「簡易水冷キット」カスタマイズで冷却強化と静音向上を実現せよイマドキのイタモノ(2/3 ページ)

» 2012年08月31日 18時00分 公開
[石川ひさよし,ITmedia]

水冷キットのコツはラジエータの扱いにあり

 ラジエータにはファンを組み合わせるため、設置にはラジエータの厚みとファンの厚みのスペースを用意しなければならない。このとき、マザーボード上のシステムメモリや電源回路に設置したヒートシンクなどとの干渉も考慮しておきたい。なお、Thermaltake(販売代理店のアスク)が、取り付けスペース確認用キットを公開しているので、これを使って確認してみるといい。確認用キットは、W2 Extremeの実物大ペーパークラフトがプリントできるpdfファイルで、マザーボードを組み込んだ状態で確認用キットをケースに合わせれば、フィッティングの目安になる。

 W2 Extremeには、ラジエータ用のファンとして12センチ径2基が付属する。カラーリングはThermaltakeのPCケースファンでもよくある黒フレームに白ブレードだが、形状を見る限り桜ファンのような特殊なブレードではない。PWMに対応して、回転数は1200〜2000rpmと高めだ。この点は、W2 Extremeがオーバークロックといった冷却性能重視向けモデルだからだ。なお、Water 2.0シリーズではW2 Extremeのみが対応する機能として、マザーボード上のUSB 2.0ピンヘッダにケーブルを接続してファンの回転数を制御できる。製品に付属するツールを導入すれば、Windows上から回転数のモニタリングとコントロールが可能だ。なお、このツールでは、回転数を、手動に加えて、事前に用意した3つのモードで回転数を設定できる。

2基のファンを装着した状態。PCケースに搭載する場合は、ラジエータの裏側にあるネジ穴に、付属する短めのネジで固定する(写真=左)。リブなしファンなので、固定に用いたネジの軸をうまく使えばケーブルを1カ所から取り出せる(写真=右)

 固定方法は、Asetek製水冷キット共通で、インテル製CPU(LGA 775/LGA 1155/LGA 1156/LGA 1366対応。LGA 2011では不要)とAMD製CPU(Socket AM2/Socket AM3/Socket AM3+/Socket FM1対応)用のバックプレートにリング状の固定金具を組み合わせてネジ止めする。インテル製CPU用バックプレートには、複数の穴を設けて、ピンを差し込む位置の組み合わせでCPUソケット毎に異なるリテンションホールの位置を合わせる。固定金具側は、リングプレートと樹脂パーツの組み合わせでネジ位置を決める。このとき、樹脂パーツの取り付け向きによって、LGA 775/LGA 1155/LGA 1156と、LGA 1366/LGA 2011を切り替える。

バックプレートとリング状の固定金具でヘッドを挟み込む。AsetekのOEM製品で共通の取り付け方法だ。なお、バックプレートのピンは固く、一度差し込むと抜くのに苦労する。リング状の固定金具もネジ受けにソケット毎で決まった向きがあり、これを間違えると、これまた取り外しに苦労する

Core i7-3770Kでオーバースペックな冷却性能。違いは動作音にあり

 W2 Extremeの冷却性能を検証するが、ここでは、ラジエータのサイズを変えると性能がその程度異なるのかも確認してみる。比較対象は、Core i7-3770Kに付属するリテールのクーラーユニットと、12センチ径ファン×1基分のラジエータが付属する簡易水冷キットとしてIntel「RTS2011LC」を用意した。なお、RTS2011LCのラジエータの厚みはW2 Extremeと同じだ。

 W2Extremeは、USBケーブルを接続し付属の専用ツールを導入することでファン回転数の制御や水温の確認が可能となる。そのツールによるファンコントロールでは、カスタム設定に加え「Silent」「Extreme」という2つのプリセットがあるので、これらを適用してその違いも検証してみた。

 計測するのはCPU温度と動作音だ。CPU温度は、CPUIDのHWMonitor 1.20からCPU Packageの温度を見る。一方動作音は、ファンの正面から20センチの距離に騒音計を設置して数値を読む。高負荷時の条件は、オーバークロックツール「OCCT 4.3.1」のCPU:OCCTを15分実行したなかでの最大値(環境ノイズを除く)だ。低負荷時(アイドル時)の条件は、OCCT 4.3.1終了後15分間における最小値とした。

テストに用いたシステム構成
CPU Core i7-3770K(3.5GHz、Turbo Boost Technology有効時で最大3.9GHz)
マザーボード GIGABYTE GA-Z77X-UD3H(Intel Z77 Expressチップセット搭載)
システムメモリ DDR3 1600MHz 4Gバイト×2枚
グラフィックスコア Intel HD Graphics 4000
SSD PLEXTOR PX-128M2P(容量120Gバイト、Serial ATA 6Gbps対応)
OS 64ビット版 Windows 7 Ultimate Service Pack 1

ファン ラジエータ ファン制御 CPU温度(アイドル時) CPU温度(高負荷時)
1基 1面 標準 28度 59度
2基(標準) 2面(Silent) 標準 28度 60度
2基(標準) 2面(Extreme) 標準 28度 59度
1基 リテールクーラーユニット 標準 31度 78度

 CPU温度は、リテールの空冷クーラーユニットで、アイドル時が31度、高負荷時で78度となった。一方、水冷ではW2 ExtremeもRTS2011LCも、アイドル時で28度、高負荷時で60度前後となった。アイドル時でも3度ほど、高負荷時は20度近く低く抑えている。

 W2 ExtremeとRTS2011LCに違いが出なかったことから、Core i7-3770Kを定格で運用する場合、CPU温度だけに注目すれば、12センチ径ファン1基分のラジエータで十分ということになる(もっとも、RTS2011LCは、よりTDPの高いCore i7-3960Xにも対応することを前提としている)。なお、W2 Extremeにある2つのプリセットも、温度に大きな違いはなかった。

 高負荷時の温度が60度前後より低くならなかったのは、BIOSやPWMの設定条件、そして、Ivy Bridge世代のCPUで、ダイとヒートスプレッダを溶接ではなくグリスで埋めているあたりも影響している。従来までのCPUと比べると温度はやや高めだが、動作に関する影響はないと思われる。対策としては、PCケース内のエアフローを確保して、熱が内部にとどまるのを防ぐようにしたい。

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