Microsoftが2021年秋を見込むWindowsの一大プロジェクト「Sun Valley」と「Cobalt」Windowsフロントライン(2/2 ページ)

» 2020年11月02日 12時00分 公開
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Windows 10Xと「Sun Valley」

 同氏は記事中で「Iron」リリースの件に触れ、FE_RELEASEの名称の付いた「Build 20246」がそれまでDev Channelで提供されてきたビルドから機能を削ぎ落としたものであり、Ironがリリースされる期間に向けて必要な機能に絞った上でブラッシュアップを行っていると説明している。

 なお、FE_RELEASEは正式リリースが近付いた段階で“別ブランチ”としてBeta Channelなどに引き継がれ、Dev Channelではそれまでテストが行われていた機能がある程度復活した開発途上版へと戻ることも示唆している。

 また、大規模アップデートそのものは2021年秋の1回のみとなっても、Microsoft側ではあくまで「年2回」の機能アップデートが行われるという姿勢を崩さず、同年春の「21H1」のリリースはIronを掲げつつ、アップデートの内容そのものは小粒に留まるという同氏の見解も示している。

 これに関して気になるのは、「Windows 10X」の存在だ。以前のレポートにもあるように、Windows 10Xは当初の計画が後退し、2021年春に「1画面のクラムシェル型ノートPC」向けのOSリリースが行われ、2画面デバイスのSurface Neo向けのWindows 10Xは2022年内にハードウェア群とともに登場とされている。

Windows 10 当初の見込みからリリースが後ろ倒れになるWindows 10X採用の2画面デバイス「Surface Neo」

 さらに、当初Windows 10XではWin32サポートが間に合わないという話もあり、非常に限定的な用途での適用に留まる見込みだ。同時点でのジョー・フォリー氏の考えは、このWindows 10X第1弾リリースに合わせる形で21H1がキャンセルされるというものだった。Windows 10XとIronの関係は不明だが、筆者の予想ではおそらく両者は別物であり、Cobaltで呼ばれる21H2に注力するために、Ironの名称が付く21H1の提供が簡略化されるだけなのだと考える。

 実際、Sun Valleyの話題に触れているボーデン氏は内部文章での表現として次のように記述している。「Reinvigorating(再び活気づける)」とあるように、既にレガシーの域に達しつつあるWindowsのデスクトップ体験を新しく“モダン”なものにすることによってユーザーの期待に応えるということだ。

 賛否両論で分かれそうな動きではあるものの、この中心にいるのがWindows Devices and Experiencesチームを率いるパノス・パネイ氏であり、おそらくは2021年のホリデーシーズンに投入されるPC製品群とリフォームされたWindows 10の組み合わせで、新しいユーザー体験を訴えたいと考えているのだろう。つまり、ユーザーの目に見える形での変化はCobaltの世代がメインであり、Ironはあくまで内部的な変化のみで、外的要因は少ないという想像ができる。

Internal documentation describes the project as "reinvigorating" and modernizing the Windows desktop experience to keep up with customer expectation in a world driven by other modern and lightweight platforms.

 もう1つ興味深いのは、ジョー・フォリー氏は同件について触れた記事の中で、2020年の夏に公開された資料においてMicrosoftのエンジニアリング担当者は21H2のことを「Windows 10++」と表現していたと紹介している。

 これがUI刷新プロジェクトのSun Valleyを指すのか、あるいはより広いレベルでの変革を指すのかは不明だが、現在Microsoftの開発チームはハードウェアとソフトウェアともに21H2をターゲットに動いているといえる。

 そして、同氏はまた最新情報の中で「1画面仕様のデバイスを対象にしたWindows 10Xは2022年春までに登場する」とも修正している。これが意味するのは、Sun ValleyのプロジェクトはWindows 10Xをも包含したものであり、2021年前半には同プロジェクトにリンクした製品(この場合はWindows 10X)はリリースされない可能性が高いということになる。

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