ASUSはなぜ日本でゲーミングスマホを投入するのか? 「ROG Phone」の狙いを聞くSIMロックフリースマホメーカーに聞く(3/3 ページ)

» 2018年12月04日 00時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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ZenFoneの便利機能は全て入れている

―― ZenFoneブランドではないですが、スマートフォン事業で培ったノウハウも生きているという理解でよろしいでしょうか。

テン氏 ロゴも、ASUSとは入れていません。

リー氏 ROGは弊社のサブブランドで、ROG PhoneもZenFoneの中の一つではなく、異なるラインという位置付けです。

阿部氏 ただし、ユーザーが便利な機能は、ZenFone側のものを全て入れています。ベースとしてZenFone 5があり、そこにROGを足した形になるので、オミットした機能は特にありません。ZenFoneは「ワンランク上のぜいたく」をうたっていますが、ROG Phoneはそのぜいたくに、さらにゲーマー向けのぜいたくが加わったものと言えます。

―― 発表会でも、ゲームの話からいきなり自撮りの話になったところが面白かったです(笑)。

リー氏 まさにそこです。平たく言えば、ZenFone 5と同様、カメラはデュアルカメラですし、指紋センサーも搭載しています。3大キャリアのVoLTEに対応するといったローカライズもしています。一般のユーザーでも、ハイエンドスマホの一つとしてご利用いただけるのではないでしょうか。

阿部氏 カメラは全く同じというわけではありませんが、AIカメラも搭載されています。エアトリガーも、縦持ちしたときは握って特定の設定やアプリを呼び出せます。メーカーによっては機能が限定されていますが、ROG Phoneではいろいろな設定を選ぶことができます。ですから、この端末は、必ずしもゲームのためだけのものというわけではありません。

ASUS 端末を握ることで、特定の機能を呼び出せる「エアトリガー」

分離プランでSIMフリー市場は上向く?

―― ROG PhoneもSIMフリーモデルとして販売されますが、現状を見ると、この市場は必ずしも拡大しているとはいえません。MM総研のデータを見ると、前年同期比で規模が縮小したという話もあります。ZenFoneも含めての話になりますが、ASUSとして、ここはどう見ていますか。

リー氏 市場規模縮小の話については聞いていますが、メーカーの基本に戻り、いい製品を作って分かりやすく伝えていくことが大切だと考えています。ASUSは日本のSIMフリー黎明(れいめい)期から端末を投入してきました。メーカーとして、世界的な端末を投入することは、今後もやっていきたいと考えています。

阿部氏 これも私見になりますが、今政府が4割料金を下げろと言っているのは、分離プランのことです。今(大手キャリアが)売っているのは、主にハイエンドで、それを(ユーザーが)買えたのは、各社の施策があって費用を抑えられたからです。分離プランが主流になってくると、それが難しくなります。結果として、端末とSIMをそれぞれ選ぶという流れが出てくれば、SIMフリー市場は上向くのではと思います。

テン氏 確かにキャリアと組むのもいいビジネス戦略ですが、弊社は柔軟性が高い。われわれの開発力で、お客さまが求めているものを実現したいと考えています。お客さまが必要なものを作っていけば、ビジネスチャンスは必ずあります。もしかしたら、これは他社の戦略とは違うのかもしれませんが、開発力をベースに、必要なデバイスを実現していければと考えています。

阿部氏 弊社には、PCやマザーボードなど、スマホとは異なるジャンルのノウハウがあります。異なるベクトルの製品で蓄積したノウハウは、ROG Phoneに限らず、さまざまな製品に入れていけると考えています。

取材を終えて:単なるハイエンド端末よりもチャンスは大きそう

 ゲームに特化した端末であるだけに、ROG Phoneは売りが非常に明確。エアトリガーや、さまざまな周辺機器を接続可能な端子を備えているなど、ハードウェアにも独自性があって、単にスペックが高いだけのハイエンドスマートフォンとは一線を画している。ASUSらしい“個性”が存分に発揮された端末といえる。

 SIMフリースマホ市場では、高額な端末は敬遠される傾向にある。分離プランが本格化すれば、今後は変ってくる可能性はあるが、現状では、大手キャリアと横並びで比較した際に、価格面で太刀打ちできない。3万円前後のミドルレンジモデルがボリュームゾーンになっているのも、そのためだ。

 対するROG Phoneは、そうした大手キャリアの端末とは異なる土俵で戦っている。日本ではゲーミングスマホの規模感が未知数であるため、確実なことはいえないが、刺さる人には刺さる端末なだけに、幕の内弁当的に幅広い層を狙ったハイエンド端末よりも、ヒットするチャンスは大きそうだ。

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