一方、悪い意味での驚きもある。それはWi-Fiの設定を1つ行うにしても、PCと有線接続してユーティリティーで行わなくてはいけないことだ。十数年前の電子ブックリーダーならいざ知らず、今になってこいった製品にお目にかかるのは驚きだ。Wi-Fiごと非搭載ならまだしも、そうではないだけに首をひねりたくなる。
いったんWi-Fiを設定してしまえば、PCとのデータ転送はUSBケーブルをつなぐ必要はなくなるが、それでも必ずユーティリティーを経由しなくてはならない。定期的にデータを同期できるなど一定の機能は備わっているものの、以前紹介した「BOOX」が、Google Playストアを利用でき、オンラインストレージアプリ経由でクラウドと直接データをやりとりできたのとは対照的だ。
そうした点からは、本製品はどちらかと言うと、シャープの電子ノート「WG-PN1」に性格的に近い。この製品との比較なら、PDFが扱える分、本製品の方が多機能だ。汎用(はんよう)的なタブレットではなく、電子ノートをベースに、プラスαの機能を付け加えた製品であることを把握しておかないと、購入してから後悔しかねない。
さて、そんな本製品に今回加わったのが、ScanSnapと直接連携しての書類取り込み機能だ。これがあればPCレスで、ScanSnapからダイレクトに書類を取り込んで持ち歩ける。例えば事前配布された紙資料を取り込んでおき、会議やミーティングにはペーパーレスで出席し、メモやノートは本製品上で取るなどの使い方が考えられる。
本機能の利用にあたっては、あらかじめPCの専用ユーティリティーを使って、本製品にWi-Fiを設定しておく。それ以降、PCは不要で本製品のメニューから「ScanSnapから取り込む」を選択すると、ネットワーク内にあるScanSnapが検出される。ScanSnapの接続対象がPCではなく、本製品になるイメージだ。
後はScanSnapに原稿をセットし、本製品の画面の下部にある「スキャン」ボタンをタップすることでスキャンが開始され、書類データが画面に表示される。スキャンデータは、本体メモリ内の「Received」というフォルダに格納される。前述のScanSnapの検出がスムーズに行けばという前提だが、手順は至ってスムーズで、迷う余地は全くない。よくできている印象だ。
読み取りオプションは「片面/両面の指定」「白紙削除」「裏写り軽減」と少なく、傾き補正や回転はもちろん、解像度やカラーモードの指定もできない。本製品側だけでなく、ScanSnap側でもこれらを設定することはできない。またOCR処理も施されておらず、画像PDFとして転送される。
つまり手軽さを最優先させた仕様なのだが、個人的にはこれで正しいと思う。本製品はストレージではなくビューアであり、データの永続的な保管場所ではないからだ。あくまでも本製品上で参照、書き込みを行うためのPDFの生成が目的であり、それを良しとするのであれば便利に活用できるだろう。
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