBIOSまわりで、精密な調査に時間を要したのに加えて、高速化のために削除した部分に問題がないかを吟味するのに手間がかかった。苦労したかいあって、従来機のBIOS初期化は10秒くらいだったが、今回は3秒台まで高速化できている。常駐アプリを減らすことなく、ここまで高速化できているのがポイント」と石川氏。



フルフラットボディに仕上げるための薄型ファンを開発

ヒートパイプ付きの冷却ファンは、約8ミリ厚の薄型だ(写真=右)。銅製ヒートパイプは、ボディ表面のスリットから光ってみえないように、黒く塗装されている

 これだけのハイスペックをフルフラットボディに凝縮するには、パーツの配置だけでなく、そこから生まれる発熱の処理も重要だ。まずは冷却ファンを新たに開発し、VAIO Zに比べて薄型(約8ミリ厚)に仕上げた。ファンのモジュール部分だけをモデリングし、風量や音を長時間かけて検証して作り上げたという。

 また、宮入氏によれば「このサイズで外部GPUも含めてサーマルコントロールをしているので、放熱面の開発は決して楽ではなかった。シミュレーションと疑似モデルを使った温度の検証を行い、なんとか実現できたサイズだ」と、放熱設計には苦労した様子だった。細かいところでは、CPU内蔵グラフィックスが大幅に強化され、メモリコントローラの仕様効率が高まったことでメモリの発熱が増えたことも放熱設計に影響を与えている。

 現状のVAIO Sで選択できる最高グレードのCPUは、TDP(熱設計電力)が35ワットのCore i7-2620M(デュアルコア/2.7GHz/最大3.4GHz/3次キャッシュ4Mバイト)だが、このフルフラットボディではTDPが45ワットのクアッドコアモデルを搭載するのはかなり厳しいという(実際に設計してみないと分からないが、とは宮入氏のコメント)。

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