電子ブックリーダー「Kobo Touch」のユーザーによる口コミレビューが、運営者であり製品の発売元でもある楽天によって“非表示”にされたことは、ユーザーのみならず関係者に大きな波紋を起こした。製品購入の意思決定に大きな影響を与える口コミWebサイトに低評価レビューが大量に並ぶのは、初動が重要なタイプの製品販売において致命的だ。5段階で評価1や2が並ぶレビューを見て、楽天側が購入を考えているユーザーへの影響を懸念したのは無理からぬことだ。
購入者に高い評価をつけてもらうことは、製品を売ることよりはるかに難しい。数多く売りたいのなら、それこそ圧倒的に安くすればユーザーは飛びつく(まさに今回がその例だろう)。しかしながら、いったん下された低評価を覆すのは難しい。その後、どれだけ高い評価がついたとしても、スコア的には五分にもっていくのがやっとだろう。だからこそ、どのメーカーも、いざというときは、予告していた発売日を延期してまで、製品の完成度を高めた状態で出荷しようと努力する。
それだけに、投稿されたレビューをすべて非表示にした楽天の対応には、ユーザーだけでなく関係者の誰もが衝撃を受けた。楽天は否定しているが、この対応を見たユーザーの多くは、同社が過去にも別の製品で同様の処置を行なっていたのではないか、そして、将来的にも同じようなケースが発生するのではと、疑念を抱くだろう。
ところで、楽天koboのレビューが非表示になったあと、同製品レビューの投稿数を大きく伸ばしている口コミWebサイトがある。それが「価格.com」だ。8月4日時点で、その評価は1.99と、非表示になる前の楽天レビューにおける評価値をさらに下回っており、この記事を作成している時点においても低評価のレビューが続々と投稿されている。いくら楽天であっても、運営に関与していない価格.comのレビューを非表示にできない。かえって傷口を広げてしまった格好だ。
この“事案”に限らず、発売直後に口コミレビュー上で低い評価が大量に発生し、製品を改良したあとも、低い評価が定着してしまった状況に陥ってしまった場合、発売元のメーカーとしては(その手法の是非はともかくとして)どのように評価を回復すればいいのだろうか。ここでは、一般論として、メーカーによる「評価回復のための裏テクニック」の数々を紹介していく。先人たちの“知恵”は、メーカーとしての経験がまだまだ浅い新規参入企業にとって大いに参考になるはずだ(その手法の是非はともかくと以下同文)。
「レビューそのものを非表示にする」のは、自らが運営する口コミWebサイトでしかできない。今回の“事案”のようなケースは極めて珍しい。メーカーにとって第三者が運営する口コミWebサイトで低評価のレビューが投稿されてしまった場合、「非表示にする」のではなく「なるべくユーザーの目に触れさせないようにする」ことが求められる。そのために行われたいくつかの具体的な方法をみてみよう。
1つは、ユーザーを装って好意的な評価を多数投稿する対応だ。評価の低いレビューを見にくいところに追いやり、評価の平均値を上げる。いわゆるステルスマーケティング的手法だ。しかし、これは2012年に入ってからの一連の騒動により、消費者庁のガイドラインで明確に禁止された。
現在、こうした行為が明らかになれば、製品どころかメーカーそのものの信用を損なう問題になりかねない。もちろん、方法が巧妙化してこっそりと行っている可能性は残っているし、AppStoreなどで突然評価5のレビューが連投されて話題になることもあるが、従来とは異なり目立って動きにくい状況になりつつあるのは確かだ。
こうした事情に加え、「ステマ」行為をすべての口コミサイトに対して行うのは大変な労力を必要とする。それゆえ、対応を外注に丸投げしようとして、発注した先から発覚するケースもある。また、苦労して好意的なレビューで埋め尽くしたとしても、低評価となった原因そのものの不具合が改善されていなければ、結局ユーザーによる低評価レビューの大量投稿を止めることはできない。こうした“ステマ工作”レビューと低評価レビューの競争が、かえって炎上を招く場合も多い。
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