「VAIO Duo 11」を静かな場所で快適に使うテクニックVAIO Duo 11ロードテスト(3)(1/2 ページ)

» 2013年03月12日 17時15分 公開
[鈴木雅暢,ITmedia]

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柔軟な熱設計を採用した「VAIO Duo 11」

ソニーのスライダーハイブリッドPCこと「VAIO Duo 11」は、画面を立てればノートPCと同様の「キーボードモード」に、閉じれば板状の「タブレットモード」に切り替わる。今回のロードテストには、ソニーストアで購入できるVAIOオーナーメードモデルの最上位構成を使っている

 前回解説した通り、ソニーのスライダーハイブリッドPCこと「VAIO Duo 11」には、「cTDP」(Configurable Thermal Design Power:設定可能な熱設計電力)を用いた熱設計が導入されている。

 通常は17ワットのTDPだが、状況に応じて性能を重視したTDP Up(25ワット)や、省電力を重視したTDP Down(14ワット)に対応する仕組みを採り入れているのだ。

 VAIO Duo 11で1番のウリといえば、ノートPC形状の「キーボードモード」と、タブレット形状の「タブレットモード」をワンアクションで手軽に切り替えながら利用できること。それぞれのモードで異なる熱設計が求められるため、cTDPをサポートしつつ、利用シーンに応じてパフォーマンスと消費電力(冷却や騒音も関係する)のバランスを調整できる仕様としているのは見逃せない。

VAIO Duo 11のConfigurable TDP対応状況
VAIO Duo 11本体の状態 本体の冷却とパフォーマンス設定 TDP Up対応 TDP Down対応 その他条件
キーボードモード パフォーマンス優先 25ワット Core i7のみ
タブレットモード パフォーマンス優先 17〜25ワット(具体的な数値は非公開) Core i7のみ
キーボードモード/タブレットモード 冷却優先/静かさ優先 14ワット Core i3/5/7の全モデル
キーボードモード/タブレットモード 標準 14ワット Core i3/5/7の全モデル+バッテリー駆動

VAIO Duo 11を静かな場所で安心して使いたい!

VAIOユーザーならおなじみの「VAIOの設定」。「電源・バッテリー」メニューには「本体の冷却とパフォーマンス」という項目があり、デフォルトの「標準」のほか、「パフォーマンス優先」「冷却優先」「静かさ優先」と合計4つのモードが用意されており、各モードがcTDPとも連動している

 前回はVAIO Duo 11におけるcTDPの挙動を調べるため、ソニー独自のユーティリティソフト「VAIOの設定」に用意された「本体の冷却とパフォーマンス」の設定を「標準」(TDP 17ワット)の状態から、TDP Up(25ワット)となる「パフォーマンス優先」設定に、あるいはTDP Down(14ワット)となる「冷却優先」設定に変更し、パフォーマンスと消費電力がどのように変わるのかをチェックした。いずれも利用スタイルは、キーボードモードの状態だ。

 結果は、TDP Upの状態で内蔵グラフィックスの3D描画性能が5%ほど上昇した。小幅なスコアアップではあるが、逆にいえば、キーボードモードでは「標準」設定でも十分に高いパフォーマンスが得られるように作られているということだ。

 そのことは3D描画系ベンチマークテストの実行時など、高負荷時にはそこそこ大きな動作音がすることからも実感できる。使用中に「シャー」という冷却ファンの回転音が聞こえてくるのだ。このサイズのハイブリッド型Ultrabookとしては放熱設計で健闘しているほうだと思うが、高負荷時の動作音は少々耳障りに感じることもあるだろう。

 というわけで、前回は主にTDP Upの性能向上に注目したが、今回はTDP Down(14ワット)の効果をさらに掘り下げていこう。キーボードモードでTDP Downとなる設定には「冷却優先」のほかに「静かさ優先」もある。この設定にした場合、性能と静音性はどう変わるのだろうか。

 まず、性能面は、前回のテスト結果に追加する形で下のグラフにまとめたが、同じTDP Downの設定でも「冷却優先」と「静かさ優先」では、まったく異なる結果になった。「静かさ優先」では、比較的差が少ないPCMark 7でも「冷却優先」の9割弱のスコアにとどまる。マルチスレッドで処理を行うCINEBENCHのCPUスコアや3D描画系のテストではさらに差が開き、7〜7.5割ほどのスコアまで落ち込んだ。

PCMark 7(1.0.4)のスコア(グラフ=左)。CINEBENCH R11.5のスコア(グラフ=右)

3DMark Vantage 1.1.0のスコア(グラフ=左)。3DMark06 1.2.0(1024×768)のスコア(グラフ=中央)。ストリートファイターIVベンチマークのスコア(グラフ=右)

 消費電力についても、前回のテストと同様に3DMark Vantage(Entry)実行中の推移を見てみた。最初の初期処理を終えた後は同じTDP Down(14ワット)の「冷却優先」よりも明らかに低く、ほとんど20〜23ワットくらいで推移している。場面の切り替わり時などに一瞬消費電力が上がるだけで、すぐにまた20ワット台前半に戻る。CPU/GPUともにほとんどブーストしていないことが分かる。

3DMark Vantage(Entry)実行時におけるシステム全体の消費電力
設定 静かさ優先(TDP Down 14ワット) 冷却優先(TDP Down 14ワット) 標準(TDP 17ワット) パフォーマンス優先(TDP Up 25ワット)
平均消費電力(開始から500秒後まで) 21.2ワット 26.9ワット 28.2ワット 29.9ワット
最大消費電力 32.2ワット 35.3ワット 35.6ワット 40.5ワット

3DMark Vantage(Entry)実行時におけるシステム全体の消費電力推移

暗騒音32デシベル/室温22度の環境において、本体手前5センチに騒音計を設置し、動作音を測定した結果

 その代わり、動作音はさすがの結果だ。他のモードでは、アイドル時や低負荷時は静かなものの、CPUやGPUに高負荷がかかると明らかにファンの回転音が上がる。しかし、「静かさ優先」ではまったくそうした傾向がなく、静粛なままだ。あえて耳を近づけて、ようやくファンが回っているのが確認できる程度だった。

 つまり、静かな図書館などで勉強に飽きてこっそりゲームなんかしていると、他のモードではファンノイズの増大でバレてしまうが、この「静かさ優先」モードならバレないだろう。

 というのは冗談だが、CINEBENCHのCPU(シングルコア)やPCMark 7のスコアに見るように、シングルスレッド中心の処理速度はそれほど落ちていない。体感的な操作のレスポンスも変わらず快適だ。したがって、静粛な場所での利用はもちろん、3D描画性能を優先しない用途や、バッテリー駆動時間を少しでも延ばしたいシーンでは、「静かさ優先」モードで使うのもアリではないだろうか。

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