3DMarkで大きく“進化”したのが「クロスプラットフォーム測定」が可能になった点だ。Futuremarkは、これまでの3DMarkシリーズを、x86/x64 Windowsで動作するDirectX対応として開発してきた。タブレットデバイスやスマートフォンが搭載するグラフィックスコアも高性能化が進み、今では「主要なゲームデバイス」としてもゲームベンダーは認識している。ともすれば、PCゲームのシェアを脅かすほどだ。こうした新たなデバイスも、3Dグラフィックスの処理性能においてPCと同じ指標で比較できるというのは大きな意味を持つ。
そのクロスプラットフォームで測定結果を比較できる「3DMark」だが、対応しているのは、x86 Windows、Windows RT、Android、iOSの4つだ。まずそれぞれの動作要件をまとめておこう。
x86/x64 Windows版の最小構成は、OSがWindows Vista、CPUは1.8GHz以上のデュアルコアCPU(AMD、または、インテル)、システムメモリの容量は2Gバイト以上、データストレージには3Gバイト以上の空き容量、グラフィックスカードはDirectX 9対応以上のGPUを搭載する。ただし、Windows Vistaでは、DirectX 11に対応するマイクロソフトのパッチの適用が必要だ。推奨構成では、OSがWindows 7、または、Windows 8に、システムメモリの容量が4Gバイト以上、グラフィックスカードにはDirectX 11対応のGPUを搭載して1Gバイト以上のグラフィックスメモリを乗せる必要がある。最小構成の条件はキビシイものではなく、Atomを搭載したWindows 8タブレットでも実行可能だ。
Windows RTだが、こちらはまだ製品バリエーションが少ないため、Futuremarkは後日公開する予定としている。また、一部のデバイスではすべてのテストを実行することができない、ともいわれている。Androidデバイスでは、OSがAndroid 3.1以降、CPUは現在検証中とのことで明らかにしていない。システムメモリは1Gバイト以上を要する。グラフィックスコアがサポートするAPIはOpenGL ES 2.0互換以上、データストレージには300Mバイト以上の空き領域が必要となっている。ハードウェアの動作要件としてはそれほど厳しい条件ではなく、およそ2年前のモデルでもクリアできそうだ。iOSでは、OSがiOS 5.0以降、デバイスとしてはiPhone 4以降、iPad 2以降、第5世代iPod touch以降をサポートする。こちらもデータストレージの空き容量は300Mバイト以上必要としている。
「3DMark」では、大きく分けて3つのシナリオを用意している。それぞれ「Ice Storm」「Cloud Gate」「Fire Strike」とあるが、x86/x64 Windows、及び、Windows RTに関しては3つすべてが対象となる一方、AndroidとiOSデバイスでは最も軽いシナリオのIce Stormのみが動作する。なお、それぞれに「Demo」を用意しており、初期設定ではDemoを1巡してからテストを実行する。
Ice Stormは、DirectX 9相当(DirectX 11のDirect3D Feature level 9)、または、Open GL ES 2.0に対応したシナリオ、Cloud Gateは、DirectX 10相当(DirectX 11のDirect3D Feature level 10)のシナリオ、Fire Strikeは、DirectX 11対応のシナリオと、分けられている。
Ice Stormは、タブレットデバイスやスマートフォンといったデバイスもサポートする「高性能な携帯端末」(Windowsを導入するタブレットPCなどを含む)向けのシナリオという位置づけになる。標準設定の解像度は、1280×720ドットで、必要となるグラフィックスメモリの要求も128Mバイト程度だ。シナリオは、Graphics test 1(GT1)、Graphics test 2(GT2)、Physics testの3部構成になる。GT1がバーテックスシェーダの処理性能の測定、GT2がピクセルシェーダの処理性能測定になる。Physics testは、オープンソースのPhysicsライブラリを用いるが、主たる目的はCPUの演算処理能力の測定だ。
Cloud Gateは、ホームPCなどバリュークラスの汎用PC向けのシナリオだ。標準設定で解像度は1280×720ドットと、Ice Stormと変わらないが、必要とするグラフィックスメモリは256Mバイトほど要求する。標準の画質設定も、陰影のサンプル数が4、DoF品質がLow、Bloom Resolutionが8分の1など、負荷は比較的低い。シナリオは、GT1、GT2、Physicsという3部構成だが、映像はIce Stormと異なり、それぞれの頂点(バーテックス)数、ピクセル数も、Ice Stormからは大幅に増えている。GT2では、シンプルなレベルといいつつもボリューメトリック・イルミネーションを用いている。Physics testはIce Stormと同様、オープンソースのライブラリを用い、CPUで処理を行っている。ソフトボディやリジットボディも用いている。
Fire Strikeは、最新のPCゲームや限界近くまでチューニングするオーバークロックといったハイエンドPCを想定したシナリオだ。通常設定に加えてExtreme設定というのも用意している。解像度は、通常設定が1920×1080ドット、Extreme設定では2560×1440ドットとなる。また、グラフィックスメモリは、通常設定でも1Gバイト以上、Extreme設定では1.5Gバイト以上を必要とする。標準の画質設定では、通常設定が主にMediumレベルであるのに対して、Extreme設定ではHighレベルを適用している。
シナリオの構成は、GT1、GT2、Physics testのほかに、Fire StormのみCombined testが加わる。GT1はジオメトリ演算と照明にフォーカスしたテストで、GT2ではパーティクルとスモークなどのGPUシミュレーションにフォーカスしている。Physics testは、ほかのシナリオと同様に、オープンソースのライブラリを用いたものでNVIDIA PhysXなどに特化したものではない。CPUを利用しているのも共通する。
Combined testは、GPUとCPUの双方に多大な負荷をかけるテストとなる。Physics testはCPU演算にフォーカスし、GPU負荷を下げているのに対し、こちらは双方に負荷をかけることで総合的な性能を評価する。また、CPUのマルチスレッディング対応、DirectX 11で利用できるテッセレーション、ボリューメトリックとパーティカルe関連のイルミネーションなども影響する。
なお、これらテストの詳細に関しては、Futuremarkがテクニカルガイドを公開されている。
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