1カ月を通して話題を集めたのは、5月11日から各ショップに並んでいるIntel Z68 Express搭載マザーボードだ。主要なマザーボードベンダーから複数のモデルがリリースされており、価格帯も1万2000円前後から3万5000円前後までと幅が広い。
Z68は、Sandy Bridgeに対応する最上位のチップセットで、末尾に「K」がついたCore i7/i5のクロック倍率が変更できるP67の特徴と、Sandy Bridgeの内蔵GPUが使えるH6xの特徴を併せ持つ。さらに、SSDをHDDにキャッシュとして利用する独自の「Intel Smart Response Technology」機能も備えている。搭載マザーはZ68の機能を生かすためにHDMIやDVIなどの映像出力端子を備えるモデルが多いが、ギガバイト製の一部マザーは映像出力非搭載となっているため、購入時はマザー単位で仕様のチェックが肝心だ。
各ショップの評判はまずまず高い。ツートップ秋葉原本店は「Sandy Bridgeを使う究極の選択肢といえますね。すでにPやHでマシンを組んでいる人が多いので、登場から飛ぶように売れるとまではいきませんが、これから新規にマシンを組む人や、従来のマザーから乗り換える人がじわじわ出てくるんじゃないかと期待しています」と語る。ソフマップ秋葉原本館でも「ハイスペック志向でP67マザーを使っていて、Z68マザーと付け替えるというユーザーも少なくないですよ」と話していた。
ただし、固有機能の「Intel Smart Response Technology」を有効にする際、BIOSとドライバの更新が必要になるケースがあるなど、一部で混乱も発生していた。ドスパラ パーツ館によると「どうもBIOSとドライバのバージョンが古いものと古いもの、新しいものと新しいものみたいに、そろっていないと動作しないという問題があるようです」という。原因が早期に明確化したことで、各メーカーやショップの検証と対策も進んでおり、月末ごろには徐々に混乱は沈静化していった。
Z68マザーのリリースと時を同じくして、Sandy Bridgeのバリエーションも広がっていった。まず大型連休明け、ドスパラ パーツ館に、リテールボックスが流通していない「Core i7-2600S」と「Core i5-2500T」のバルク品が入荷。ASRockのmini-ITXマザー「H67M-ITX」(9000円前後)とセットで販売し、それぞれ3万6980円と2万8980円の値をつけていた。
Core i7-2600Sは2.8GHz動作のクアッドコアCPUで、TDP 65ワットの低消費電力を実現したモデルだ。Core i5-2500TのTDPはさらに低く45ワットに抑えており、動作ロックは2.3GHzとなる。少数入荷のため、6月時点では入手はやや困難となるが、同店は「ハイスペックなCPUでTDPが低いと、マシンのパフォーマンスを確保したうえで省スペース化や省エネ化が狙えるので、自作の選択肢が広がるんですよね。Core i5-2500TはTDP 45ワットなので、特に注目を集めると踏んでいます」と話していた。
さらに5月後半には、リテールパッケージでCore i5/i3とPentiumブランドの新CPUがデビューしている。内蔵GPUをIntel HD 2000からHD 3000に強化した「Core i5-2405S」(1万8000円前後)と「Core i3-2105」(1万2000円前後)のほか、動作クロック2.9GHzの「Core i5-2310」(1万6000円前後)を投入。さらに、6000円から8000円前後のエントリーCPUとして、内蔵GPUのハードウェアエンコード機能を省略した「Pentium G850/G840/G620T/G620」も選べるようになった。
ソフマップ秋葉原本館が「下位のラインアップが充実したことで、細かく設定した予算でギリギリの線を狙って構成できるようになりました。TDPや内蔵GPUの差で選ぶといった指標も増えましたし、『どんなマシンが組みたいか』を明確にすればするほど、自作のコンセプトを鋭くできるのは歓迎したいです。ちょっと覚えるのが大変でしたけどね」と語るように、多くのショップが新CPUについておおむね好意的に評価している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.