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» 2021年04月22日 06時00分 公開

M1チップと新色で“時代の変化”を感じさせたApple新製品発表会を振り返る林信行視点で振り返るAppleイベント(1/4 ページ)

Appleの発表会では、さまざまな新製品が登場した。それぞれの製品から見えてくるものを林信行氏が読み解いた。

[林信行,ITmedia]

 日本時間で4月21日の未明に行われたApple新製品発表会、そのタイトルは「Spring loaded」だが、これはバネに圧力がかかって縮められている状態を意味する。今にも伸びて弾けそうな状態のことであり、発表会はまさにその通りで1時間弱のコンパクトな講演の冒頭7分で、Apple Card、Podcastアプリ、そしてiPhone 12/12 miniの新色、Purple(紫)が立て続けに発表されている。

Apple ティム・クック Apple Parkを背にして、ティム・クックCEOがApple CardやPodcastアプリ、iPhone 12/12 miniの新色を立て続けに発表した

冒頭の7分でクレジットカードとPodcastを再発明

 Apple Cardはまだ日本では使えないが、Appleがクレジットカードを再発明するとして米国で展開中だ。これまでの使用状況をiPhoneで管理できるなど、従来のクレジットカードにない多くの特徴を備え、今では最も成功したクレジットカードとなっている。

 今回は、クレジットカード業界の因習で夫婦やパートナーでの信用スコアの算出方法が公正ではないとして、そこを是正した他、子供用に親が限度額を設定できるApple Family Cardなどを発表した。一度、どこかの業界に足を突っ込んだからには、ユーザー視点で製品から得る体験を徹底的にブラッシュアップするあたりは、実にAppleらしい。日本での展開が始まる頃には、かなり洗練されたサービスになっていそうだと今から楽しみだ。

 Podcastは、2005年にAppleがiTunesというアプリでサポートしてから爆発的に広がった。最初は3000ほどしかなかった番組は、現在数百万にも及ぶ。

 2021年5月に、AppleはPodcastアプリにこれまでで最大規模の刷新をかける。番組に美しいタイトルページが用意できるようになり、番組のフォロー/視聴/共有を簡単に行えるようにする。

 同じクリエイターによる異なるPodcast番組をチェックできるように、チャンネルという仕組みが加わる。自分に合いそうなチャンネルをお勧めする機能も追加される。だが、何といっても最大の発表はPodcastに月額課金の機能が用意されることだ。これによって、Podcast番組の配信者が独自にリスナーに課金することが可能になる。Podcastサブスクリプションは、5月から日本を含む170の国でスタートする。

Apple Podcast 5月に登場する新しいPodcastアプリでは、月額課金でのコンテンツ配信が可能になったり、広告のある/なしを選べるようになったりする

 今回の発表で、最も驚きだったのが、iPhoneに関しても発表が行われたことだろう。製品仕様などの技術的な変更点は一切ないが、2020年10月の発表以来、優れたカメラ性能や割れにくいCeramic Shield、5G対応などで人気のiPhone 12と12 Proに、ちょうど今が見頃の藤の花を思わせるようなカラーバリエーション「Purple(紫)」が春の新色として加わった。この新色は4月23日金曜日から受注が始まり、4月30日から出荷が始まる。

Apple iPhone 12 紫 春の花をイメージしたのか、このタイミングでiPhone 12と同miniのPurpleモデルが発表された

 これだけでも、かなり充実の発表内容だが、実はここまでの発表は全体で55分の講演の最初の7分に出てきた“前菜”にしか過ぎない。本番はここからだ。

プライバシーを守りつつ紛失を防ぐ「AirTag」

 続いて発表されたのが、新カテゴリーの製品となる紛失防止タグの「AirTag」だ。鍵やバッグなど、よく持ち歩く大事なものに取り付けておくと、紛失した時にiPhoneを使って探すことができるようになる。無くしたものが近くにある場合は、音を鳴らして探すこともできれば、どこにあるか方向と距離をiPhoneで確認する「正確な場所を見つける」機能で探すこともできる。

Apple AirTag 紛失防止タグの「AirTag」は、内蔵バッテリーで約1年動作する。ユーザーのプライバシーを脅かさずに、失せ物探しを手伝ってくれる。Appleやエルメスを含む他社から、鍵やカバンやスーツケースに取り付けるアクセサリーも提供されている

 ただし、「正確な場所を見つける」機能は、UWBという通信技術に対応したU1プロセッサ搭載のiPhone(iPhone 11以降)が必須だ。

 万が一、どうしても近くで見つからない場合は「紛失モード」に設定すると、運が良ければ地図上に無くした場所が表示される。AirTagにはGPSも通信機能も内蔵されていないが、近くにiPhoneを持った人が通りかかると、「紛失物が発見された」という通知がAirTagに届き、その場所が地図として表示されるのだ。

Apple AirTag UWBに対応したiPhone 11シリーズ以降のモデルではどの方向、どれくらいの距離のところにあるかがiPhoneの画面に表示される

 ここで、すごいことが3つある。1つは「発見」できるApple製品が世の中には10億台近くもあることだ。秘境と言われるような場所から、セキュリティが厳重なオフィスの中まで、どんな場所でも近くをiPhoneユーザーが通りかかる可能性はあるため、紛失物が発見される可能性も大きい。製品ページによれば、紛失モードに設定したAirTagはNFC対応のスマートフォンを近づけることで、持ち主が設定した電話番号などを確認することもできる。

 もう1つは、この紛失物の発見劇が、人知れず舞台裏で行われていることだ。誰が何を無くしたかや、いつどこで発見されたかといった情報は持ち主以外には分からないようになっている。落とし物が発見されたせいで、いてはいけなかったはずの場所にいたことが明るみに出てスキャンダルになる、といった心配はいらない。

 3つ目のポイントは、業界初の試みとしてストーカー的な悪用がされないようにしっかりと工夫していることだ。自分のものではないAirTagが、常に近くにあると通知してくれる機能や、識別子を常に変更してトラッキングできないようにする工夫、しばらく持ち主の元に戻っていないタグが音を鳴らして存在を示すなど多岐にわたる。

 バッテリーで操作する仕組みだが、動作期間は1年間ほどだという。価格は税込みで1個3800円、4個入りで1万2800円のAirTagには、自分の名前や絵文字など好きな言葉を刻印してオーダーすることができる。レザーキーリングやレザーとポリウレタンの2種類のループ(カバンなどに取り付けるためのもの)などのアクセサリーも発売され、エルメス製のキーリング、レザーループ、ラゲッジタグも発売されるなど、製品の生態系も最初からしっかり作られているあたりも含め、よく練られている。

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