Steam Linkのようなクラウドゲーミングサービスは、サーバ(親機)で描画した映像を動画としてクライアント(子機)に伝送する仕組みとなっている。そのため、安定した通信さえ確保できれば、クライアントとなるスマホ自体のスペックはそれほど高くなくても意外と快適にプレイできる。
しかし、スマホに直接インストールするゲームアプリでは、端末の処理パフォーマンスがゲームプレイの快適さに直結する。“単体の”Androidデバイスとして、GPD XPがどれほどのパフォーマンスを発揮するのか、ベンチマークテストを通してチェックしてみよう。
今回は比較対象として、中国Xiaomi(シャオミ)製のミドルレンジスマートフォン「Redmi Note 10 JE」を比較対象として用意した。Redmi Note 10 JEはKDDIと沖縄セルラー電話(au/UQ mobile)の専売モデルで、au Online Shopでの税込み販売価格は2万8765円となる。
Redmi Note 10 JEのSoCは、米Qualcommの「Snapdragon 480 5G」である。このSoCのCPUコア(Qualcomm Kyro 460)は、GPD XPが備えるHelio G95と同じ「Cortex-A76×2コア+Cortex-A55×6コア」という構成で、比較対象としてちょうど良いと考えたため、登場願うことになった次第だ。
まず、ベンチマークテストアプリ「Antutu Lite」を実行してみた。結果は以下の通りだ。なお、Antutu LiteはGoogle Playでは配信されていないアプリなので、インストールには注意が必要だ。
ベンチマークテストアプリ「PCMark for Android」で「Work 3.0 performance」テストを実行した。結果は以下の通りだ。
3Dグラフィックスのベンチマークテスト「3DMark for Android」において「Wild Life 」と「Wild Life Extreme」のテストを行った結果は以下の通りだ。なお、いずれのテストもRedmi Note 10 JEでは正常に実行できなかったので、GPD XPの結果のみ掲載している。
クロスプラットフォームのベンチマークテストアプリ「Geekbench 2.0」のCPUスコアの計測結果は以下の通りだ。
ついでに、グラフィックスパフォーマンスを見るOpenCLスコアも計測した。結果は以下の通りだ。
これらのスコアを見ると分かる通り、両モデルともにいわゆる「ミドルレンジモデル」らしいそこそこなスコアとなっている。特にパワフルでもないが、極端にパワー不足を感じるほどでもないといった所である。
OpenCLのスコアを見ると分かる通り、グラフィックス面においてGPD XPは少なくともRedmi Note 10JEよりも性能が良い。GPUに加えてCPUも使い込むタイトルでない限り、単体のAndroidゲームも十分に遊べるだけのパフォーマンスは備えている。
最後にバッテリーについて、PCMark for Androidの「Work 3.0 battery life」でテストしてみた結果も明細する。GPD XPの結果は「16時間47分」で、外に持ち出して1日4時間遊んだとしても4日くらいは持つ計算となった。十分なバッテリー持続時間だろう。
ここまで見てきたように、GPD XPはハンドヘルドのゲーム機としては最大370gと軽く、持ち運びに便利だ。バッテリーの持続時間も長いので、長時間プレイできる。ただし4万2600円という価格はネックとなるかもしれない。
というのも、今回比較したRedmi Note 10JEの例を挙げるまでもなく、この程度のスペックを持つ端末であれば、高くても2万円もあれば購入できるし、これに市販のゲームコントローラーを取り付けても、ゲームプレイは可能だ。ただし本機に用意されているキーマッピングボタンを使えば、コントローラー非対応のゲームでもプレイできるのは有利な点だろう。
GPD XPで気になるポイントはもう1つある。一部のゲームストリーミングアプリが動かない可能性があるのだ。
そのことに気が付いたのは、Antutu Liteでベンチマークテストを実行していた時である。テスト結果に以下のような文言が付加されていたのだ。
このデバイスはルート化されている可能性があります
システムパラメータはルートが原因で変更される可能性があり、これによってスコアが不正確になることがあります
通常、Android端末はユーザーに管理者権限(root権限)は与えておらず、プリインストールされたシステムアプリのごく一部にのみ付与されている。「ルート化(root化)」とはその制限を解除することを指し、通常はユーザーが行えない操作も行えるようになる。見方を変えると、ルート化していない端末よりもセキュリティ上のリスクが多くなる。
そのこともあり、高いセキュリティを求められるアプリは、端末のルート化を検出すると起動させなかったり、起動しても機能が大幅に制限したりといった自衛措置を講じることがある。「もしかして」と思い、プレイステーション4/PlayStation 5用のリモートプレイアプリ「PS Remote Play」をインストールして使ってみた所、案の定エラーメッセージが出て起動できなかった(PS Remote Playはルート化した端末での利用を禁じている)。
GPD XPにはSteam LinkやAMD Linkがプリインストールされており、GeForce NOWも利用可能だが、サービスのポリシーによっては利用できない可能性があるので注意が必要だ。
なお、このGPD XPは普通に天空を通して購入したもので、筆者がルート化したわけではない。最初からこの状態であることはつけ加えておく。現在クラウドファンディングで販売されている上位モデル「GPD XP Plus」ではこの問題が解決していることを期待したい。
このように長所と短所がいろいろとあるものの、ゲーム専用機なので、当たり前だがゲームを楽しむための機能はさまざまに用意されている。Android向けのゲームや、自分のSteamライブラリにあるゲームを気軽に楽しみたいのであれば、本機は選択肢の中に入ってくるだろう。
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