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「Google Workspace」は小学校でどう使われている? 3人の先生が解説(1/3 ページ)

» 2021年08月27日 19時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」に基づいて、小中学校では“1人1台”の学習用端末の配備が進んだ。文部科学省の調査(PDF形式)によると、96.5%の自治体が2020年度内に必要な端末の配備を完了したという。

 しかし、これはあくまでも「配備」の話であって、実際に活用できているかどうかは別の話である。学習用端末があっても、児童や生徒はもちろん、教員が活用できなくてはただの「箱」あるいは「板」である。

 Googleが7月14日に開催した「Google for Education」に関する説明会では、3つの公立小学校の教員が登壇し、同サービスの活用事例を紹介した。

学習用端末が「児童主導の授業」を実現する

棚橋先生 静岡県焼津市立豊田小学校の棚橋俊介教諭(YouTube動画より)

 最初に登壇した焼津市立豊田小学校の棚橋俊介教諭は、GIGAスクール構想の初年度である2020年度は小学4年生を担任し、今年度(2021年度)は小学3年生を担任している。同市立小学校では学習用端末としてChromebookが導入されたが、棚橋教諭がこの2年で受け持ったクラスでは、多くの児童がICT機器に不慣れな状態からスタートしたという。

 Chromebookを含むICT機器に慣れてもらうための手段として、棚橋教諭は児童が自由に機器を触れる(使える)機会を多く設けたという。「自分たちがICTを活用していく」という意識の醸成も狙ったようだ。

 合わせて、ICT機器を使う上でルールは必須ということも伝えているという。

課題 棚橋教諭が受け持った学級の年度当初に抱えた課題。どちらのクラスもICT機器に不慣れな児童が多かったようだ。「当たり前のようにスマホやタブレットを使っている親が多いだろうから、子どももスマホやタブレットに慣れている」と考えていた筆者としては意外だった

 棚橋教諭によると、ICT機器を使うようになった児童は生活リズムが整ったという。具体的には、前の授業が終わると、すぐに次の授業の支度をするようになったそうだ。

 ICT機器を使う際に時刻をしっかり守って活動すること机上整理をどのように行うかについて、児童と相談しながら決めたことが奏功したようである。

ルール大切 クラスの児童と相談しながらルールを決めた結果、児童はそれをしっかりと守るようになったという

 学びの面では、自分の考えを相手に伝えようとする姿勢が出てきたという。

 算数の文章題では、そこに書いてあることを図で示すと式を立てやすいこともある。このこと自体は紙(ノート)を使ってもできるが、学習用端末を使えば「何度もやり直しやすい」

 文章からどのように式を立てたのか――より分かりやすく伝えるために、試行錯誤を重ねやすくなったということである。

伝える 他の人に自分の考えを伝える際に、工夫を凝らす児童も増えた

 授業で分からないことや困ったことが出てきた際に、友達の考えや意見を参考にすることも増えたという。

 個人差はあるが、多くの児童や生徒は、教員を含む他者に「分からないこと」を言い出せないことがある。教員や友達がそれに気付いて手を差し伸べてくれるなら良いのだろうが、そう物事がうまく進むとも限らない。分からないことが多くなると、新しい知識の習得がうまく行かず、さらに分からないことが増えていく。こうした“負のスパイラル”は、当事者が意識することなく進行するものである。

 「じゃあ、先生とか他の人に聞けばいい」と思うかもしれない。しかし、他人に分からないことを打ち明けて、解き方や考え方を聞くことは、人によってはとても難しいことである。

 その点、授業でクラウドサービスをうまく活用すれば、児童や生徒の解き方や考え方をクラス全体に共有できる。分からないことを言い出せない児童や生徒も、自分の端末を使えば他の人の解き方や考え方に接しやすくなるので、分かる“手がかり”をつかみやすくなる。

共有 クラウドサービスをうまく活用すれば、児童や生徒の解き方や考え方をクラスやグループ全体で共有できる。「分からない」と言いだしづらかった児童や生徒も、他の人の解き方や考え方を参考にして課題に取り組みやすくなる

 棚橋教諭が受け持ったクラスでは、現行の学習指導要領が重視する「協働的な学び」や「個別最適な学び」において学習用端末が役立ったようだ。

 小学4年の社会科のグループ学習において、児童たちはチャットを活用して教え合ったり、学習に役立ちそうな情報を提供したりと、自発的かつ協力して課題に取り組んだという。これこそ、協働的な学びである。

 グループ学習の過程において、あるグループは集まって直接話し合った一方で、別のグループはチャットで情報共有しつつ学習を進め、さらに別のグループは完全に個人ごとに調べ学習を進めたという。1つのクラスの中で複数の学習スタイルが見受けられるようになったのだ。これは、ある意味で個別最適な学びといえる。

 バラバラなスタイルで学習を進められると、先生は状況を把握しづらい……と思いきや、全児童が作業をクラウド上で進めるため、学習状況はむしろ把握しやすくなったようである。

個別最適な学び 同じテーマのグループ学習でも、スタイルがグループごとに異なる。これは従来の授業では見られなかった光景である

 学習用端末の導入に合わせて、棚橋教諭は授業スタイルの見直しも図ったという。

 小学3年の理科の「こん虫の育ち方」では、モンシロチョウとトノサマバッタの違いを学ぶ。従来、棚橋教諭は両者の違いを板書して整理していたが、学習用端末の配備に合わせて児童が自ら整理するように改めた。これは情報活用能力の育成を見据えた取り組みで、「課題の設定→情報収集→情報の整理と分析→情報のまとめと表現」という一連のプロセスを“型”として意識したという。結果、使うべきツールや学び方を児童自らが選び取るようになった。

 このことは児童の学校外における学びにも影響を与えたようで、宿題以外の「自主勉」をする児童が少しずつ増えていったという。児童の頑張りを褒める機会も増えたそうだ。

方法のシフト 児童が学習用端末を生かす能力を高めるために、一部の単元の学習進行を教師主導から児童主導に切り替えた
影響 児童主導の学習を進めた所、宿題の範囲外で自主学習をする児童が増えたという。その結果、児童の頑張りを褒める機会も増えたという

 棚橋教諭は、クラウドツールで授業自体の効率化も図れたという。従来は時間をかけて集計したり準備したりしていたことが、クラウドツールを使えば“一瞬”で行えることもある。浮いた時間を“思考”に回せるようになったことは、大きなメリットといえる。

 学習用端末端末が行き渡り、クラウドサービスを活用できる環境が整えば、児童主導の授業を実現できる。そして、教員は児童の主体性を育む教育に注力できる――そういう意味で、豊田小学校は良い事例といえる。

教師の準備 Googleの各種ツールをうまく活用することで、授業に必要な作業時間を短縮できたという。浮いた時間を思考に回せることもメリットのようだ
焼津市立豊田小学校の事例紹介(Google Education)
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