HPの工業デザイナートップが語る「ビジネスに使える」デザインの条件不便な薄いボディに意味はない

» 2012年11月15日 16時48分 公開
[ITmedia]

ユーザーに必要な機能があるから1.5ミリ厚くなる

HPの法人向け製品で“工業”デザインを管轄するエリック・チェン氏

 Hewlett-Packard(HP)米本社プリンティング&パーソナルシステムズ PC GBU インタストリアル・デザインチーム マネージャーのエリック・チェン氏は、11月15日に日本で、HPの法人向け製品の開発における“デザイン”の位置づけと方向性について説明した。チェン氏は、HPにおいて、製品のデザイン戦略を推進するとともに、法人向けノートPCのデザイン開発を管轄している。工業デザインの経験は14年に及び、2009年のHP入社後、「HP ProBook 5330m Notebook PC」のデザインを担当したほか、2011年からは法人向けノートPCのラインアップで新しいデザインを導入している。

 10月18日に日本向け販売決定を発表した「HP EliteBook Folio 9470m」(以下、Folio 9470m)は、インテルが提唱するUltrabookの条件である本体の厚さで18.5ミリを実現したものの、Macbook Airより、まだ1.5ミリ厚いことについて、ビジネスで使うUltrabookのユーザーには外せない機能があり、HPは、その必要なスペックをボディに搭載できるように開発することを重視していると説明する。Folio 9470mでもワイヤレスWANのLTE対応データ通信や7ミリ厚HDDによる大容量データストレージ、14型ワイドの液晶ディスプレイ、通常サイズのインタフェース搭載などを実現するため、1.5ミリ厚くなったが、1.5ミリ薄いMacbook Airは、メディアカードリーダは外付で、アナログRGBに有線LANはアダプタを介して標準サイズのコネクタを利用することになる。

 ビジネス利用のユーザーも、最近では見た目に美しいボディのUltrabookを好む一方で、表面には耐久性のある塗装を必要とする。チェン氏は、この強度を確保する手段として4層構造の塗装を紹介した。最下層となるプライマーは頑丈な素材で強度を確保した上で、第2層と第3層でも、航空機に用いる素材を使って軽量ながらもここでも耐久性を持たせている。最上層では、ユーザーが求める質感と高級感を持たせるために、ソフトタッチペイントを取り入れている。また、ビジネスユーザーでも、最近では薄いボディを好む傾向があるが、ボディを薄くすると耐久性は劣ってしまう。このバランスが難しいとチェン氏は語る。

たとえ、Macbook Airよりボディが1.5ミリ厚くても(写真=左)、ユーザーが得る利便性ははるかに多い(写真=中央)。見た目の美しさとともに耐久性も求めるビジネスユーザーのため、4層の表面塗装を採用する。第2層、第3層は航空機でも使うほどの耐久性を持つという(写真=右)

インタフェースを拡張してバッテリーも内蔵する「SMART JACKET」を公開

コンシューマー向けのタブレットPCとビジネスで使うタブレットPCでは、ユーザーが重視するスペックが異なり、多くの場合、相反することになる

 チェン氏は、Folio 9700mと同時に発表したタブレットPC「HP ElitePad 900」(以下、 ElitePad 900)の開発において、「多様なユーザーニーズにどのようにして応えるか」が最も重要な課題だったと述べている。特に、ビジネスで使うスレートタイプのデバイスにおいては、薄さと処理性能という相反する要素にたいして、どちらもユーザーの要求を満たす必要がある。

 チェン氏は、この難しい条件にある製品デザインについて、従来のビジネス向けノートPCでは、合理性を重視する“左脳”的なデザインを行うが、ElitePad 900では、ユーザーの感性に訴える“右脳”的なデザインも重視したと語っている。また、競合する製品の多くは、薄くて見た目の美しさを重視したデザインになりがちだが、ElitePad 900は、スレートタイプのタブレットPCでも、ビジネスユーザーが求める、フルサイズのインタフェースや頑丈なボディ、長時間のバッテリー駆動時間、そして、修理などで重要になるボディの分解とパーツの交換が容易なメンテナンス性なども実現したと説明した。

従来のビジネス向けモデルでは、合理性を重視した“左脳”的な思考でデザインを行ってきたが(写真=左、中央)、これからは、ビジネスユーザーの感性に訴求する“右脳”的なデザインが必要になる(写真=右)とチェン氏は主張する

 「ボディのデザインや搭載するボタン、インタフェースはシンプルがいい」と語るチェン氏は、ビジネスユーザーが求める堅牢性や充実したインタフェースも利用できるように、スタンドタイプの専用ドッキングステーションのほか、専用ケースの「SMART JACKET」をオプションとして用意する。SMART JACKETは、2基のUSBとHDMI出力、SDメモリーカードスロットを備える。専用のドッキングステーションと接続するコネクタも搭載するので、SMART JACKETを装着したままでドッキングステーションに載せることが可能だ。また、SMART JACKETにもバッテリーを搭載することで、バッテリー駆動時間を約8時間延ばすことが可能になるという。

 さらに、キーボードユニットを搭載するケースも開発を進めており、これを使うとクラムシェルスタイルのノートPCのように利用できるようになる。こちらもインタフェースとして2基のUSBとSDメモリーカードスロットを搭載するほか、キーボードは同じ液晶ディスプレイを搭載するノートPCと比べて97パーセントのサイズを確保するとチェン氏は説明する。なお、キーボードユニットとElitePad 900本体は、Bluetoothなどの無線接続ではなく、コネクタを介したワイヤード接続となる。その理由として、チェン氏はキーボードと本体の接続処理が無線接続と比べて短時間で済み、キー入力の反応も速くて使いやすいことを挙げている。

SMART JACKETは、本体を守る“ジャケット”の機能とインタフェースを拡張するドッキングステーションの機能に加えて増設バッテリーも利用できる(写真=左、中央)。取り外し式のカバーは、内蔵する磁石で固定するほか、ジャケット本体は背面からのネジ2つで本体と固定する。インタフェースは下部側面に集中しており、2基のUSBとHDMI、SDメモリーカードスロットを備える(写真=右)

チェン氏は、キーボードを搭載したJACKETの存在も明らかにした。キーボードと本体の接続は無線ではなくコネクタを介したワイヤードを採用する

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