ただ、残念ながらここまで社会責任のために真剣になれるのは、世界の頂点に立つ企業だからこその余裕であって、他の会社では例えばCSR(企業の社会的責任)に関する部署を設けていても、ここまで広い視点は持てないのが普通だし、持てたとしても、ここまで深く掘り下げて、実際の根幹事業にまで影響力を持つことができないのも、仕方がないことかもしれない。
そのような中で、Appleの事業報告書は、先端企業が指し示す、これからの企業に求められる姿勢や取り組みとして、経営層などを説得する材料の1つにもなるし、良い参考になるはずだ(Appleは特殊だから、まねする必要がないという考えの経営者に悩まされている企業では、何をやったらいいかはAppleの資料を参考にして時間を稼ぎ、余った時間で、どうして自分の会社でもこういった取り組みが求められているのかを消費者のリサーチなどに回すといいだろう)。
ちなみに、報告書の中でもAppleは自社の社会における役割をこのように定義している。
2015年、リサ・ジャクソン氏が現職に就き、Appleの環境への取り組みが大きく変化をした年、筆者はその本質的な取り組みに衝撃を受け、ファッション業界に習って「エシカルIT」という言葉を生み出した(最近ではエシカルテックと言い換えている)。
その後のAppleが、この5年間で成し遂げてきた数え切れないほど多くのことは、自然破壊とも無関係ではない感染症パンデミックの年に、改めてこれからの企業が目指すべき方向性の道標(みちしるべ)として検証する価値があるのではないだろうか。
深く調べれば調べるほど、1つ1つのことが普通の企業だったら「そんなことは不可能だ」と一蹴されてしまいそうなことだが、Appleはこの5年間、チャレンジし続けることで、「不可能に見えている」のは入り口に立っているからで、そこから真剣な議論を突き詰めれば、どんな不可能にも道が開けるということを証明し続けてきたのではないかと思う。
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