発売直後はやや手に入りづらかった「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」だが、記者の回りでも少しずつユーザーが増えてきた。11インチMacBook Airが登場したときほどの増殖ぶりではないものの、MacBook Pro Retinaを使う人はなぜか啓蒙活動に熱心な人が多いようで、初対面の人にさえRetinaディスプレイを見せて回ったりして余計目につくのだ。もっともこれは、欲しい欲しいと思いながら価格面であと1歩が踏み出せない記者の単なるひがみである。
とにかく、MacBook Pro Retinaが欲しい。これまでサーモグラフィ装置や測色器などを用いて検証してきたように、2880×1800ドットの高解像度ディスプレイはもちろんのこと、ノートPCとしての完成度も群を抜いている。重量は約2.02キロとモバイルには重いが、MacBook Air並の薄さや一回り以上大きな(そして高精細な)ディスプレイ、圧倒的な性能を考えれば不満はない。むしろ、これまで15インチMacBook Proを持ち歩いていた人にとっては、身軽にさえ感じることだろう。
と、前置きはこれくらいにし、これまでの評価のまとめとしてベンチマークテストの結果を掲載していこう。
まずはOS X Lion環境下でCINEBENCH 11.5、CINEBENCH R10、Geekbench 2.3.4を実施した。評価機のスペックは、Core i7-3720QM(2.6GHz/最大3.6GHz)とNVIDIA GeForce GT 650M(1GバイトGDDR5)、512バイトSSDを搭載する上位モデル「MC976J/A」(23万8800円)だ。
CINEBENCH 11.5は、OpenGLが37.26(fps)、CPUが5.99(pts)という結果、CINEBENCH R10はOpenGLが8859、Multiple CPUが19213、Geekbenchの総合スコアは11939となった。なお、CINEBENCH R10では、2010年4月発売の15インチMacBook Pro(MC373J/A、15-inch, Mid 2010)と比較している。スペックは第1世代のCore i7-620M(2.66GHz/最大3.33GHz)とNVIDIA GeForce GT 330M(512MバイトGDDR3)、ストレージは500GバイトHDDと、MacBook Pro Retinaとはかなり世代差を感じるが、時期的に買い換えを検討している人が多そうだという理由による(そして、当時これでも20万8800円したのである)。
次にWindows 7環境下で定番ベンチマークテストを実施した。BootCampアシスタントを用いて64ビット版Windows 7 Home Premiumをインストールし、アップル純正のWindows Supportを導入している(BootCampドライバのバージョンは4.0 Build 4326)。
実行したのはPCMark Vantage、PCMark 7、3DMark06、3DMark Vantage、3DMark 11の5つ、またゲーム系ベンチとしてストリートファイターIVベンチマークとモンスターハンターフロンティア ベンチマーク【絆】も試している。
まずはWindowsエクスペリエンスインデックスの結果から見ていこう。サブスコアを個別に見ると、プライマリハードディスクが最高の7.9を記録したほか、プロセッサが7.6、メモリが7.7、グラフィックスがともに7.2と、すべて7以上となっており、非常に高いバランスでまとまっている。当然ながらWindows 7を快適に操作できるのは間違いない。仕事でどうしてもWindowsを使う必要があるMacユーザーは、Windows搭載デスクトップPCのリプレースを兼ねてしまうのもいいかもしれない。
ちなみにWindows環境下で使う際は、2880×1800ドット表示だと広大なデスクトップ領域を利用できるぶん、アイコンや文字がかなり細かくなってしまう(Lionでは標準設定の「Retinaディスプレイに最適」(1440×900相当)のほか、1920×1200相当まで5段階でサイズ調整できる)。Windows 7ではカスタムDPI設定で標準(96dpi)から1%単位で変更できるので自分の好みで調整するといいだろう(200%にすれば1440×900相当になる)。個人的な印象では、視認性と作業領域のバランスで150%程度の設定がちょうどいいと感じた。
総合系ベンチマークテストであるPCMark VantageとPCMark 7でも、高性能な基本システムに加え、高速なSSDを採用していることで、非常に良好なスコアをマークした。PCMark Vantageで参考に掲載したMC373J/Aとは、SSDとHDDの違いで(操作の体感以上に)大きく差がついてしまったが、その部分を差し引いても、買い換えを検討する十分な動機になる結果だ。
3D描画性能を測る3DMark06、3DMark Vantageのスコアも総じて高く、ストリートファイターIVベンチマークのスコアは20094(1280×720、平均182.38fps、評価A)、モンスターハンターフロンティア ベンチマーク【絆】のスコアは8454(1280×720)となった。Retinaディスプレイのために搭載された強力なGPUのおかげで、ミドルレンジクラスのゲーミングノートPCと同程度の性能を備えているのが分かる。さすがにGeForce GTX 680MやGeForce GTX 675Mを搭載するハイエンドなゲーミングノートPCに比べれば劣るとはいえ、DirectX 9ベースのゲームタイトルなら快適に、最新タイトルでも設定を調節することで十分楽しめるはずだ。
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