「協働的な学び」を実現するために、OPEでは2022年から以下のサービスを順次追加する。
協働学習支援サービスは、AI(人工知能)を使ってグループ学習の評価を支援するソリューションだ。現在、NECが京都市教育委員会や京都大学と共同で行っている文部科学省の実証事業の成果を製品(商用)化したものとなる。
具体的には、マイクで録音した児童/生徒のグループディスカッションの模様をAIが分析し、話者の識別、発言の文字起こし、発言回数のカウント、話者の感情分析……などを自動的に行ってくれる。分析結果はグラフなどで分かりやすく可視化されるという。教員があらかじめキーワードを設定しておけば、その使用回数もカウントしてくれる。
「PBL(問題解決型学習)」は、文部科学省が近年推進している「アクティブラーニング」の1つで、主に中学校と高等学校の教育課程で行われる。その名の通り正解のない課題に取り組むための方法論を身につけることを目的とした学習である。
一般的に、PBLでは以下の手順で学習を進めていく。
田畑氏から発せられた教員の言葉を借りると、PBLは中学生や高校生にとって「意義のある取り組みではある」。しかし、成績を付ける「『学習活動』として見ると、課題もある」。現場の教員からは「個人ワークやグループディスカッションにおける成果物やタスク(作業)を共有しづらい」「生徒の学習プロセスを追いづらいので評価が難しい」といった声が挙がっているという。端的にいえば成績を付けるための情報を集約しづらい状況なのだ。
オンラインPBLプラットフォームは、PBLにおける成果物や討議の記録を集約して“可視化”するための機能である。現時点では複数の学校に協力を依頼して、プロトタイプ(たたき台)の実証研究を進めている所だという。
現行のプロトタイプでは、生徒が書き込む(≒成果を残す)オンラインノートにコミュニケーション機能を統合している。成果物の離散を抑制できる上、議論の過程もしっかりと確認できる。チャットやWeb会議などに専門家を招待することで、テーマについてより深く議論することも可能だという。
オンライン進路相談プラットフォームは、その名の通りオンラインで進路相談を行うための仕組みだ。進路選択がより多様化する高等学校における導入を想定している。
このプラットフォームを導入すると、進路相談を希望する生徒の「面談者探し」「面談者のスケジュール調整」「面談の実施と仮説検証」をワンストップで代行してくれる。面談者は大学生や社会人など、多様なロールモデルを用意する予定だ。
将来的には、これらの「協働的な学び」と個別学習を連携させて、学習状況を可視化できるようになる予定だ。
説明会の終盤では、学習用端末を始めとする教育機関向けハードウェアの新製品が紹介された。 学習用端末の新製品は、デジタイザーペンによる操作やWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)を使った通信に対応した他、学習発表時に便利なHDMI出力端子を追加している。これに合わせて、教室などに設置するWi-FiアクセスポイントにもWi-Fi 6対応品を取りそろえた。詳細は別の記事でまとめているので参照してほしい。
説明会の最後に行われた質疑応答では、学習用端末にまつわる面白いやりとりが見られた。
NECが販売する学習用端末は、Windows 10 Proを搭載するノートPC/タブレットとChrome OSを搭載するノートPC(Chromebook)の大きく2種類である。説明会から参加した記者から田畑氏に、どちらのOSの方が人気なのかという旨の質問がなされたのだ。
一般的な市場であれば、Windows 10 Pro搭載モデルの方が人気を集めそうである。事実、ここ数年の調査では、学習用端末でもWindowsが高いシェアを持っていた。しかし、田畑氏の答えは違った。具体的な販売比率こそ明かされなかったものの、現在はCromebookの方が圧倒的に売れているというのだ。
文部科学省がGIGAスクール構想を発表した後、Googleの教育向けクラウドサービス「Google Workspace for Education(旧G Suite for Education)」を導入する教育委員会が多かったという(参考記事)。このサービス自体はOSニュートラルではあるが、より親和性の高いChromebookを導入するケースが増えたものと思われる。
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