これまでの限界を打ち破る! 作り込まれた「Apple Event」で感じた新たな息吹(1/3 ページ)

» 2022年03月10日 12時00分 公開
[林信行ITmedia]

 2022年になって、初のAppleの製品発表イベント「Apple Event」が開催された。前回のApple Eventは2021年10月で、実に5カ月ぶりの開催となるが、Appleの業績は新たな製品を発表しなくても良いくらいに好調で、iPhone 13シリーズもこの半導体不足の中、クリスマスシーズンだけで、Appleとしても記録的な4000万台が売れたという分析がある(WedbushのDaniel Ives氏の予想)。

 Macに関しても、M1プロセッサの採用以来売り上げが顕著に伸びており、同社のこれまでの記録を上回る売り上げを続けていることは、今回の製品発表イベントでもティム・クックCEOが証言していた。同様に2021年12月25日締めとなる2022年第1四半期の決算報告でも、前年同期比で売上11ポイント増の、同社史上最高益を計上している。

Apple Event ティム・クックCEO スペシャルイベントに登壇するAppleのティム・クックCEO

予想以上に新製品が発表されたスペシャルイベント

 そんな好調の只中にある同社が、今回発表した新ハードウェア製品がiPhone 13シリーズの新色、第3世代となる「iPhone SE」、M1プロセッサ搭載の新型「iPad Air」に加え、PC用として史上最高性能をうたうプロセッサ「M1 Ultra」搭載モデルも用意されたクリエイティブプロフェッショナル向けの「Mac Studio」、そして同機のためにつくられた27型ディスプレイの「Studio Display」だ。

 iPhoneやiPadシリーズの人気モデルで製品性能を底上げする一方、MacでのApple Silicon採用以来多くのユーザーが求めていたプロ用デスクトップモデルをついに世に放った形になる。

 ちなみに製品発表会で、Appleは今回のMac Studioとは、別に(おそらくさらに高性能な)Mac Proも別途開発していることも、ハードウェアエンジニアリング担当上級副社長のジョン・ターナス氏が明言していた。

 予想外に盛りだくさんだった製品発表会だが、まずはこれらの華やかなハードウェア製品の影に隠れて目立たなくなってしまった、注目の新サービスやソフトの発表について紹介したい。

Apple Event 新ハードウェア イベントではMacやiPhone、iPadなど多彩なハードウェア製品が発表された

大谷翔平の活躍をApple TV+で追体験

 まず発表会が始まると、ウクライナの国旗の色と同じ青のニットと黄色いApple Watchのバンド(新色レモンゼストのソロループ)を身につけたティム・クックCEOが登壇し、Appleの動画配信サービス「Apple TV+」の紹介から話を始めた。

 アカデミー賞にノミネートされた作品が数多いことを取り上げつつ、同サービスで提供する楽しみの形を増やすとして、新サービス「Friday Night Baseball」を発表した。米国プロ野球の大リーグで、週に1度金曜日にあるダブルヘッダーと、試合前後のライブショーをApple TV+で放送するというものだ。サービスは8カ国で展開予定で、その中には日本も含まれている。米国ではレギュラーシーズン中の平日夜に、毎日ハイライトやダイジェスト映像も配信するようだ。

 紹介映像の中には大谷翔平も一瞬だが登場しており、外出先などでTVが見られない場所でも、気になる試合を観戦できるかもしれないと期待が高まる。

Friday Night Baseball Apple TV+で始まる新サービス「Friday Night Baseball」

 続くiPad Airの発表中には、あらかじめ用意されたストーリーボード(映像の流れ)を選ぶとひな形が現れ、それに合わせて映像を撮るだけでプロの作品のように見える映像に仕上がるという、iMovieの新バージョンが来月(4月)にリリースされることも発表された。

次期iMovie 新型iPad Airで紹介された次期iMovieのストーリーボード

iPhone 13シリーズでも緑色のカラーバリエーションを提供

 今回、iPhone関連の発表は2つあった。1つはiPhone 13シリーズに新色の緑とアルパイングリーンが加わったこと、もう1つはA15 Bionicを搭載したiPhone SEが加わったことだ。

 製品名に数字がついたメインストリームのiPhoneは、1年に1度のアップデートが基本となる。ただ発売から日数が経ち、次のモデルの発売が近づくにつれ、製品購入のモチベーションは下がるものだ。そこで、これまでにも新モデルが出てから半年くらい経ったころに、PRODUCT(RED)の赤モデルなどのカラーバリエーションを追加したことはあったが、今回、新しいカラーバリエーションとして発表したのは緑色だ。

iPhone 13シリーズの新色 iPhone 13シリーズに新たに加わったグリーンとアルパイングリーン

 iPhoneで初めて緑色を採用したのは、2019年登場のiPhone 11 Proのミッドナイトグリーンモデルとなる。着色用のインキを調合したのは埼玉県蓮田市に工場を持つスクリーンインキ製造会社「セイコーアドバンス」で、あのiPhoneの美しい黒色(俗称:Appleブラック)を調合した会社でもある。同社をティム・クックCEOが訪れた際、1つ驚いたことがある。

セイコーアドバンスの埼玉工場 セイコーアドバンスの埼玉工場でミッドナイトグリーンのインキを眺めるティム・クックCEO

 グリーンというという言葉自体には、環境に対して良いイメージがあるが、皮肉なことにこのグリーンをインキで再現しようとすると鉛や臭素などに頼る必要があり、環境汚染につながる懸念があった。

 しかし、セイコーアドバンスはAppleの協力の下、臭素を使いながらも環境に対して悪影響のない方法で緑のインキを作り出すことに成功した。これがiPhone 11 Proのミッドナイトグリーンを生み出したという経緯がある。

 Appleはそれ以来、いくつか緑色に着色されたiPhoneを出しているが、今回、そこにさらに深みを帯びたグリーンのiPhone 13シリーズと、さらに光沢も加えたアルパイングリーンのiPhone 13 Proシリーズをラインアップに加えた。セイコーアドバンスのインキを採用しているかは明かされていないが、これまで通り環境に配慮した作りになっていることは公言している。

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