Appleが最新の13インチMacBookシリーズに描くグラデーション林信行が最新MacBookシリーズを比較検証(2/3 ページ)

» 2020年05月13日 06時00分 公開
[林信行ITmedia]

ビデオの再生や3D CGの制作で大きな差がつく

左上がMacBook下位モデル、右上が上位モデル、下がMacBook Airとなる

 MacBook Airと2つのMacBook Proで、いくつかの動作を比較した。最初に一瞬だけ出てくるのは大きなZIPファイルの解凍の様子で、続いてAdobe Premiere Proの起動時間だ。次にcogの石川将也さんが作成した編集映像を、Premiere上で全画面再生した時の再生パフォーマンスの比較、そして最後は編集ファイル上の映像を合成し書き出すレンダリングおよび書き出しのパフォーマンスの差となる。

 この映像は筆者が撮影/編集したが、MacBook Airだけカメラの露出設定を間違えてしまった。Airの画面だけ白く飛び気味なのはそのためだ。またムービー書き出しの検証では、Airだけ実行方法を誤ってしまった。Airの方がMacBook Pro下位モデルよりもわずかに早く処理が終わったのは、この誤操作のせいかもしれない。どれくらいの差が出るのか、省略しないリアルタイム映像を見て肌感覚で知ってもらえればと思う。

 性能の観点から、3モデルの差を比較してみた。

 結論を先に言ってしまうと、Airでもビデオ編集や3Dモデルの扱いまでを含め、必要なことは何でもできる。ただし、例えば凝ったビデオ編集中に動きを確認しようとした時などには、再生がカクカクとしてしまうといった性能差が出る。時間軸の目盛りの左に丸い印があるが、Premiere Proでは、再生時にコマ落ち(再生せずに飛ばしたフレームがある)があると、この印が黄色くなる。MacBook AirとMacBook Pro下位モデルは印が黄色になっているが、上位モデルは最後まで印が緑色でコマ落ちが起きていないことが確認できる。

 このため編集中に試行錯誤をしようとしても、ちょっとした待ち時間が増えてイライラが重なる。より多くの試行錯誤とブラッシュアップを重ねて良い作品を作ろうと思ったら、やはりProが欲しい。それも4ポートを備えた上位モデルを選べば、例えば編集後の映像をムービーファイルとして書き出す操作でも倍近いパフォーマンス差が出た(ムービー書き出しではレンダリング、つまり複数映像の合成などの処理も行われる)。

 ここで比較に使ったモデルを紹介しよう。本当はMacBook AirとMacBook Proの下位モデルは同じCPUでそろえた場合に、どの程度の性能差が出るかを検証したかったが(価格が極めて近いため)、それはかなわず、以下の3つの構成だ(価格は税別)。

  • 13インチMacBook Air:第10世代Core i3(2コア、1.1GHz〜3.2GHz)、8GBメモリ、256GB SSD、Intel Iris Plus Graphics、直販価格10万4800円(教育機関向けは9万3800円)
  • 13インチMacBook Pro下位モデル:第8世代Core i5(4コア、1.4GHz〜3.9GHz)、8GBメモリ、256GB SSD、Intel Iris Plus Graphics 645、直販価格13万4800円(教育機関向けは12万3800円)
  • 13インチMacBook Pro上位モデル:第10世代Core i5(4コア、2.0GHz〜3.8GHz)、16GBメモリ、512GB SSD、Intel Iris Plus Graphics、直販価格18万8800円(教育機関向けはなし)

 世代の差はあるが、CPUのグレードが低いことを考えると、MacBook Airはかなり健闘している。

 先のムービーでは、ムービーファイルのレンダリングにかかる時間では、筆者が操作を誤ったことによって生じた差ではあるがProの下位モデルに負けないパフォーマンスを発揮している。

 ちなみに、この実際に作業をしている様子をリアルタイムの映像として紹介し性能比較をする方法は、筆者が20年前から「ビジュアルベンチ」と名付けて普及を呼びかけていたものだ。

 おそらく、この比較ムービーを最後までじっと真剣に画面をにらみ続けて終わりまで再生する人はおらず、ほとんどの人が再生をスキップしてしまったり、再生しながら飲み物を取りに台所に行ったりしてしまうだろう。

 実際に仕事でムービー編集をする際にも、ビデオ編集者はずっとPCの前に座っているわけではなく、ビデオの書き出し時間中に息抜きの休憩をしているものだ。一度、トイレに行ったり、キッチンに飲み物を取りに行ったりしている間の時間は実はストレスにはなっていない。ストレスを感じるのは、PCに戻ってきた時に、まだ処理が完了していない時だ。

 人によってせっかちさの度合いは異なる。このムービーで途中を倍速表示などにしなかったのは、そうした自分のせっかちさとの相性を見てもらおうという意図もある。

 もう1つのテストを行った。GPUなども活用しまくる3Dソフト「Cinema 4D」を開発するMaxon Computerが提供するCINEBENCHだ。こちらのテストでは3モデルの差が、さらに明確に出た。

 MacBook Pro下位モデルの1407ポイントというスコアは、MacBook Airがたたき出した659ポイントの2.13倍だ。CPUのクロック速度はそれほど変わらないものの、Airが2コアなのに対してProは4コアであることや、両モデルのGPUの違い(AirはただのIntel Iris Plus Graphicsに対してProはIntel Iris Plus Graphics 645)の影響があるのかもしれない。

 いずれにしても3Dグラフィックであったり、VRや凝ったコンピューターグラフィックスを使ったARにも挑戦したりしたい人はMacBook Proが必須だ。できれば上位モデルや16インチモデルを選ぶと、快適に作業ができそうだ。

Maxon ComputerのCINEBENCHを実行している様子。Premiere Proの編集では大きな差が出なかったMacBook AirとMacBook Proの下位モデルだが、ここでは大きな差が出た

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