3D作家がこの先生きのこるためには――達人が語る「4倍処理できる」ワークステーションの魅力達人IKEDA氏に聞く(3/3 ページ)

» 2015年05月01日 19時00分 公開
[広田稔ITmedia]
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趣味の創作時間を作り出すためにPC性能はとても重要

仕事と趣味の創作の両立についてアツく語るIKEDA氏

―― 3DCGの話題がメインになるのかと思いきや、3Dプリンタについて語っていたという状況が面白いです。ぽんさんは元々、立体造形に関わっていたんでしょうか?

ぽん いえ、全然違います。そもそも3DCGも昔はそんなに仕事につながっていませんでした。2013年ごろから3Dプリンタが流行りだして、やっと仕事が増えてきた感じです。

―― 3DもCGに限らず、いろいろな使われ方が出てきているのですね。

IKEDA 人によって意見が分かれると思いますが、3Dってまだ可能性を模索している段階だと思います。当初、3Dが出てきたときは、『トランスフォーマー』みたいにリアル系を目指していたのですが、途中で人間までリアルに作る必要はないのではと気付いたり。あとはアニメで3Dを導入すると制作費もそんなに変わらずに効率化できるとか、3Dプリンタが出てきたことでフィギュア原型師としての需要が高まったとか。

―― いろいろな業界が3Dを取り込んでいますね。

IKEDA 働き方も変化しています。以前は3DCGクリエイターとして活動するには、フリーランスでやるよりも、ゲーム業界に入って雇われたほうが早かったんです。なぜなら覚えることが多すぎて、習得するのに時間がかかるから。

 例えば、3Dクリエイターの中には「インテリアはできるけど、車や人物は作れない」という人も多くいます。そうした状況で発注側がフリーランスに頼むとなると、1つの作品を完成させるためにいろいろな人に頼む必要があり、管理が面倒くさくなる。それなら制作会社にお願いしたほうがいいとなってしまう。

―― 確かに。

IKEDA それが3Dプリンタが出てきたことで、フリーランスの需要が高まった。作業が個人でもできる範囲で、静止画ではなくモノとして出力できるようになったのが大きいです。これまでは数多くのクリエイターの中からひとつ抜き出ようとすると、動画をやる必要があった。自分も「さすがにShadeで動画を作るアホはいないだろう」と思ってやってましたが、本当にいませんでしたから(笑)。やってて「ドMかもしれない」と思うぐらい辛いですし。

ぽん 実際にドMでしょー(笑)

―― (笑)

IKEDA 「なぜ物理演算で髪の毛を揺らしてくれない!」とか、Shadeの機能不足を強引にカバーしていましたからね。そういった血ヘドを吐くような作業は、できれば趣味でやりたい。でも1カ月の半分を趣味にかけようとすると、食べていくための仕事を2週間で片付ける必要がある。

ぽん それはさらに血ヘドが出ますね。

IKEDA 営業日が10日とすると、普通2、3日かかるような作業を1日かけずに終わらせないといけないわけです。だからPCのパフォーマンスはかなり重要なのです。3DCGクリエイターはパソコンを複数台持ってる人が多い。デスクトップPCで製作したCGを別のデスクトップPCでレンダリングして、その最中にノートPCでインタフェースをデザインするとか、平行して作業することで効率化できます。

ぽん うまいい人は手の抜きどころを知ってますよね。

IKEDA 突き詰めていくと終わらないんです。PV系なら、キャラが可愛くて、動きがカッコよくて、ある程度きちんと展開が作ってあれば、すべてが丸く収まる。そこにストーリーが乗ってればほぼ問題ない。変にこだわって「ここの服のシワがね……」となるのではなく、全体の時間を考えて作業しようという。

―― 編集仕事にも通じる話で、聞いてて耳が痛いです。

IKEDA 事前の調査や打ち合わせも重要です。中間に立ってやりとりする人は、きちんとクリエイターの気持ちをくんで交渉してくれるのかどうか。最終的にクオリティを決めるのはどんな人物なのか。条件が合わずに、仕事を断る確率も高かったりします。

 あとは結局、完成したものを見ないとジャッジできない人も多いので、締切よりかなり前に完成したものを送るのが重要です。そこで修正が入って最初に言ってた指示と変わってるなら、「では追加料金で……」と交渉もしやすい。これが締切直前だと立場的にやりづらいですよね。

―― 確かに。

IKEDA 時代が変わっても、面白いことを考えて、それを形にしていきたい。今、ゲームの企画も暖めているので、3D PETSHOPともども、これからもご期待ください。

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