2018年12月に一般向け提供の開始された永続ライセンス版Office(Office Perpetual)こと「Office 2019」だが、同Officeの代わりに「Office 365」を購入するよう大プッシュするMicrosoftのマーケティング施策が話題になった。
Office 2019については発売前から10%の値上げをうたいつつ、既存のOffice 2016は2020年10月の時点でクラウド関連の機能の多くが利用不可になるなど、「永続ライセンス」を掲げつつも、いかにも「こっちは買わないでください」といわんばかりのアピールを続けている。
公式のMicrosoft 365 Blogでは「The Twins Challenge: Office 365 crushes Office 2019」の名称でエントリーを公開して、Office 2019に対するOffice 365の優位性をうたっている。
サンプルとしてPowerPoint編のリンクを張っておくが、双子が登場してそれぞれOffice 2019とOffice 365で作業を行い、最終的にOffice 365の方ができる作業も多くメリットがあることを紹介するというタイトルそのままの内容だ。
資料作成にあたって参照可能なデータが存在していたり、Inkやレイアウト作業でAI支援を得られたり、あるいはOffice 365でないとそもそも利用できない機能があったりと、Office 365の優位性をアピールするためだけの“出来レース”ではあるものの、Microsoft自身が「Office 2019よりもOffice 365を売りたい」ということを端的に示すサンプルとして価値がある。
日本のように積極的にOffice Perpetualのライセンスを販売し、実際に売れている市場もあるわけだが、これについてMicrosoft側では「リージョンによって適した戦略を現地のメンバーと進めている」ということで、実質的に強引なOffice 365への誘導策を採っていない。
一方で、世界的にみればMicrosoftとしてはOfficeをサブスクリプション型のモデルへと誘導したいわけで、それが近いうちに発表されるといわれる「Microsoft 365 for Consumer」につながっていく。
興味深いのは、こうした表向きの宣伝だけでなく、Microsoftは着実にOffice 365の利用を既成事実化すべく細かな変更を加えている。その最たるものが「Officeアプリでのデフォルトのファイル保存場所がOneDrive」だ。MacとLinuxを除くプラットフォームのSkypeではチャットの際などに引用するファイルのデフォルトの参照場所がOneDriveに変更されており、実質的にOneDriveを介してコミュニケーションを行うことになる。
もっとも、AndroidやiOSなどではローカルにファイルが保存されていないケースの方が多いと思われるため、モバイルを絡めた作業という意味では正しい方向性といえる。またZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏によれば、Office 365の他のアプリ群でもデフォルトの参照先がOneDriveまたはSharePointとなっており、基本的に作業ファイルはローカルではなくクラウド側に置くよう誘導している。
ただし、同氏によれば企業ユースなど管理者が設定したデフォルトの保存先については変更されないとのことで、あくまで「ドキュメント」がデフォルトの参照先だったものがクラウド優先になったと思えばいいだろう。
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