iPhone 13シリーズとiPhone 13 Proシリーズに、春の新色が登場した。
AppleのiPhoneのメインストリームモデルは、1年に1回のペースで新製品発表を行っている。そして時折、発売から半年くらいの節目で、そのタイミングで製品を買う“後押し”となる新しいカラーバリエーションを発表する。
従来は、新色として追加されるのは「PRODUCT(RED)」が多かった。このカラーは、売り上げの一部が「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)」に寄付されるというものだ。しかし今回は、iPhone 13シリーズには既にPRODUCT(RED)が既に存在する。
そのこともあってか、今回の新色は「緑」である。とはいっても、ProがつかないiPhone 13シリーズと、iPhone 13 Proシリーズでは色味が異なる。iPhone 13シリーズは単に「グリーン」という名前であるのに対して、iPhone 13 Proシリーズは「アルパイングリーン」という名前が付けられている(アルパインは「高山」の意味)。
Appleの公式画像を画面上で見ると、グリーンとアルパイングリーンには大した差がないように思える。しかし、実機を手にしてみると、両者の印象はかなり異なり驚く。
まず、iPhone 13シリーズのグリーンから見ていこう。
光沢のあるガラスコーティングの内側を彩色しているため、当たっている光の量はもちろん、光の色や写りこんでいるものによって色の表情は大きく変わる。Appleの発表会を発光するディスプレイで見て得た印象よりも、かなり上品で深みのある緑色だった。
物に例えるとしたら一服した後、茶器の底に残って茶室の明かりを反射する抹茶(それも濃い茶)。あるいは、なじみのある人が少ないかもしれないが、青めのうでできたまが玉なんかが近いかもしれない。
見た目の印象に近い色をアプリで探してみた。私の目で見た印象では「CLAN」あるいは日本の伝統色でもある「孔雀緑(ピーコックグリーン)」あたりに近い。
指紋などがついた箇所は、回りの色の影響で少し黄色みを感じさせる。その色の深みが高級感を感じさせるかと思えば、エッジや指紋に黄色みを感じると親しみやすさも覚える、なんとも不思議な緑色だ。
つや消しアルミニウムによる側面は、一見すると黒く見える。しかし、光を反射させるとこちらも緑色に彩色されていることが分かる。
暗い場所ではほとんど黒なのだが、たっぷりの光を当てると、背面の色合いに使い緑に見える。幅広い“緑色”を楽しませてくれる。
一方、つや消し処理のガラス面の内側を緑に彩色したiPhone 13 Proのアルパイングリーンを見た時の第1印象は「2年前(iPhone 11 Proシリーズ)の『ミッドナイトグリーン』とほぼ同じ色では?」というものだった。
しかし、iPhone 11 Proのミッドナイトグリーンを取り出して改めて比較をして見ると、アルパイングリーンの方が緑味が強くなっていることに驚かされた。恐らく、iPhone 13のグリーンとインキ自体の色は同じだが、そこにつや消し処理の光の反射が白味を足して、この色になっているのではないかと思う。
他のカラーバリエーションでも同様だが、iPhone 13シリーズとiPhone 13 Proシリーズのカラーバリエーションでは、それぞれ背面色とカメラレンズが乗ったプレートの色、側面の色が異なっている。このうち、背面の色とレンズプレートの色は、Proモデルとそうでないモデルで彩色の仕方が“逆”になっている。
つまり、iPhone 13シリーズはレンズプレートがつや消しのアルパイングリーンで背面色がグリーン、iPhone 13 ProはレンズプレートがiPhone 13と同じグリーンで、背面色がアルパイングリーンということだ。その点から考えても両者では同じインキを使っていると考えるのが自然だろう。
では、アルパイングリーンはどんな緑色なのだろうか。例えるなら「お懐紙越しに見る草餅」あるいは「太陽の光が笹の葉の緑を透かして、障子を緑色に染めたところ」といったところだろうか。アルパイングリーンの「アルパイン」とはどんな意味かと考えていたが、もしかしたら「深緑の高山にかすみがかかって、そのかすみ越しに緑を見ている」ようなイメージなのかもしれない。
さて、同じインキを使っていようとも、表面処理によってiPhone 13シリーズのグリーンとは受ける印象はかなり違うし、実際にカメラで撮った時にセンサーに記録される色も違う。アルパイングリーンのiPhone 13 Proの背面色を「COLORGUIDE」というアプリで撮影したところ、「山葵色(わさびいろ)」となった。
今回、Appleが行ったiPhone 13/13 Proシリーズに関する新発表は、この2つのカラーバリエーションだけだった。しかし、一言に“色”といっても、それがどんな素材に塗られた色か、どんなインキを使っているか、どのような表面処理が施されているかによって印象は大きく変わるし、処理の仕方によっては1つの製品が光の加減1つでかなり幅広い表情を見せてくれる。
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