MullinsとBeemaでは、ARMベースのハードウェアセキュリティ機能を統合したことも大きな特徴だ。両SoCは、AMR Cortex A5をPlatform Security Processor(PSP:プラットフォーム・セキュリティ・プロセッサ)として統合し、ARM TrustZoneをサポート。TrustZoneは、物理メモリのTrusted OSと呼ぶ専用OSを動作させることで、WindowsやLinuxといった汎用OSの動作を監視してマルウェアなどの攻撃や、セキュリティ解除の動きを検知・防止することを可能にする。
また、このPSPではICカードのセキュリティに関する標準化団体であるGlobal Platformや、Trusted Computing GroupがモバイルOS向けのオープンスタンダードとして採用する「Trusted Execution Environment」(TEE)もサポートしており、業界標準技術を採用することで、幅広いプラットフォームやアプリケーションで、すぐれたセキュリティ機能を実装できるとしている。
AMDは、MullinsとBeemaにおいて、大幅な省電力機能のアップデートを行なっている。同社がターゲットとしたのは、制約の多い熱設計でも、SoCの半導体性能を引き出すことだ。
現在、熱設計の制約が厳しいタブレットでは、SoCの表面温度を“しきい値”として、電力制御を行なっている場合がほとんだ。しかし、MullinsはBeemaと同じ半導体を使っていることからも分かるとおり、SoCそのものの性能や熱設計には余裕がある。
そこで、Mullinsでは新たにタブレット本体の温度を新しい“しきい値”とすることで、これまで以上に高い表面温度でも一定時間動作するようにすることで、より高い動作クロックでの動作を可能にし、パフォーマンスアップを図っている。
その一方で、MullinsとBeemaでは、Webブラウジングなど、ブースト動作によって動作周波数を引き上げてもあまり効果がないアプリケーションを認識し、これらのアプリケーションでは動作周波数を固定にすることで、電力消費を抑えるインテリジェント・ブースト・コントロールもサポートする。
また、バッテリー駆動時間を引き延ばすため、ブースト動作と同時にSoCの利用しない機能をすばやくオフにすることで、消費電力の低減を図っている。さらに、MullinsとBeemaでは、半導体製造技術の成熟と半導体設計の最適化により、リーク電流はTemash/Kabiniに比べて、CPU部で19%、より専有面積の大きいGPU部ではその倍の38%を削減することに成功している。
この省電力性能とパフォーマンス向上の両立には、新たに改良された省電力DDRメモリインタフェースも寄与している。Beemaでは、DDR3-1866に対応することで3D性能を向上させているほか、DDR3L-1333の新しい低電力モードをサポートすることで、メモリの消費電力を500ミリワット低減。また、ディスプレイインタフェースについても、電源回路の改良により200ミリワットの省電力化を果たした。
同社はさらに、省電力技術ロードマップも公開し、2014年末にはAPUの電源回路をシリコン統合する「Integrated Voltatge Regulation」や、SoCの各機能ごとに、よりきめ細やかな電力制御を行なう「Per Part Adaptive Voltage」などを実現する意向を示した。
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