“Devil's Canyon”「Core i7-4790K」の“新世代TIM”を検証する注目CPU詳細レビュー(3/3 ページ)

» 2014年06月30日 15時53分 公開
[石川ひさよし,ITmedia]
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TIMの変更はどの程度の影響になるのか

 TIMを変更した成果をどのように評価するのかについては、ストレステストで用いるベンチマークテスト「OCCT」で負荷をかけ、CPU温度の変化を確認することにした。

 計測において、CPUクーラーユニットはベンチマークテストでも使用している空冷の「グランド鎌クロス2」を用い、ケースファンを1基追加したうえで、ファンの回転数はすべて最大の固定回転数にし、冷却性能を可能な限り一定に保つこととした。さらに、2つのCPUを続けて計測することで室温(計測時:27度)の変動による影響を抑えた。

 ただし、Vcore電圧に関しては、UEFIから同じ値を指定してもブレるため、これを一定条件とすることはしていない。むしろ、今回計測した限りではCore i7-4790Kがわずかながら高い数値であるようなので、発熱に関しては不利といえる。ソフトウェアは、負荷用としてOCCTのCPU OCCTを15分間実行し、温度計測にはCPUIDのHWMonitorを用いPackageの温度を採用した。

TIM効果検証その1

 Core i7-4770KをCore i7-4790Kと同等の倍率指定として検証してみた。Core i7-4790Kは、4コア時が42倍、3コア時が43倍、2コア・1コア時が44倍となる。これに合わせた格好だ。

Core i7-4790Kと同じ倍率設定時のCPU温度
CPU 最大温度
Core i7-4790K 71度
擬似Core i7-4790K 87度

TIM効果検証その2

 この時点で、17℃もの差が出ているが、まだ確証にかける。そこで、どちらも1〜4コアすべて43倍駆動で同様のテストを行ってみた。43倍という低い値にした理由は、Core i7-4770K側がVcore調節なしにオーバークロックできる範囲に制限されたためだ。Core i7-4790Kの定格時の42倍からすれば、わずかにオーバークロックしている状態ともいえる。

4コアすべて4.3GHz駆動時のCPU温度
CPU 最大温度
Core i7-4790K/4.3GHz 80度
Core i7-4770K/4.3GHz 87度

 4.3GHzへのオーバークロックは、Core i7-4790Kの温度も80度まで上昇した。一方、Core i7-4770Kは先と変わらず87度であるが、こちらは限界に達しクロックに調整がかかっている状態と考えられる。

 このように、すべてがTIMの変更が及ぼす結果とは言い切れないにせよ、同じクロックで動作した場合においてはCore i7-4790Kでより温度上昇を抑えているという結果が出た。

 ではこのマージンをオーバークロックに割り当てられるのかに注目したいところだが、今回はサンプルのため、限界を探って壊すわけにもいかない。そこで、4コア全て47倍、4.7GHzという軽めの設定を試みてみた。CPUクーラーユニットはThermaltakeの「Water 3.0 Etreme」を用いた。また、OCCTでは負荷が高過ぎるため、動作確認はCINEBENCH R15を用いている。なお、検証中の室温は24度で維持している。

 4.7GHz駆動時において、HWMonitorのPackage温度は79度まで達した。一部では「空冷5GHz」を達成したと盛り上がっているが、それはさすがにかなりのテクニックと巨大で高性能なクーラーが必要になるだろう。ただし、水冷ユニットを用いたシステムでも4.7GHz程度までであればCINEBENCH R15は何ら心配なく完走した。

水冷ユニット「Water 3.0 Etreme」を用いて室温24度の条件であれば、4.7GHz動作でHWMonitorのPackage温度は79度まで達したものの、CINEBENCH R15は安定して動作した

4GHz CPUとしては素直。インテルの思惑どおりOCで楽しむのがベストか

 ベンチマーク結果が示す通り、Core i7-4790KのパフォーマンスはCore i7-4770Kを動作クロック相当分引き上げたものとなっている。ただし、Intel Z97 Expressチップセット環境において、ゲームパフォーマンスを追求する場合はあまりメリットとなりそうにはない。その意味で既にCore i7-4770Kを定格で動かしているユーザーであれば、無理をして買い換える必要はないだろう。逆にオーバークロックしたいユーザーであれば、Core i7-4770KよりもCPU温度の上昇が低く抑えられた結果から、より高クロックでの動作が見込めるだろう。

 販売開始となったCore i7-4790Kだが、実売価格はおよそ4万円弱。店舗によっては3万7000円前後まで値下げしているようだが、Core i7-4770K発売当初よりやや高めといったところだ。とはいえ、高価であってもコストパフォーマンスが悪いわけではない。パフォーマンスでは十分な見返りがあるし、定格で全コア4GHz以上という大台に乗ったインパクト、そして何より、インテルがこれまでよりも積極的にOCを打ち出してきたことが重要だろう。“楽しめる”CPUという点では価値がある。

 同時に「Core i5-4690K」や、間もなく販売開始になるだろう「Pentium G3258」と、オーバークロックを重視した“アンロック”なCPUのラインアップもそろってきた。これを機に“遊びとしての”オーバークロックに目覚めてみるのもいかもしれない。

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