早稲田大学戸山キャンパス。ここは文学系の学部が集まるキャンパスであることから、「文キャン」の愛称で知られている。文キャンの生協は、毎年学生向けの推奨PCを決めているが、2016年度の推奨PCに初めてMacBook Air(11インチモデル)を採用した。
「初めからMacBook Airありきで考えていたわけではありません」と切り出したのは文キャン生協でPCの販売を担当する、吉岡正也氏だ。
「実は2015年の生協推奨PCがWindows機で、これで失敗をしてしまいました。生協で販売するPCは、学生さんたちに4年間使ってもらうものになりますので、4年間の保証や保険などのサービスを含めた額となります。その価格が約20万円だったのですが、それくらいお金を出してでも買ってもらえるような売り込み方ができなかったのです。そこで、あらためて文キャンの学生さんに必要とされるPCはどのようなものかを、学生さんたちと一緒に考えました。価格は10万円程度、かっこいい、バッテリー持ちがいい、などの条件で学生さんたちからMacBook Airの支持が高く、これでいこうということになりました」(吉岡氏)
推奨PCをMacBook Airに変えてからの売れ行きはどうだろうか。生協店長の遠藤朋子氏によると「2015年度の推奨PC販売台数が223台で、学生のシェア率が10%台だったのに対して、2016年度は今のところの販売台数が約700台。新入生の42%に買っていただきました」と、昨年比3倍の売れ行きに驚いていた。
売れ行きからも学生からの支持の高さが十分にうかがえるが、学生はMacBook Airを実際に使ってみてどう思っているのだろう。
「普段は使ってなかったです。高校の情報の授業で使うくらいで慣れていませんでした。なので、大学でPCを買うことにも抵抗はありましたが、iPhoneを使っていたのでMacBook Airを買うのに比較的抵抗はありませんでした。Macならいいかなって」(文化構想学部1年 楠真奈実さん)
「父がMacのヘビーユーザーなので、家族全員Macを使っています。自分自身は今までそんなに使っていませんでしたが、お姉ちゃんがMacBookを使っているのを見て、薄くてカバンにすっと入っていいなーと思っていました」(文化構想学部1年 岡村祐香さん)
新入生の二人は、PCを使う経験がそんなあるわけではないようだ。二人とも多かれ少なかれApple製品が身近にある環境ではあったようだが、彼女らの購入を後押ししたのはMacBook Airを使いこなす3年生の先輩たちだった。
文学部3年の田中諒子さんが持つMacBook Airには、取材陣一同が目を引かれた。PCを覆うピンクのケースと、キーボード上に貼るシールで完璧にデコレーションされている。
「市販のものを使っているだけなんですけどね」と謙遜する田中さんだが、1年生の二人によると教材説明会での田中さんのプレゼンが心に大きく響いたという。学生目線から、普段PCをどのように使っているかなどを説明した最後に、すっとカバンからこのMacBook Airを取り出す様がかっこよくて、これを買うことに決めたとのことだ。その説明会にはアップルの社員も同席していたそうだが、アップル社員もその使いこなしには太鼓判を押していたそうだ。
MacBook Airを使いこなす田中さんだが、田中さんは生協が推奨する前から購入し使用していたという。その理由を聞くと、
「正直に言って、おしゃれだからです。単純な理由なんですが(笑)」
とのことだった。1年生の二人もこのデコレーションには憧れているようで、「みんなMacだから先輩みたいに個性を出したい。天板にシールとか貼りたいけど、自分で貼るとなるとかわいくできるか不安」「そうそうシール。でもどうしても控えめになっちゃうし、まだ買ったばかりだし」と、いつかはデコレーションをしてみたいという気持ちをのぞかせていた。
新入生たちにMacBook Airを薦めた立役者は田中さんだけではない。文学部3年の柏木佐和子さんもその一人だ。柏木さんは生協推奨PCのパンフレットの作成に助力した。MacBook Airのスペックや、生協の4年間保証などのアピールポイントがしっかり書かれたパンフレットがあったからこそ、親を説得できたと楠さんや岡村さんは語った。
「これを使う時は海外風のファッションにしています。やっぱり外国の人たちがカフェとかでMacを使っている姿がかっこいいと思うので」と熱弁する田中さん。
楠さんと岡村さんは、「めっちゃ持ち歩きます。でも授業に使うこと自体はないんです。授業ではPC教室にPCがあるので。でも、無駄に持って行っちゃう。カフェとか入っても取りあえずテーブルに置く(笑) 高校までは紙での宿題だったけど、大学の課題はPCでやるものが多いので、MacBook Airを持ち歩くことで大学生らしさをアピールしてます」と、新入生らしいみずみずしい使い方だ。
「私は逆に、ださい格好をしているときは持ち歩かないようにしています。寝間着みたいな格好だとMacBook Airに不釣り合いだと思うので」と、柏木さんもMacBook Airを持ち歩くときの、ある種のドレスコードを自分の中に持っているようだった。
3年生の田中さんと柏木さんは、Macのアプリとしては講義やゼミに使うMicrosoft Officeの他、iCloud、Dropbox、Evernote、Photoshopなどを使いこなすが、1年生の二人はまだ「何が分からないのか分からない」状況だという。そういった新入生たちのために、生協は講習会を開いてサポートしている。また、日々MacBook Airを触っていることで「こんな機能があったんだ」(タッチパッドのマルチタッチジェスチャーなど)と、だんだんMacの機能について理解を深めているようだ。彼女らが学部を卒業する時、どれほどのマカーになっているか楽しみだ。
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