Appleによる気候変動に対抗する10年計画。特に重視しているのは、次の5つのポイントだ:
これら5つの項目のそれぞれには、非常に多様な視点が盛り込まれている。
例えば1の「低炭素な製品設計」には、この11年間でApple製品の使用時に使われる平均エネルギーが73%も低くなっている、という話題も含まれれば、製品のデザイン上の工夫やリサイクルのイノベーションを通して、2019年度の製品ではカーボンフットプリント(製造による二酸化炭素の排出量)を430万メトリックトンも減ったという話題も含まれる。
2019年のiPhone、iPad、MacそしてApple Watchは、リサイクル部品を多用しており、特にiPhoneのTaptic Engineでは使われているレアアース(希土類)を100%リサイクルで賄った。これはAppleにとっても、他の全てのスマートフォンにおいても初めての試みだという。
またAppleはテキサス州オースチン市にMaterial Recovery Labという素材再生研究所を開設し、カーネギーメロン大学との産学連携で電子製品のリサイクル技術の開発に取り組んでいるともいう。
だが、何といっても注目の的は、Apple製の新型ロボット「Dave」かもしれない。これはリサイクル回収したiPhoneを分解するロボットで、2016年に登場したLiam、2018年に登場したDaisyに続く第3弾にあたる。
新たな特徴は、最新のiPhoneに搭載されているTaptic Engineを分解して希土類磁石とタングステンを取り出せることだ。
ちなみに、iPhoneの分解機能を持つDaisyはAppleに2台ある。年間120万台のiPhoneを分解した実績を持つが、これは回収できたiPhoneの量がそれに留まっているからで、Appleでは同社の「Trade In プログラム」を利用した製品リサイクルへの参加を呼びかけている。
2の「エネルギー効率向上に向けた投資」では、US-China Green Fundという環境系ファンドがAppleの元、Appleサプライヤーによるエネルギー効率向上の取り組みに1億ドルの投資を行う。
こうした投資なども使って、既に70社が100%再生エネルギーに向けた取り組みを発表していることは既に述べたが、実はAppleはそれに加えて100%再生エネルギーまでは宣言できないまでも、エネルギー効率を向上させたいサプライヤー向けにSupplier Energy Efficiency Programを展開中だ。このプログラムに参加している企業は2019年段階で92社にまでのぼる(ここには先の70社の一部も含まれる)。これらの施設による二酸化炭素排出量削減は、77.9万メトリックトンにおよぶ。
またAppleは2019年、自社の古い施設640万平方フィート(60ヘクタール/18万坪)をエネルギー効率の良い物にアップグレード。これにより、必要エネルギー量を5分の1に抑え、2700万ドルを削減したという。
3の「再生エネルギー」については、記事の冒頭で触れたサプライチェーン70社による100%再生エネルギーへの転換で、2030年までに8GWを作り出す目標がその1つだ。2019年までに既に2.7GWが生み出されている。
これとは別に、Appleが自社で作り出している再生エネルギーもある。こちらは新たにアリゾナ州、オレゴン州、イリノイ州に発電施設が完成したところで、Appleとして1社で1GWのエネルギー生産ができることになった。これは15万軒の家庭に1年間給電できる量だ。
Appleはこうした発電施設を新たに作ることで、雇用創出などの形で地域コミュニティーにも貢献している。
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