もっとも、今回の事業切り離しに関しては、別の事情があるように思える。
1月の2014 CESでソニーの平井社長にかなり長いインタビューを行ったが、簡単にまとめると「現在は製品力を高めるための投資フェーズであり、当然その中には失敗例も多い。しかし、成功例も出始めており、必要な投資(リスク)であることを理解してほしい」ということだ。
昨今、ソニー製品の存在感が増しているのは、こうした平井体制後のやり方が浸透し始め、実際の製品に反映され始めたからだ。実際、商品を企画・開発している人たちと頻繁に接している筆者のような立場から見ると、その違いは明らかで、現場でモノづくりをしているエンジニアが、生き生きとしてきている。
とはいえ、リスクを取ったとしても、その成果として利益が生まれ始めるまでには、まだしばらくの時間はかかる。社内の平井氏への求心力はかつてないレベルにまで高まっているが、一方で収支改善を求める圧力は、社長就任3年目を迎える今年、さらに強まるだろう。
こうした中で、よい商品を作りながらも収支改善できなかったVAIO事業を切り離さなければ、これまで進めてきたソニーのエレクトロニクス事業改革を前進させられないという判断だったのではないか。
WindowsタブレットであるVAIO Tap 11にも見られるように、Androidスマートフォン/タブレットのブランドであるXperiaの領域とVAIOの領域がクロスオーバーし始めていただけに、タイミングとしては非常に残念だ。VAIOがあるからこそ、ソニー製品のネットワークを生かせる。そんな場面も、今後きっと出てくると思う。
しかし、そうした期待感だけでは説明しきれないほど、事業規模の縮小や赤字規模の拡大などがあるならば、他のコア事業として指定している分野への継続的な投資を正当化するためにも、VAIOの切り離しという判断をせざるを得ないかもしれない。
ただし、前述したように、“事業の切り離し=ブランドの喪失でないこと”は、Lenovoの例を見ても分かるだろう。ソニーからVAIOが分離されることで、むしろ状況が改善する可能性もあると思う。今後は長野県安曇野に生まれる新会社の体制に注目したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.