ここまでは「言ってもムダな要望」の数々を見てきたが、これとは全く逆に、言うと意外と受け入れられやすい要望もある。こちらも併せて紹介しておこう。
価格は安いほうがいい。これはどんなユーザーにとっても当たり前である。わざわざ「高くして」などというユーザーはどこにもいないわけで、「安くしてほしい、もう少し安かったら買いたい」といった要望はユーザーの総意であるため、わざわざ要望を上げてもムダのように感じられがちだ。
しかし、これが意外とそうでもなかったりする。というのも、中には競合製品がないことを理由にわざと高価な設定にされているケースもあるからだ。こうした場合、値段が高すぎるので安くしてほしいという声が多く、そして現在の売上が芳しくないようであれば、あるタイミングで大幅に値下げされることもあり得る。
PC周辺機器の業界ではオープン価格の製品も多く、店頭売価を変更するスキームは整っているので、意外と外部の意見が反映されやすかったりする。ただし繰り返しになるが、現状の価格で売れているようであれば、可能性は全くない。値付けが高いという裏付けがあり、かつ売れていないという、その2つがそろって初めて値下げが実現する。
もう1つの例が、カラーバリエーションだ。例えば「本体色が現状はブラックしかないが、シルバーだったら買いたい」といった要望である。仮に、当初はブラックとシルバーの2色展開の予定だったのが、様子見でブラックだけ出すことになり、シルバーだけがペンディングになったという事情があれば、ユーザーの声を拾った担当者が「それ見たことか」とばかりに、追加投入してくる可能性はある。それなりの数の要望が必要になるとはいえ、実現に至るハードルは意外と低い。
そもそもカラーバリエーションは、担当者にとっては少ない労力で容易にラインアップを増やせる策の1つである。サプライやアクセサリー系のメーカーの企画担当者は、「1年にX個の新製品を投入する」といった年間目標を立てて行動していることが多く、カラーバリエーションは実績の1つとしてカウントできるので、目立った要望があればこれ幸いとばかりに乗っかってくるわけである。
カラーバリエーションは成型色を変えるだけで済み、パッケージや説明書についても既存品を流用できるなど、新製品をイチから作るのに比べてコストは限りなく安く抑えられる。万一不評でも、特価商材としてたたき売って在庫を処分できたりと、メーカーとしてもつぶしが効きやすい商材である。ユーザーとしては要望を上げてみる価値は高いと言える。
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