Audibleがオリジナルコンテンツを強化する理由(1/2 ページ)

» 2020年12月22日 12時00分 公開
[田中宏昌ITmedia]

 1995年に米国で創業したAudible(オーディブル)は、オーディオブックや音声コンテンツの制作/配信事業者として2008年にAmazon.comの傘下に入り、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア、インドなど世界各国で事業を展開し、今では全10カ国を数える。

audible 音声でさまざまなタイプのコンテンツを楽しめる「Audible」

 ここ日本では2015年7月に6カ国目としてサービスインしており、PCやスマートフォン、タブレット、さらにはスマートスピーカーやApple Watchといったさまざまなデバイスでコンテンツを楽しめる。無料でお試しできるものを含め、総タイトルは約40万タイトルを数え(日本語コンテンツは約1.8万冊)、ビジネス書や自己啓発書、現代文学やライトノベル、洋書などのカテゴリーを用意している。

 非会員でもタイトルを個別に購入することもできるが、基本は1カ月税込み1500円の定額サービスだ(お試しで1カ月は無料体験可能)。ポッドキャストが聞き放題であったり、単品個購入を非会員の30%引きで購入できたり、返品や交換が可能だったりと、特典が豊富に用意されている。

audible Audibleの有料会員特典

2020年は日本でも有料会員が倍増するも、まだ序章に過ぎない

 堤幸彦監督初の“聞く映画”となる新作『アレク氏2120』が発表された会場で、同社オーディブル事業部 APAC シニア バイス プレジデントのマシュー・ゲイン氏は、「2020年は当社にとって、まさに転換点を迎える年となった。一連のステイホームにより自宅での過ごし方を有意義にすべく、学習コンテンツの需要が特に増えた他、近年ではポッドキャストの需要が高まっており、ポジティブな成果が世界中で出た。具体的な数値は示せないが、日本ではメンバー(有料会員)が前年比で2倍に増えた」と説明した。成長率という意味では、グローバルでもトップになるという。

audible アマゾンジャパン オーディブル事業部 APACシニアバイスプレジデント マシュー・ゲイン氏。日本語も勉強中とのことで、発音もなめらかだ
audible 2015年のサービスインから5年が経過したAudible。11月に開かれた発表会では“聴く映画”の新作『アレク氏2120』(全12話)が紹介された。同作に出演した山寺宏一氏は「オーディオエンターテインメントは映像化が不可能なものでも楽しんでもらえるもので、これからはどんどんスタンダードになっていくだろう。個人的には一生をかけてやりたいと思っているものだ」とアピールした
audible 2020年は巣ごもり需要もあってか、有料会員数が対前年に比べて大幅に伸びているのが分かる

 実際、12月に発表された「2020年オーディオブックランキング」では、そのような内容のタイトルが数多くランクインしている。

 ゲイン氏は「特に日本はこれまでオーディオコンテンツの消費という意味では、外国に比べて遅れていたのは否めない。一方で、出版社などのパートナーがコンテンツの提供に積極的になり、紙や電子書籍でも売れているものがAudibleでも人気が高い。今後はオーディオで配信した後に出版する“オーディオファースト”の形を取っていく。まず新潮社と協力して第1弾を2021年初旬に発表予定だ」と語った。

audible まずは新潮社と組み、Audible優先でオリジナルコンテンツを配信していく。今後は、KADOKAWAや文藝春秋、ダイヤモンド社といった出版社とも同様の取り組みを行っていくという

 そして「2020年の急成長はまだ始まりに過ぎないと考えており、2021年はさらなる飛躍に向けて、オリジナルコンテンツへの投資を強化していく。前述のパブリッシングやエンタテインメント(アレク氏2120)に加え、ドキュメンタリー、インターナショナルの各分野で大きな施策を行う予定だ」とし、日本のヤクザの実際に迫る「Dark Side of JAPAN ヤクザサーガ」や、ベストセラー作家エリック・リース氏の「日本語版 THE LEADER'S GUIDE」といったタイトルを配信する。

audible 今後重点的に取り組むオリジナルコンテンツの注目作品

これまで国内でオーディオコンテンツがはやらなかった理由

 現状のAudibleユーザーについて聞くと、「年代はバランスよくばらけているが最も多いのは20代〜40台の男性で、ビジネス寄りのスキルアップに関するコンテンツが人気なのは大きい。このトレンドはこれからも続くが、若い人にはライトノベルが伸びているし、巣ごもり需要もあり、男女比はやがて同等になっていくとみている」とし、「選択肢が増えることが大事であり、ベストなものを届けることを粛々とやっていく」とゲイン氏は語った。

 また、日本でポッドキャストをはじめとしたオーディオコンテンツがこれまで普及しなかった点については、「オーディオブックというオーディオエンターテインメントの世界は比較的新しいもので、求められるものが変わりながら日々進化している。今では長編物のコンテンツが好まれてきているが、主食とお菓子のような関係で、ポッドキャストもお菓子のような関係で広まっている。利用シーンに応じて求められるものが変わってくるし、さまざまなタイプのコンテンツがある中で、それらを行ったり来たりする中でポッドキャストが広がっていくと思う」と述べた。

audible 世界と日本のAudibleユーザーの比較

 日々データの分析は行っているそうで、「オーディオブックなのかポッドキャストなのか、映画なのかニーズがめまぐるしく動いており、答えが出きっていないのが現状。今は進化過程と判断している」とした。

 ユーザーの利用デバイスについては、「圧倒的に一番といえるのはスマートフォンで、通勤途中や車の中、キッチンなどで聞いてもらっている。他にも、タブレットやスマートスピーカーを使っている人が多い」とし、「特に“一人需要”はスマホであり、Alexa搭載デバイスでは共有された状態で聞かれるケースが多いようだ。ビジネスや教養ものは1人向けだし、コメディーなどはスマートスピーカーなどに適していると思う。今後は1人用とシェアされるコンテンツをどうしていくのかを考えていきたい」と利用シーンごとのコンテンツについても言及した。

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