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始めから“100点”を求めないことがポイント――茨城県守谷市が全小中学校のオンライン授業をいち早く実現できた理由(後編)(2/4 ページ)

» 2022年03月23日 12時00分 公開
[石井英男ITmedia]

授業の配信は基本的に「Zoom」で配信

―― 基本的に授業はZoomで配信したのでしょうか。

奈幡氏 その通りです。ただし、Google Meetを使って配信した学校もあります。

―― Zoomのテキストチャット機能は、学校ごとに運用しているんでしょうか。息子の話によると、ログイン時に名前が求められることもあり、チャット欄が荒れることはないそうですが。

奈幡氏 この点は、各学校あるいは各教師の判断に任せています。視察したある小学校では、意見のすり合わせにテキストチャットを活用していました。このことは中学校も同様で、いろいろな授業でチャット機能を有効に使って、話し合いの代わりの文字言語で意見をすり合わせている学校もあります。

 一方で、今の所は荒らす人はいないけれど「もしかしたら」と考えて、テキストチャットを使っていないというケースもあります。石井さんの息子さんが通う中学校は、そういう考えに立っているのだと思います。

―― 手を上げて発言とかさせているようですが、恥ずかしいときは文字で書けるといいかもしれないですね。せっかく用意されている機能ですし。

奈幡氏 石井さんのように専門性のある方から助言していただくと、学校も「やってみようかな」という気持ちになるでしょうし、お子さんから要望として「みんな大丈夫だよ、情報モラルはちゃんとしてるからチャットを使わせてください」と挙げていただくのも有効かもしれませんね。

(筆者注:筆者の長男が通う中学校では、後からテキストチャットが使えるようになった)

チャット利用 テキストチャットの利用は、学校や教師の裁量に任せたという。このように意見の集約に活用している学校もあった(画像提供:守谷市教育委員会)

―― Zoomですが、今回のオンライン授業は無料アカウントを使って行ったようですね。無料アカウントの場合、基本的に40分で配信が終わります。先生方はその中に収まるようにうまく授業を組み立てているんだと思うのですが、本来の授業時間(50分)よりも少し短いですよね。有料アカウントにするのは難しかったのでしょうか。

奈幡氏 有料アカウントも保有しているのですが、数が限られていることもあり、今回は無料アカウントで対応しました。

―― 集中力の観点に立つと、小学生、特に低学年だと50分フルのオンライン授業は辛い面もありそうですよね。一方で、50分をフルに使わないと伝えきれない授業もありそうなのが悩ましい所でもあります。

奈幡氏 40分で足りない場合は、ほとんどの学校では児童/生徒に一度退出してもらって、再入室というやり方をしています。あとは、石井さんがおっしゃる通り授業を制限時間の40分で収まるように組み立て直している教師もいます。

 児童/生徒は画面を見続けることになります。目の負担や疲労が大きくなるので「(オンライン授業は)40分でちょうど良い」と考える教師もいるようです。

―― 先生方にも目の負担や疲労がありますよね。対面とは違った気遣いも求められると思います。息子の中学校では、オンライン授業は「午前中のみ3時間」という設定でしたが、これは市内で共通なのでしょうか。

奈幡氏 当初、教育委員会として小中学校に共通して指示したのは「オンライン授業は午前中に3時間実施」「『朝の会』と『帰りの会』はきちんとやる」という2点です。学級への所属意識を高めるという観点で、朝の会については健康観察、帰りの会については1日の頑張りへの称賛、両会共通で担任からのあいさつは最低限やりましょうという指示もしています。

 オンライン授業の開始後、小学校低学年でも双方向授業の割合が増えてきました。学校によっては、オンライン授業を3時間から4時間に拡大する動きもありました。今回は3〜4時間のオンライン授業後、午後を「午前中の復習」としています。

 今後の検討項目としては、登校できない期間の長期化を視野に入れてオンライン授業のコマ(時間)数をさらに増やすべきかどうかという点があります。この話自体は、2020年度の校長会でも出ていたのですが、一部の保護者の方からも増やしてもいいのではないかというご意見をいただいています。

朝の会 小学1年生から全学年で「朝の会」「帰りの会」を行うことで、学級への帰属意識を醸成した(画像提供:守谷市教育委員会)

―― 特に中学3年生は高校受験を控えていますから、1つ1つの授業が大事になってくると思います。もちろん、生徒によっては塾に行ったり自学をしたりということはあるでしょうが、やはり学校の勉強が基本になることは変わりないでしょうから。一方で、中学1〜2年の生徒は部活ができないことがつらいことかもしれません。

奈幡氏 おっしゃる通りです。特に中学生からは「午後もオンライン授業をやってほしい」「授業を双方向化してほしい」といった要望も寄せられています。見方を変えると、守谷市ではオンライン授業の内容が比較的充実しているので、期待が要望として現れた結果だと思っています。

 他の自治体では、オンライン授業をするためのシステムやノウハウがないがゆえに、つなげることで精いっぱいになってしまうことが多いようです。そういう状況で私たちのようにしっかりと時間割を区切ってできるかといえば、難しいでしょう。

 守谷市のオンライン授業は、学校ごとに1時間を40〜50分にして行われています。石井さんの息子さんが通っている中学校では、1時間(60分)を1タームとして時間割を組み立ていたようです。これをキッチリと行えているからこそ、保護者や生徒の皆さんから先のような要望が出てくるのだと思います。私たちはもちろん、教師もその要望に応えたいと考えています。

―― 息子の授業の様子を見ていても、先生方は日に日に慣れて上手になっていった印象を受けました。もちろん生徒もそうで、ブレイクアウトセッションでのグループ討議などもしっかりとやっていて感心しました。

綿密な準備 綿密な準備により、小学校低学年でも双方向授業の割合が増えてきた(画像提供:守谷市教育委員会)
ALTによる英語の授業も 中学校では、普段通りにALT(外国語指導助手)による英語の授業も行われた(画像提供:守谷市教育委員会)

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