魅力を再構築した新モデル「Apple Watch Series 5」の進化と変化林信行がレビュー(3/3 ページ)

» 2019年09月18日 19時00分 公開
[林信行ITmedia]
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これまで敬遠していたユーザーを振り向かせる5年目のApple Watch

 3つの新機能と2つのエディション、そしてApple Watch Studioという魅力を備えて登場したApple Watch Series 5だが、果たして2018年モデルのSeries 4を持っている人も含めて全員が「買い」なのかというと、筆者はそうだとは思わない。

 もちろん、人によっては「常時表示」という仕様変更に大きな価値を感じるだろうし、その人はSeries 4ユーザーでも買い替えの価値はあるかもしれない。

 だが、それ以外の既存Apple Watchユーザーは、今、慌てて買い換えをしないでも、来年以降のモデルへの乗り換えでもいいのではないかと筆者は思うし、あまりアグレッシブに新機能を追加しない辺りも含めて、Appleもそういう考えなのではないかと感じた。

 5年前、Apple Watchが登場したばかりのとき、よく議論された。腕時計というのは一生物であったり、次の世代に譲り渡すような寿命の長い製品なのに、Apple Watchというデジタル製品が、そうした愛着を育む長寿命の製品になりえるのかと。

 iPhoneなどでは、新モデルが出るたびに旧製品から乗り換える熱烈なユーザーも少なくない。

 だが、Apple Watchは、確かにこの5年間で新たにSuicaの支払いも可能なFeliCa/NFCチップを備え、iPhoneが手元になくても単独で携帯電話網につながって通信する機能を備え、転倒センサーや大画面化/薄型化を果たすなど、毎年着実に進化を重ねてきた。今、最新のモデルを使っている人が旧モデルを使うと、できることの少なさに驚くことがあるかもしれない。

Apple Watch Series 5 2014年に発表された初代Apple Watch

 だが、その多くは1〜2年くらいはその機能がなくても我慢できる、それほど深刻ではなく、急を要さない機能追加だ。

 Apple Watchの主な機能は時刻を教えてくれることであり、メッセージやメール、不測の事態などの通知を手首へのノックで教えてくれることであったり、日常生活の中で常に運動を促し健康を意識させ心拍まで測ってくれることだったり、バンドをTPOに合わせて付け替えて腕元のファッションとして楽しむことだったりと多彩だ。5年前の第1世代のApple Watchでも、今なお十分に価値を果たしている(バッテリーのへたり具合があるかもしれないが)。

 Apple Watchなしの生活とありの生活だと、例えば通知が来る度にiPhoneの画面を忙しくのぞき込む必要がなかったり、会議中にマナーモードにし忘れたiPhoneの着信音が鳴ってもApple Watchの画面を手で覆って着信拒否をしたり、iPhoneが見当たらなくてもやみくもに探さずApple Watchから音を鳴らして発見したり、ジョギングなどにちょっと出るときにiPhoneを置きっぱなしにしても、大事な電話やメッセージを逃さず、しかも、Apple Payを使ってコンビニでの買い物もできたりと、かなり生活がスマートになり、その魅力に慣れると、無しの生活には少し不自由を感じるようになる。

 日々の生活の中での運動量を記録したり、毎日一定以上の運動をするように元気付けてくれたり、心拍数を定期的に記録して異常があると教えてくれる機能であったり、騒音が大き過ぎるところにいると「このままこの騒音を聞き続けると耳が悪くなる」と教えてくれたり、女性の周期の記録をつけて精神と身体のバランスを客観視して生活や仕事の最適化を行うといった機能に慣れると、もう手放せなくなる人も多いだろう。

 さらに日本の厚生労働省が規制を緩和し、毎日、簡易な心電図の記録を取ったりして、医療機関とも連携してより徹底した健康管理もできるようになれば、いよいよこれを自分の身体の一部と感じる人も少なくないはずだ。

 ただ、これら一部の機能が日本でまだ使えない状態にあっても、Apple Watchは既に日本でも人気を博し、多くの人々が毎日身につけて愛用している。

 5年目に登場したApple Watch Series 5は、これまで多くの人がApple Watch以外も含めたスマートウォッチを敬遠する理由に挙げていた、不使用時に画面が消えるという問題が解消されたことを受け、改めてこの製品に目を向けるきっかけになるのではないかと思っている。

Apple Watch Series 5

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