次にIntelは「リアルワールドに基づく作業も、同じ物語を紡ぐ(結果を示す)」とした上で、「PowerPointにおけるPDFファイルの保存」「ExcelチャートからWord文章へのインポート」「WordドキュメントからPDFファイルへの変換」「Oultookにおけるメールのマージ(結合)」の4つの作業にかかった時間のグラフを示した。いずれのテストも、同社が提唱する「Representative Usage Guides(RUGs)」に基づいて行われたものだ。
結果を見てみると、Ryzen 4000シリーズはバッテリー駆動になると作業時間が延びる傾向が明らかになったという。
一方で、レンダリングを通してCPUの性能を測るベンチマークテスト「CINEBENCH R20」では、Ryzen 4000シリーズのバッテリー駆動時における大きなスコア低下が見受けられなかったという。「競合が好む」(Intel担当者)このテストでは、今までと異なりAC電源とDC(バッテリー)電源でのスコア差が数%以内に収まっている。
なぜこのような結果になったのだろうか。
Intelは、Ryzen 9 4900HS(3G〜4.3GHz、8コア12スレッド)を搭載するASUS製の「ROG Zephyrus G14」と、Ryzen 7 4700U(2G〜4.1GHz、8コア8スレッド)を搭載するLenovo製の「IdeaPad 5(14)」の2台でこの現象を精査した。具体的には、起動して5秒経過したら、CPU内の同じレジスタ(記憶回路)に対する書き込みと読み出しを一定回数繰り返して終了する「マイクロベンチマーク」を自社で開発し、CPUコアに掛けられる電圧や消費電力の変化を観測したという。
結果、AC電源での稼働時は特に変わった挙動はなかったが、DC電源ではCPUの消費電力が上がるまでに幾らかの遅延が生じたそうだ。言い換えると、バッテリー駆動中はフルパフォーマンスに切り替わるまでに時間がかかるということである。
この「挙動」が、Ryzen 4000シリーズのバッテリー駆動時に処理パフォーマンスが“落ち込む”原因であるようだ。
冒頭で触れた自社調査の結果、そして各種ベンチマークテストを通してIntelが主張したかったことは、ノートPCの“真の性能”はバッテリー駆動時に現われるという1点である。世代を経るごとにパフォーマンスを改善してきたRyzenプロセッサに対して、新たに見つかった「弱点」を突いてきた格好だ。
ただ、IntelがこれだけAMDプロセッサの「弱点」を主張していれば、AMDもそれを承知しているはずである。これからリリースされるであろう第4世代Ryzen Mobileプロセッサ(仮)では、バッテリー駆動時のパフォーマンスを改善してアピール仕返す可能性も否定できない。
そうなった場合に、Intelは次に“何”をアピールするのだろうか。そもそものCPUの性能や機能を磨くのか、あるいは、ライバル(AMD)の新たな弱点を見いだして自社の優位性を主張するのだろうか?
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