未来を創る「子どもとプログラミング教育」
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» 2020年08月18日 11時00分 公開

九州大学やAtCoderらが手がける課題解決人材を育てる「アルゴリズム思考」教育とは何か?講義をDX、地域課題も解決し人材育成も(1/3 ページ)

2020年8月、九州大学やAtCoderなど5者が、産学協同での研究や地域の課題解決のための協働事業、さらには人材育成などを目的に包括的な協定を締結した。その注目すべき取り組みを紹介する。

[林信行,ITmedia]

 昨今のコロナ禍で、台湾のIT大臣ことオードリー・タン(唐鳳)政務委員の活躍が世界的に大きな注目を集めた。今はあらゆる社会課題の解決で当たり前にITが活用される時代だ。

 そんな時代に必要なのが、課題をきちんと認識し、要件を定義し、解決の道筋を立てる能力だろう。残念ながら今の日本の教育には、こういった能力の開発に役立っている印象が弱い。後から次々と問題が露呈する政府や大企業のIT施策はその証左といえよう。

 九州大学が、そんな状況を変えるべく立ち上がった。21世紀人に必要な新しい素養「アルゴリズム思考」を定着させようという取り組みだ。ただ「アルゴリズム思考」を教えるだけでなく、教え方を進化し続ける形にデジタルトランスフォーメーション(DX)し、さらには地域の課題も解決しようという取り組みになっている。かなり壮大な構想で、民間企業4社を巻き込んだ取り組みとなっている。

九州大学DX 九州大学の伊都キャンパス(九州大学のホームページより)

21世紀人の新しい素養「アルゴリズム思考」

 「例えば、新型コロナウィルスのパンデミックのような事態に政府はどう対応したらいいのか。対策を打ち出すに当たって考えるべき事柄はたくさんあります。政府としての責任、知事たちにはどんな権限を与えるか、休業要請と補償をどう設定するか。こうしたことのつながりを全て捉え、その上でそれを論理的に整理してまとめないとちゃんとした対策は打ち出せません。こうした事態にきちんと対処していく上で重要なのが『アルゴリズム思考』です」

 そう語るのは九州大学の理事兼副学長、安浦寛人氏だ。

九州大学DX 九州大学理事兼副学長の安浦寛人氏。NTTドコモと組んでのAI運行バスなど、新しい切り口の産学連携を次々と形にしている注目の教育者だ

 情報系や工学系の学生であれば当たり前に行っている「アルゴリズム思考」。これからは文系など他の学科の学生にも重要だという。

 「例えば文系でプログラマーになるつもりがない人でも、将来、仕事でアプリ開発を発注することはあると思います。この時、『アルゴリズム思考』ができていないと、発注相手に何をやりたいかを的確に伝えられません」(安浦氏)

 そういう素養を持つ文系人材が、政府などでも増えてくれないことには、コロナ禍のような非常事態に、ITの力を使った迅速な支援などを展開することができない、と安浦氏は強調する。

 文理融合を進める総合大学として、生徒に広くアルゴリズム思考を定着させたい考えだ。

 今回、この信念の下、九州大学から壮大な構想が発表された。

 「プログラミング教育支および高度IT人材の養成をするプログラム」──名前は長いが同大学を皮切りにアルゴリズム思考を全国の学生に定着させようという一大プロジェクトだ。

九州大学DX 今回発表されたプロジェクトの概要

 国立の同大学に加え、AtCoder(アットコーダー)、電通、電通九州そしてイマーゴという民間4社が連携して形にする。

 これらの協力体制において、学生が書いたプログラムの評価だけでなく、どんなところにつまずいているかなどの傾向を解析し、カリキュラムの改善もできる「オンライン型プログラミング教育パッケージ(仮称)」を開発し、教育そのものをDX化しようという計画だ。

 「世の中のあらゆる領域でDX化が進む中、教育の世界だけが明治以来変わらないチョークと黒板、ノートの世界だった。しかし、コロナ禍で状況は一変し、全国800の大学のほとんどが何らかの形で遠隔授業を実施した。それによって初めて講義のデータがデジタルデータとして残り、後からこれを解析し、教え方を改善することも可能になった。講義のデジタル化が起きたのは日本だけではなく、おそらくこれから世界レベルで教育のDX化が進んでいく。日本もこのまま元に戻ってしまうわけにはいかない」と安浦氏は熱弁する。

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