レノボ・ジャパンは、8月29日のThinkPad X1 Carbonの発表に合わせて製品説明会を行った。同社代表取締役社長の渡辺明美氏はレノボにおけるThinkPad事業を紹介し、同社取締役副社長の内藤在正氏は、登場してから2012年で20周年となるThinkPadシリーズを振り返り、その“変わらぬ開発コンセプト”を説明した。
渡辺氏は、ThinkPadシリーズの事業について、世界市場においては2012年第1四半期から第2四半期にかけて出荷台数を伸ばしており、「世界で最も出荷台数の多い法人向けノートPC」と説明する。日本市場でも、2012年第2四半期におけるシェアを7.8パーセントと同年第1四半期より伸ばしている(ただし、出荷台数は減らした)。
内藤氏は、20年以上にも及ぶノートPCの開発を振り返り、ThinkPadシリーズが登場した背景を紹介した。ThinkPadシリーズは、1992年10月に登場したThinkPad 700Cからスタートするが、内藤氏は、ノートPCに必要となる基本機能をすべて自分たちで開発していたことを、1つの重要な理由として挙げている。
例えば、10.4型TFT液晶ディスプレイは大和研究所が、2.5インチ容量120MバイトのHDDは藤沢研究所が、そして、低消費電力CMOSとSLC高密度実装基板は野洲事業所が、トラックポイントは米国ヨークタウン研究所がそれぞれ開発してIBMの製品で採用していた。これらの技術を一般のユーザーにも提供したいというアイデアと、当時盛り上がりつつあった“持ち運べるPC”の需要が重なって、ThinkPadシリーズの開発が始まったと内藤氏は説明した。
そのころのThinkPad開発では、ノートPCで利用する標準の部品や規格、そして、ノートPCの設計仕様書は存在せず、すべて自分たちで最初からコアロジックを開発しなけれならなかったという。しかし、内藤氏はそのことで、外部から必要な技術をただ買ってくるのではなく、それぞれの基本技術を担当する社内の部署が一緒になって開発に参加するという、現在まで続くThinkPadの開発コンセプトができたと語る。
内藤氏は、20年に及ぶThinkPadシリーズを第1世代から第4世代に分類している。第1世代に属するThinkPadは、三桁の数字だけがつくモデルで、新しいタイプのノートPCでラインアップが拡大していった世代だ。いろいろなタイプが登場する一方で、乱立していった世代でもあったと内藤氏は振り返る。第2世代は、アルファベット一文字と二桁の数字の型番を採用したモデルで、乱立していたラインアップを整理、第3世代は、薄型軽量ボディで、かつ、長時間のバッテリー駆動を両立する高性能化を実現した。そして、第4世代ではThinkPad Edgeが登場して、より多くのユーザーにThinkPadを訴求できたと説明した。
内藤氏は、世代が新しくなってもThinkPadの開発コンセプトは変わらないという。それは、「すべてのユーザーに、生活を犠牲にすることなくビジネスにおける生産効率を向上するPCを提供する」ことだ。内藤氏は自分の経験から、オフィスにいなければならない理由として特にコミュニケーションと情報収集を挙げ、これらがどこにいても同じようにできるようにするのが、モバイルコンピューティング環境を提供する目的とする。さらに、ユーザーは、ノートPCという機械に触れるのではなく、その先にある仕事をすることに専念すべきであり、それができないのは、革新的ではないとも考えている。ThinkPadの開発においても、新しく導入しようとする技術がユーザーにどのように役に立つのかを説明できないと、採用する意味がないという。
2005年のレノボ移行後も、ユーザーにはそれまでと同じものを提供していったと述べる内藤氏は、多くのユーザーが心配した品質についても、新しい製品が登場するたびに改善したと評価する。そして、ThinkPad X1 Carbonについて、「今後20年を背負う第5世代のThinkPadシリーズ」と紹介した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.