Windows 10の大型アップデート「Fall Creators Update(1709)」は10月17日に一般公開されたが、その前から「Redstone 4(RS4)」と呼ばれる次期アップデートの開発は平行して進んでいる。RS4は2018年3月ごろにリリースされる予定だ。
本連載でも度々紹介してきた通り、Microsoftは2014年10月から、デベロッパーだけでなく一般ユーザーもWindows OSの開発に参加できる「Windows Insider Program」を提供している。その参加者に配信される開発段階のプレビュー版「Windows 10 Insider Preview」をインストールすれば、(不具合も多数あるが)一足先にWindows 10公式アップデート前の新機能を試せるというわけだ。
Fall Creators Updateが完成するまでは、Insider Programの設定から「Skip Ahead」を選択することで、RS4の最新バージョン(ビルド)を利用できる仕組みだったが、完成後には通常の「Fast Ring」設定でも利用可能になっている。
ただ以前のレポートでも触れたように、RS4開発スタート直後のInsider Previewはバグの修正や内部調整が更新内容の中心で、RS3ことFall Creators Updateでの搭載が見送られた「タイムライン」や「クラウドクリップボード」のような目玉となる新機能を試せる段階には至っていない。
しかし11月8日(米国時間)にFast RingまたはSkip Aheadユーザー向けに配布が開始されたInsider Previewの「Build 17035」では、RS4としては初めて興味深い新機能が追加されており、Insider Program参加者の間で話題になっている。
なお、AMD製プロセッサを搭載したPCでは、Insider Previewの導入で問題が発生することが確認されており、現時点でMicrosoftは同ビルドの当該マシンへの導入をブロックしているようだ。
筆者はWindowsからAndroid、iOS、macOSまで、さまざまなプラットフォームのデバイスを触っているが、この中でも最近便利だと思っている機能がiOSとmacOSで利用可能な「AirDrop」だ。
AirDropでは、Webページのリンクからファイルまで、さまざまなデータをApple系デバイスの間で簡単に共有できる。主な用途としては、開いている地図情報やWebページをそのまま近くにいる相手に送って開いてもらったり、撮影した写真や受け取ったファイルをワイヤレスで融通し合ったりといった使い方だ。また、iPhoneで撮影した写真をAirDropで素早くMacに取り込んで加工し、SNSへの投稿や原稿の送信に活用して重宝している。
そんなわけで、「この機能を使ってデータをAndroidやWindowsにも送信できれば便利なのに……」と思ったのは一度や二度ではないのだが、ついにWindows 10にも同じような機能が加わるようだ。Build 17035で追加された新機能「Near Share(近くの共有)」は、このAirDropのMicrosoft版だと考えていいだろう。
使い方は簡単だ。設定アプリの「システム」→「通知とアクション」の項目にある「クイックアクションの追加または削除」を選択し、「近くの共有」のスイッチをオンにする。すると、クイックアクション(タッチパネルでは画面右端から左にスワイプで出現)の項目に「近くの共有」が現れるので、これをオンにしておく。これでNear Share機能を使う準備は完了だ。
「近くの共有」を利用するには、Windows 10の各アプリに用意された「共有」機能を利用すればいい。従来はインストール済みのアプリまたは特定の相手のみが対象だった共有先の項目に、新たに「近くの共有」が追加されている。
先ほどのクイックアクションの「近くの共有」項目をオンにしていた場合、近隣の相手の共有メニューの中に「共有可能なデバイス」として自身のデバイス名が表示される。このデバイス名を選択すれば、データを簡単に送れるというわけだ。
ただ残念なのは、現在はWindows PCのみが対象という点だ。筆者のAirDropでの利用ケースを考える限り、この共有機能を利用するのは主にiPhoneなどのモバイルデバイス同士、あるいはiPhoneとMac間が中心となっている。Mac同士で融通し合うケースは珍しいと思われるため、同様に現時点での仕様ではWindows同士で「近くの共有」機能を利用するケースもまた限られるだろう。
今後はMicrooftが準備を進めている「Project Rome」(さまざまなデバイスとアプリをつないでシームレスなユーザー体験をもたらすという)のような形で、プラットフォームをまたいでAndroidやiOSからでも同機能が利用可能になってこそ、価値が出てくるはずだ。
なお、同様の仕組みはGoogleも検討しているようで、「Files Go」の名称でβテストが進んでいる様子を米The Vergeが報じている。個人的要望としては、各社がバラバラに同種の機能を提供するのではなく、仕組みを標準化して互換性を持たせてくれる方がありがたい。是非ユーザー視点で使いやすい機能を業界として目指してほしいところだ。
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