彩度が44%向上したという新しいiPadだが、実際に初代iPadやiPad 2と色域がどれくらい違うのだろうか。i1Proで作成したICCプロファイル(輝度は120カンデラ/平方メートルに固定した状態)をMac OS XのColorSyncユーティリティで表示し、それぞれの色域を比べてみた。色が付いているのがそのiPadで再現できる色の範囲、グレーで重ねて表示しているのが比較対象で再現できる色の範囲だ。
結果は以下の通りだ。
新しいiPadは、初代iPadはもちろん、iPad 2の色域も大きく上回っており、特に青から赤にかけての広がりが目を引く。つまり、従来機に比べて、より鮮やかな赤や深みのある青、濃い紫を表示できるようになっている。初代iPadとiPad 2の比較では、iPad 2で緑から黄色にかけての色域拡大が見られるが、差は小さく、初代iPadのほうが色域が広い部分も見られた。やはり、新しいiPadでの色域拡大は際立っている。
そして注目は、新しいiPadがsRGBにかなり近い色域を確保していることだ。初代iPadやiPad 2はsRGBに比べて色域が狭かったため、sRGBプロファイルが適用されているデジカメ写真などの画像の色を正確に再現できず、赤、緑、青の彩度が不足気味だったが、新しいiPadではsRGBの色域をほとんど再現できることになる。
この色域拡大はさまざまなコンテンツの表示で大きな意味を持つだろう。従来は色にこだわった写真集や画集のようなiPadアプリを作る場合、実際にiPadで画像を表示し、意図した色に近づけるようなカスタマイズが必要だったが、新しいiPadのRetinaディスプレイでの表示を想定するならば、標準的なsRGB環境で作成するだけで済む可能性が出てきた(iOSはICCプロファイルに対応していないが、sRGBプロファイルの画像は特に意図しなくても新しいiPad上でほぼsRGBの色が出るということ)。
MacやWindows、あるいはインターネットでの表示用とは別に、iPad表示用の特別な色補正をしなくてもいいというのは、コンテンツ提供側にとってメリットになるだろう。また膨大な製品数があり、個々に発色が異なるAndroid搭載機と比べても、制作者の意図した色をユーザーに伝えやすいはずだ。ユーザーにとっても、クリエイターの意図した色と違う色がiPadに表示されてしまう問題が、これまでより抑えられるようになることが期待できる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.