―― ウェアラブルといえば、指向性スピーカー付きのスマートグラス「HUAWEI×GENTLE MONSTER Eyewear II」のクラウドファンディングが目標額を達成し、一般販売も行うことになったそうですね。クラウドファンディングの成果について、どうお考えでしょうか。
楊氏 今回のクラウドファンディングは、1つの“試み”として実施したものです。目標額を達成できて、非常にうれしく思います。
このEyewear IIは、弊社にとって新しいジャンルの製品の1つです。率直にいうと「日本のユーザーに受け入れてもらえるか……?」と心配だったのも事実です。しかし、クラウドファンディングを通して、このような革新的な製品こそ、日本のユーザーに受け入れてもらえるのだと自信が付きました。
弊社は今、(製品に関する)試行錯誤を繰り返している所で、その過程でどのようなユーザーやシナリオに適しているのかという検討も行っています。Eyewear IIの場合、バカンス(休暇中)、ドライブ中、釣りをしている時など、日本の消費者に合った製品になるように工夫しています。
―― スマートバンド、スマートウォッチやワイヤレスイヤフォンなど、ウェアラブルデバイスは競争が激化しているように思います。見方次第ではPCよりも激しい競争環境にあると思うのですが、ファーウェイはどのように戦っていくのでしょうか。
楊氏 おっしゃる通り、ウェアラブルデバイスは多種多様な製品が市場にあり、ラインアップも豊富です。その中で、先ほども述べた通り、私たちは5つのシナリオに焦点を当てて、個々の製品(単体での)品質を高めつつ、連携させることによってより便利に使っていただけるように心掛けています。
先般発表した「HUAWEI Watch 3」を例に見ていくと、従来モデルはスポーツにおいて便利な機能を搭載してきましたが、今回はヘルス(健康)における新機能を追加しています。具体的には、体表温度を測定する機能、転倒検知機能や手洗い検知機能を付けました。新しい機能を備えることで差別化しました。バッテリーの持ちも、スポーツモードなら最長14日間、スマートモードでも3日間としました。単体でもより便利に使えるようにUXの改善に努めています。
一方で、異なるデバイスと一緒に使う際の利便性を高めることも忘れていません。例えば、HUAWEI Watch 3とスマートフォンを組み合わせて使うと、スマホで「NAVITIME」を開くとウォッチ側でも自動的にNAVITIMEが表示されるようになっています。スマホでルートを確定すれば、後の案内はウォッチに“お任せ”できます。
2つのデバイス間を1つのアプリがスムーズに行き来できることが、何よりの重要なポイントです。
―― デバイス間のスムーズな連携を実現する上では、アプリ開発者との連携も欠かせないと思います。何か工夫はされているのでしょうか。
楊氏 HUAWEI Watch 3には「HarmonyOS 2」を搭載しています。このOSは異なるタイプのデバイス間で連携をしやすいことが特徴で、アプリの開発者が最適化をすれば、デバイス間のシームレスな連携は(比較的容易に)実現できます。
―― ファーウェイは、日本市場においてスマホを通して認知度を高めてきたと思います。しかし、最近はスマホに関する発表が少ないような気がします。スマホについて、何か近々発表する予定はないのでしょうか……?
楊氏 モバイル製品(スマホ)についても、社内で(発売に向けた)企画を進めています。発表できる状況になったら、改めてお知らせいたします。
読者の皆さんもご存じだと思うが、ファーウェイは米商務省による事実上の輸出規制を受けている。その影響で、主力製品であるスマホを思うように販売できなくなっている。その代わりに販売を強化しているのが、ノートPC、PC周辺機器やウェアラブルデバイスである。
取引先の半導体メーカーの取り組みによって、ファーウェイはPCはもちろんタブレットやスマホでも最新プロセッサを採用できるようになった。特にノートPCは、PC専業メーカーにもひけを取らない高い“商品力”を備えている。MateBook Pro Xは、ハイスペックなモバイルノートPCを求めている人にはイチオシできるモデルの1つであり、本当によくできている。
一方で、最新の通信規格への対応が“要”となるスマホやタブレットについては、5G通信に対応できるプロセッサを搭載しているにも関わらず、5G通信に一切対応していない。米商務省が発出している輸出許可の条件による影響だと言われている。
ファーウェイが進めているデバイス間連携の強化は、5G時代に当たって非常に重要な発想である。しかし同社は、連携の要となるPC、スマホやタブレットが5G対応を進められない状況に陥っている。ファーウェイが理想を達成しきれるかどうかは、米中関係の改善にかかっている。
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