ここからは、FMV LOOX 90/Gの実力をベンチマークテストを通してチェックしていこう。FMV LOOX 90/Gの主な仕様は以下の通りとなっている。
ファンレス設計は、ベンチマークテストにどのような影響を与えるのだろうか。
まず、3DレンダリングでCPUのパフォーマンスをチェックする「CINEBENCH R23」を実行してみた。電源設定を「最適なパフォーマンス」にして計測した結果は以下の通り。
Eコアの効果もあってか、従来の超省電力プロセッサと比べると良いスコアを記録している。ただし、マルチコアのスコアを計測すると本体背面が非常に熱くなる。念のため、計測時に扇風機の風を当てておいたが、マルチコアをずっとフルパワーで回すようなアプリを使う際は、熱に気を付けた方が良い。
なお、通常の電源設定(バランス)でマルチコアのスコアを計測した際の結果は以下の通りとなった。
少しスコアは落ち込んでいるが、その分発熱もやや穏やかになるので、普段は「バランス」設定で運用した方が快適だろう。
続けてPCの総合ベンチマークテスト「PCMark 10」を「バランス」と「最適なパフォーマンス」の電源設定でそれぞれ実行した。結果は以下の通りだ。
写真/動画の編集や書き出しを行う「Digital Content Creation」以外のテストは、最適なパフォーマンスとすることでスコアがわずかに向上した。いずれにしても、やはりスコアは過去のYプロセッサよりも良好で、普段使いには全く問題のない状況だ。
「応答速度1ミリ秒」というディスプレイのスペックを見ると、ゲームをプレイしたくなる。そこで3Dグラフィックスのテストも実施してみた。
まずは、負荷の大きなベンチマークテストアプリ「3DMark」から、DirectX 12ベースで高負荷の「Time Spy」、同APIベースで低負荷の「Night Raid」、DirectX 11ベースで高負荷の「Fire Strike」の3つのテストを「バランス」設定で実行してみた。それぞれのテストの総合スコアは以下の通りだ。
筆者としてはもう少しスコアが低くなるかと思っていたが、意外と“健闘”した。超省電力プロセッサとはいえ、内蔵GPU(Iris Xe Graphics)の実行ユニットの数が多いことが奏功した思われる。
ゲームという観点から、実際のタイトルをベースとする「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」と「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(FF15ベンチマーク)」も実行してみた。描画は全てフルHDのフルスクリーンで、結果は以下の通りだ。
Pコアが2基しかないことが響いてか、かなり厳しい結果である。Thunderbolt 4端子を備えるFMV LOOXなら外付けグラフィックスカードを取り付けることも理論上可能だが、時間の都合で今回はそこまでの検証を行えなかった。
ともあれ、LOOX単体でゲームを楽しむなら“軽く”がお勧めといえる。
FMV LOOX 90/Gは、512GBのSSDを備えている。テスト機にはSamsung Electronics(サムスン電子)の「MZVLQ512HBLU-00B07」が搭載されていた。PM991aシリーズの512GBモデルで、PCI Express 3.0接続である。公称のシーケンシャル(連続)リードは毎秒3100MB、シーケンシャルライトは毎秒1800MBという性能を備える。
このSSDの速度を「CrystalDiskMark 8.0.4」で計測した所、以下のような結果となった。
ほぼ公称スペックは引き出せているようだ。これだけのスピードを発揮できれば、大抵の仕事は快適にこなせる。
FMV LOOX 90/Gの公称のバッテリー駆動時間(JEITA バッテリ動作時間測定法 Ver.2.0)は約12時間となっている。
バッテリー駆動時間は使い方によって大きく変わる。実際の所はどうなのか、PCMark 10のバッテリーテストモードのうち、オフィスワークを想定した「Modern Office」シナリオで計測してみた。今回は電源設定を「バランス」とした上で、屋外での視認性が高まる一方で、バッテリー駆動時間に不利な画面輝度最大としてテストを行っている。
満充電から残量5%(強制的に休止状態に入るしきい値)までの駆動時間は5時間33分となった。有機ELディスプレイは鮮やかな表示がメリットである反面、明るい画面の表示が続くとバッテリー消費が激しくなるというデメリットもある。今回の結果は、そのデメリットが強く出てしまった格好だ。
とはいえ、バッテリーに優しくない設定でも5時間30分程度は稼働するので、画面輝度を下げれば、出先での作業も余裕でこなせる。
FMV LOOX 90/Gは約599gの軽量ボディーにキレイな有機ELディスプレイを搭載した、FCCL社内の意欲作であることは間違いない。ファンレス設計ということで気になるであろう放熱も、CPUやGPUに連続して高い負荷を掛けるような使い方をしない限りは問題ない。キーボードが別売であることは議論が分かれそうだが、「好きなキーボードを選べる」と捉えれば、むしろ良いことであるようにも思える。
ただし、メリットはデメリットでもある。有機ELディスプレイは、暗色(特に黒色)主体の表示では消費電力を抑えられるのだが明るい表示が続くと消費電力が大きくなりやすい。バッテリーの持続時間を重視する場合は、OSだけでなく、できる限り多くのアプリをダークモードで運用することをお勧めする。
重量と薄さを重視する観点から、今回のFMV LOOXでは有機ELディスプレイを採用したという。「少し重くて厚くなってもいいから、液晶ディスプレイ構成も用意してほしい」と思った反面、そうするとこのモデルの強みが薄れてしまうことも事実で、かなり悩ましい。
ともあれ、今回のLOOXは、今までありそうでなかった「薄くて軽くて画面の大きいWindowsタブレット」である。このことに価値を見いだせるのであれば、一点突破で買ったとしても後悔はしないだろう。
LOOXブランドは「革新的な体験をお届けできるPC」に付けられるという。このモデルでとどまることなく、いろいろなベクトルで“革新的な体験”ができるPCがリリースされることを期待したい。
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