2013年のノートPC全体を振り返って、最も強く印象に残ったのは画面の進化だ。
2012年の同企画で、「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」の画面を「2〜3年先のPCの画面」と感想を書いたが、進化は予想以上に早かった。1年たった今では、Retinaディスプレイ並に(あるいはそれ以上の)高精細かつ高画質な液晶ディスプレイを搭載する製品もいくつか登場しており、画素密度だけでいえば珍しい存在ではなくなってきた。もっとも、より一般に普及するためにはまだ1〜2年はかかるだろうから、2〜3年というのもあながち大外れではなかったともいえる。
高解像度ディスプレイが増えた背景には、Haswell世代でCPU/基本システムの消費電力が下がったため、画面などに振り向ける電力の余裕ができたことや、IGZOやIPSαなど、開口率が高く高画素密度と省電力を両立しやすい液晶ディスプレイ技術が利用できるようになったことが裏付けとしてあるが、画質面まで踏み込んでいるのはPCメーカーが画面の重要性を認識し、強く意識するようになったからだろう。性能、バッテリー駆動時間だけでなく、画面、サウンドなども含め、総合的なユーザー体験を向上させる方向へと進んでいるのは確実だ。
この動きは大いに歓迎したい。これまでのノートPCは、単発的に高画質の製品はあったものの、基本的に画面の解像度や画質(視野角、色域)といった要素の優先順位は低かった。技術レベルを考えれば間違った方向性ではなかったが、それはあくまでも妥協の結果に過ぎず、本来軽視してよかった要素ではない。妥協から生まれた方向性がいつしか当たり前になり、その当たり前がノートPCを魅力のないものと感じさせていた一面もあったように思う。タブレットに新鮮な魅力を感じるのも、(以前のノートPCにはなかった)画面の美しさの差によるところも大きいのではないだろうか。
画面から受けるユーザー体験の改善は、これまでのノートPCのイメージをポジティブな方向に大きく変えるきっかけになるかもしれない。もちろん、一部の高級機種だけでは定着したイメージは覆せない。この軌道修正の動きが、より範囲を広げ、低価格なノートPCにも広がってくれることを期待したい。
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