「販売店>>>>メーカー」を揺さぶる“限定”大作戦:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)

» 2013年06月19日 10時30分 公開
[牧ノブユキ,ITmedia]
前のページへ 1|2       

限定商材は仕入れ交渉や部材手配が容易なメリットも

 さて、ここまでは限定商材を売るメーカー営業と、売り込まれる販売店の話を見てきたが、これとはまったく別に、限定商材の増加には、メーカー側の生産や仕入れ側の事情が反映されていることも少なくない。これらについても見ていこう。

 メーカーの生産や購買、仕入れ部門からすると、こうした「限定カラー」や「初回特典つき」の商材は、あらかじめ数量を決めて仕入れ交渉や部材の手配が行えるのが大きなメリットだ。一見するとまるで当たり前のことのようだが、売れ行きが見極めにくい製品は、常時稼働する生産ラインを立ち上げるべきなのか否か、またどのくらいの部材を調達しておくべきなのか、といった判断がしにくく、経験豊富な担当者を持ってしても読み違いを起こしやすい。

 余談だが、「これだけの台数は必ず売りますから」という営業サイドの発言を信じて大量の部材を仕入れたところまったく売れず、仕入れ部門の責任問題に発展したケースは、おそらくどのメーカーにもあるのではないか。

 「そこを外注元に無理を言ってでも何とかするのがメーカーの購買ないしは仕入れ部門だろう」という指摘はごもっともなのだが、それはあくまでも理想論であって、外注元に対するメーカーの力は、実際にはそれほど強いわけではない。

 それゆえ、あらかじめ必要な台数がきっちり決まっていれば、ブレのないオペレーションが可能になり、コストも計算しやすく、トラブルの耐性も上がる。納入段階で何らかの事故が発生した場合も「根本的にトラブルの原因を究明して、安定的に納品できるようにしろ」ではなく「とにかく○台だけ用意できればいいので、何とかしろ」のほうが、対応は明らかに容易だからだ。

 中には、台数を決めてから仕入れ交渉を行うのではなく、仕入れ交渉の段階で決定した台数から逆算して限定数を決めるケースも多いわけだが、どちらにしても「営業ないしは販売店が言ってきた非現実的な台数に無理に辻褄(つじつま)を合わせる」という必然性はなくなる。

 ただし、メーカーとしての経験値が低いと、外注元の「あと○万台仕入れてくれれば、原価が○割引になりますよ」というささやきを真に受けてしまうケースがあるので、そこはメーカーの仕入れ部門の熟練度が問われていると言える。

限定商材の活用がメーカーの生き残りを決める?

 ここまで要因を見てきたが、これら「限定カラー」や「初回特典つき」は、定番品を回していく従来の売り方とは別に、新しい時代に適合したメーカーの売り方として今後も増えていくのは確実だ。

 むしろ定番品と売り方をきっちり分け、こうした限定商材を活用した売り方のオペレーションを構築できたメーカーおよび小売店が、今後生き残ることになるだろう。最初から販路を分け、まず自社通販サイトでテストし、飛び抜けて販売量が多かった製品だけを定番に昇格させる、という売り方も加速してくると予想される。

 一方で、限定商材の増加によって商材の入れ替わりが早くなることが、商品特徴についてろくに説明もできない店員を生み出す1つの要因になっており、結果としてリアル店舗の強みの1つを失わせつつあるのも事実で、実は意外と根の深い問題でもある。

 こうした点はまた別の機会に取り上げたいが、いずれにせよ「限定カラー」や「初回特典つき」が決してユーザーのニーズから生み出されたものでなく、今やメーカー側の事情が多くを占めていることは、知っておいて損はない。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年09月26日 更新
  1. 実売3万9800円でノートPCを3画面化! ソースネクストのデュアル拡張ディスプレイ「DGP-DMD1401」を試す (2026年09月25日)
  2. AndroidとChromeOSが融合した次世代PC「Googlebook」の実機を見てきた ――AI統合で何が変わるのか? (2026年09月25日)
  3. 新型「Mac mini」「Mac Studio」徹底レビュー! ローカルAIはついに“実用域”へ エージェントAIに事務仕事を任せて分かった驚異の進化 (2026年09月22日)
  4. なぜ競技用ゲーミングPCは光らない? HPSC久木留所長とマウス軣社長が語るアスリート支援の未来 (2026年09月24日)
  5. 「これはわれわれにとってのTGSだ」 ロジクールGが年に一度の旗艦イベント「Logicool G PLAY Tokyo 2026」を開催 熱気あふれる会場を現地レポート (2026年09月25日)
  6. “Vision Pro級”のMR体験が約100gの軽量グラスで? 最新の「Meta VR Glasses」を試して分かった圧倒的な快適性 (2026年09月25日)
  7. 12インチ「Surface Pro」と13インチ「Surface Laptop」に個人向けの第2世代が登場 Snapdragon X2 Plus搭載でメモリは最大24GBに (2026年09月24日)
  8. ロジクールGの新型マウス「PRO X3 SUPERSTRIKE」や8K対応キーボード「PRO X2 RAPID」を見てきた (2026年09月24日)
  9. 天空がCore Ultra 5を搭載した10.51型2in1ノート「TENKU Note Pro AI」を発売 (2026年09月24日)
  10. GeForce RTX 5080は30万円超えの空気感――GPU高騰の裏で見つけた7割引の水冷パーツと8万円台の小型PC (2026年09月26日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー