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前回解説した通り、ソニーのスライダーハイブリッドPCこと「VAIO Duo 11」には、「cTDP」(Configurable Thermal Design Power:設定可能な熱設計電力)を用いた熱設計が導入されている。
通常は17ワットのTDPだが、状況に応じて性能を重視したTDP Up(25ワット)や、省電力を重視したTDP Down(14ワット)に対応する仕組みを採り入れているのだ。
VAIO Duo 11で1番のウリといえば、ノートPC形状の「キーボードモード」と、タブレット形状の「タブレットモード」をワンアクションで手軽に切り替えながら利用できること。それぞれのモードで異なる熱設計が求められるため、cTDPをサポートしつつ、利用シーンに応じてパフォーマンスと消費電力(冷却や騒音も関係する)のバランスを調整できる仕様としているのは見逃せない。
VAIO Duo 11のConfigurable TDP対応状況 | ||||
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VAIO Duo 11本体の状態 | 本体の冷却とパフォーマンス設定 | TDP Up対応 | TDP Down対応 | その他条件 |
キーボードモード | パフォーマンス優先 | 25ワット | − | Core i7のみ |
タブレットモード | パフォーマンス優先 | 17〜25ワット(具体的な数値は非公開) | − | Core i7のみ |
キーボードモード/タブレットモード | 冷却優先/静かさ優先 | − | 14ワット | Core i3/5/7の全モデル |
キーボードモード/タブレットモード | 標準 | − | 14ワット | Core i3/5/7の全モデル+バッテリー駆動 |
前回はVAIO Duo 11におけるcTDPの挙動を調べるため、ソニー独自のユーティリティソフト「VAIOの設定」に用意された「本体の冷却とパフォーマンス」の設定を「標準」(TDP 17ワット)の状態から、TDP Up(25ワット)となる「パフォーマンス優先」設定に、あるいはTDP Down(14ワット)となる「冷却優先」設定に変更し、パフォーマンスと消費電力がどのように変わるのかをチェックした。いずれも利用スタイルは、キーボードモードの状態だ。
結果は、TDP Upの状態で内蔵グラフィックスの3D描画性能が5%ほど上昇した。小幅なスコアアップではあるが、逆にいえば、キーボードモードでは「標準」設定でも十分に高いパフォーマンスが得られるように作られているということだ。
そのことは3D描画系ベンチマークテストの実行時など、高負荷時にはそこそこ大きな動作音がすることからも実感できる。使用中に「シャー」という冷却ファンの回転音が聞こえてくるのだ。このサイズのハイブリッド型Ultrabookとしては放熱設計で健闘しているほうだと思うが、高負荷時の動作音は少々耳障りに感じることもあるだろう。
というわけで、前回は主にTDP Upの性能向上に注目したが、今回はTDP Down(14ワット)の効果をさらに掘り下げていこう。キーボードモードでTDP Downとなる設定には「冷却優先」のほかに「静かさ優先」もある。この設定にした場合、性能と静音性はどう変わるのだろうか。
まず、性能面は、前回のテスト結果に追加する形で下のグラフにまとめたが、同じTDP Downの設定でも「冷却優先」と「静かさ優先」では、まったく異なる結果になった。「静かさ優先」では、比較的差が少ないPCMark 7でも「冷却優先」の9割弱のスコアにとどまる。マルチスレッドで処理を行うCINEBENCHのCPUスコアや3D描画系のテストではさらに差が開き、7〜7.5割ほどのスコアまで落ち込んだ。
消費電力についても、前回のテストと同様に3DMark Vantage(Entry)実行中の推移を見てみた。最初の初期処理を終えた後は同じTDP Down(14ワット)の「冷却優先」よりも明らかに低く、ほとんど20〜23ワットくらいで推移している。場面の切り替わり時などに一瞬消費電力が上がるだけで、すぐにまた20ワット台前半に戻る。CPU/GPUともにほとんどブーストしていないことが分かる。
3DMark Vantage(Entry)実行時におけるシステム全体の消費電力 | ||||
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設定 | 静かさ優先(TDP Down 14ワット) | 冷却優先(TDP Down 14ワット) | 標準(TDP 17ワット) | パフォーマンス優先(TDP Up 25ワット) |
平均消費電力(開始から500秒後まで) | 21.2ワット | 26.9ワット | 28.2ワット | 29.9ワット |
最大消費電力 | 32.2ワット | 35.3ワット | 35.6ワット | 40.5ワット |
その代わり、動作音はさすがの結果だ。他のモードでは、アイドル時や低負荷時は静かなものの、CPUやGPUに高負荷がかかると明らかにファンの回転音が上がる。しかし、「静かさ優先」ではまったくそうした傾向がなく、静粛なままだ。あえて耳を近づけて、ようやくファンが回っているのが確認できる程度だった。
つまり、静かな図書館などで勉強に飽きてこっそりゲームなんかしていると、他のモードではファンノイズの増大でバレてしまうが、この「静かさ優先」モードならバレないだろう。
というのは冗談だが、CINEBENCHのCPU(シングルコア)やPCMark 7のスコアに見るように、シングルスレッド中心の処理速度はそれほど落ちていない。体感的な操作のレスポンスも変わらず快適だ。したがって、静粛な場所での利用はもちろん、3D描画性能を優先しない用途や、バッテリー駆動時間を少しでも延ばしたいシーンでは、「静かさ優先」モードで使うのもアリではないだろうか。
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