「これじゃ日本では売れないよ」 海外のPC周辺機器にありがちな残念ポイント牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)

» 2016年01月16日 06時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]
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色の選択肢はやたらと「ブラック」

 時間をかけて徐々に受け入れられるようになったトレンドもある。例えば、PC本体やディスプレイなどによくみられる「色の選択肢がブラックしかない」という現象は、長らく日本市場で成功するための障壁となってきた。しかし昨今は、日本のユーザーも抵抗がなくなったのか、すっかり受け入れられている。

 国産のPCやディスプレイの場合、ブラック以外にホワイト(ベージュ含む)やグレー、シルバーを用意しているケースが多く、特にビジネスユースではホワイトおよびグレーが圧倒的だ。これはPCがOA機器の延長としてオフィスに導入されてきた経緯によるもので、導入にあたっての要件定義書に、ホワイトやグレーといった色の指定があるほどだ。

 実際、ホワイトやグレーが中心のオフィスに、価格重視で海外ベンダーのブラックの製品を導入すると、オフィスまわりが急に重々しく感じられることがあり、それゆえブラックは敬遠されてきた。ただ近年は、色の経年劣化が目立ちやすいホワイト系よりもブラックを評価する傾向が強まりつつあり、個人だけでなく法人についても、従来に比べて抵抗なくブラックを導入するようになりつつある。

 実のところ、ホワイトやグレーが好まれる状況は、国内ベンダーにとっては好都合だった。PC本体がホワイトであれば、それと組み合わせるディスプレイもホワイトもしくはそれに近い色に発注がかかるケースは多い。ワールドワイドに展開している海外ベンダーが、日本市場のためだけにわざわざホワイトの筐体を用意することはまずなく、期せずして囲い込みができていたわけである。

 それが価格の安さと調達の容易さ、そして前述の汚れが目立ちにくいという理由で崩れようとしているのが昨今の状況である。これをワールドワイド化と呼んでよいかは難しいところだが、PCが普及し始めてから約20年余、時間をかけて国内ユーザーの側に抵抗がなくなっていった珍しいパターンと言えよう。

色使いが派手

 先ほどの「色はブラック」とやや矛盾するが、コンシューマー向けのカラフルな製品は徹底的にカラフルというのが、海外製品によくある傾向だ。国内メーカーのカラーバリエーションは、大抵が単色、かつ原色ではなく多少落ち着いた色使いだったり、塗装やコーティングでプレミア感を演出したりと、かなり練られていることが多いが、海外のそれは原色そのままだったり、ツートン以上の組み合わせだったりと、脈絡があまり感じられない派手な製品が多い。

 例えばマウスなどは、最近でこそレッドなどの色が受け入れられるようになったが、それはあくまで前述のようなプレミア感を持ったカラーに限った話である。プラスチック感が強調される原色系のカラーバリエーションは、あくまでも店頭で映えさせる目的のためだけに用意され、生産数も桁違いに少なく絞り込むことで、在庫負担にならないようにするのが通例だった。

 しかし海外メーカーの製品は、その原色系のド派手な製品をラインアップの中核に据え、国内では売れ筋であるブラックやシルバーなどを用意しなかったりするので始末に悪い。「もうちょっと落ち着いた色があればいいのに」と感じたことのある人は多いはずだが、ワールドワイドに展開する海外ベンダーは、そうした声はまるで気にも止めないのが実情だ。

 ちなみに海外製品を取り売りしている国内の商社が、こうしたド派手なカラーバリエーションや、到底日本のテイストから懸け離れたキャラクター商品を大きく扱っている例はたまに見かけるが、これは別の製品との抱き合わせで仕入れを余儀なくされたか、あるいは契約上どうしても扱わなくてはいけないか、そのいずれかである。

 売れないことは分かっていながらも大きく扱わなければ日本代理店の立場を失いかねないオトナの事情によるもので、ある意味で被害者と言ってよい。彼らを責めるのは酷というものだ。

LEDの光量が明るすぎる

 海外のパーツサイトを見ると一目瞭然だが、海外、特に欧米は、やたらと光り物を好む。ネオンサインかと思しき部品をPCケースに取り付けてピカピカ光らせる感覚は、日本人の多くのPCユーザーにとって理解不能かもしれない。これも文化の違いだ。

 こうしたネオン系の光り物パーツは国内で販売されるケースは少なく、あまり問題になることはないが、これと近い問題として、海外製品は一般的にLEDの光量が明るすぎて、暗い部屋でまぶしく感じられるという問題がある。国内メーカーの製品では、こうしたLEDの輝度を調整するための機能まで備えている場合もあるが、海外ベンダーの製品は基本的にお構いなしだ。

 これは住宅事情の差もあると考えられるが(離れた位置にある機器のステータスを知るためには、LEDの光量は明るいほうがよい)、光り物に抵抗がない、悪く言えば無頓着という気質も、大きく関係している。光量をコントロールするには基板に回路をプラスする必要があり、そのぶん原価も上がるので、わざわざ取り組もうとする海外ベンダーはまずいない。国内ベンダーにとっては、うまく活用したい差別化要因の1つと言える。

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