石川将也:映像作家/グラフィックデザイナー/視覚表現研究者
クリエイティブグループ「ユーフラテス」を経て、2020年に独立。デザインスタジオ「cog」を開始。
twitter:@kamone
冒頭、まずは動画を、ぜひサウンドオンで楽しんでほしい。
一新されたMacBookシリーズに、Magic Keyboardも使えるようになったiPad Proを加えたラインアップについて、TV番組やファッションブランドの映像制作も多く手掛けるcogの石川将也さんに可愛らしいストップモーションアニメーションにしてもらった。映像を見てもらえれば分かるが、パッケージの付属品などは、これまでのMacBook Proから変更がない。
Appleは 5月4日に突如、「13インチMacBook Pro」の新型2モデルを発表した。
13インチMacBook Proと、基本となる製品名も一緒なら見た目もほぼ同じだが、Thunderbolt 3のポートを2基備えて価格と性能のバランスを追求した下位モデルと、Thunderbolt 3を4基備えて性能を重視した上位モデルという、かなり性格のはっきりと異なる2モデルがあるのだ。
これらを、ただのスペックアップの正常進化と見ることもできる。だが、一歩引いてノート型Mac全体を見渡すと面白い発見がある。
気がつけばノート型Macは、今回発表の2モデルに、3月末発表の新型MacBook Air、そして2019年秋発表の16インチMacBook Proを加えた合計4モデルとなる(薄型軽量でUSBポートが1基の12インチMacBookは販売終了となっている)。
このうち16インチのMacBook Proは、持ち運びやすさを多少犠牲にしても、とにかく性能で妥協をしたくない人、オフィスの外でも大画面が利用できることを重視したモデルで、かなり使う人がはっきりと決まったモデルだ。
となると、それ以外のほとんどの人が選ぶのは新型MacBook Airか、今回の13インチMacBook Proの2モデルを加えた3モデルから製品を選ぶことになるのだが、実はこの3モデルは13.3型という画面サイズやMagic Keyboardの採用、プロセッサにIntel Core i7を選べたり、重量さもわずか100gの差に収まっていたりと、かなり仕様が近い。
つまり、このスペックにあえて寄せておきながら、その中にハッキリとした性格の差を出しグラデーションを描いた、というのが2020年のMacBookメインストリーム向け3モデルの面白みと言える。
ではこの3モデル、どれだけ選びやすく進化しているのか?
新しいMacBookを選ぶ時、最初に直面するのはAirにするか、Proにするかの問いだ。
特に映像編集などを行うつもりがない人には、価格帯的にも近いAirとProの下位モデルのどちらにするかは悩ましい問題だ。
実際に使い比べて、真っ先に感じたのは音の違いだった。例えば冒頭のムービーだと、栗原正己さんの楽しく心躍る音楽が印象的だ。この動画、最初にAirで再生したときには気がつかなかったが、その後、Proで再生した時にベースライン(伴奏の低い音)のきれいさに気がついた。
やはり、良いスピーカー(Appleのページでは、ハイダイナミックレンジステレオスピーカーと記載)を搭載しているだけあって、低音がしっかりと響いてくる。Macで映画などの音響もしっかり楽しみたい、という人は少し背伸びをしてMacBook Proを選ぶ価値がある。
ちなみに、コロナ禍でビデオ会議やネット配信をする人が増えていると思い、両者のマイク性能に違いが出るかも比較したが、音の入力に関してはほとんど差が出なかった。違いがあるのはスピーカーの音質だけのようだ。
続いては、液晶ディスプレイの画質だ。
実はAirとProでは、搭載しているディスプレイのサイズが13.3型である点と、IPS方式の液晶である点や1680×1050ピクセルの画面解像度、環境光に合わせて色合いが変化するTrueTone機能を備えている点は共通なのだが、ディスプレイの輝度や表現できる色で性能差がついている。
もっとも、この違いは文章を入力したり、ソーシャルメディアを見たりしている分には、それほど気にならない。違いをはっきり実感するのは、微妙な光のグラデーションを捉えたデジタルカメラで撮影した写真や映像などを見る時だろう。ちゃんとしたカメラで写真や映像を撮り、微妙な光のニュアンスまでしっかりと確認し調整したいプロ気質の人は、やはり(Airではなく)広色域(P3)をサポートしたProが選択肢となる。
一方でAirの魅力は、手前側が薄くなっているので既に荷物がいっぱいのカバンにもスーッと挿入しやすいことや、そしてゴールドを加えた3色のカラーバリエーションが選べるファッション性であったり、「細かなスペックや性能にはそこまでこだわらない」というデジタルとの軽やかな関係性を示すステートメントにもなっていたりすることが魅力だろう。
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